6.村

 コムの実を摘んでいた女性の後について村に戻ると、他にも木の実やもっと大きなスイカや、木の根っこのようなものなんかを持って帰ってきた女の人たちがたくさんいた。


 そら豆のさやをもっと平べったくしたみたいな形の植物をいっぱい包んだ袋を背負った若い女性は、胸にも赤ちゃんを抱えていて大変そうだ。

「ああした幼い子どもは三歳くらいまではずっと母親のそばですごします。蛇やサソリがいますし、タカやワシに狙われることもある」

 タカムラさんの説明を聞いてわたしは首を竦めてしまう。今更ながらに危険な場所なんだと感じた。


 ひとやすみして座り込んでいる女性が白っぽい卵の形の器から水を飲んでいるのも気になった。あれってもしかして……。

「あれはダチョウの卵の殻です」

 やっぱり。

「ああして水筒に使うので、ダチョウの卵を食べるときには殻を壊さないよう小さく穴を開けて枝を差し込み、かき回してから鍋に流し込んでスクランブルエッグにして食べるのです」

 うーん、おいしそう。なんて思っていたら、急にまわりが騒がしくなった。


「男性たちが獲物を持って帰ってきましたね」

 それってさっき、キリンを倒した人たち? 一日かけて肉を干してから戻ってくるって話だったのに。

「今日はご馳走ですから、きっとパーティになりますよ」

 タカムラさんは何かを期待するようにうきうきした口調で言った。


 小屋の間の空き地で火が焚かれ肉があぶられると、その場にどんどん人が集まってきた。お皿(これは鍋と同じく文明的なもののようだ)に盛った肉がわけられると、みんな嬉しそうに食べ始めた。


「男性の役割である狩りは、獲物を探して一日中歩き回ったり、獲物を村に持ち帰るのも重労働ですので、毎日出かけているわけではないんですよ。たいていは間に二三日は休息を取り、家でゴロゴロしたり道具の手入れをしたり」

「そうですよねえ」

「一方、女性は毎日三時間ほど主食となる植物の採集をしなければなりません」

 うーん、それってどっちが大変なんだろう? ついつい比較してしまうわたしの考えを読んだようにタカムラさんが笑った。


「男女ともに平均すると一日に三四時間の労働となるようです」

 わたしの一日の勤務時間が八時間(プラス時々残業)だから、それってとっても短い気がしてしまう。生活のためにずっと働き通しというわけではないのだな、この人たちは。


 するとまたまたそんな考えを読んだようにタカムラさんはぱああっと晴れやかに微笑んだ。

「彼らは時間のほとんどを睡眠や休息にあてているんです。日本の社畜社会とは大違いですね!」

 なんかすっごくいい笑顔で言われたー。

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