第545話 支援クエスト受注完了

 タウロ達一行は冒険者ギルドで珍しい薬草採取、新種の魔物オログ=ハイの討伐、そして、古代遺跡発見に伴いその調査をする為、そこを護る遺跡の守護者を討伐するチームが募集を掛けた支援チームの一つとして参加するクエストという三つを引き受ける事にした。


 三つとも北の帝国とサート王国を跨ぐアンタス山脈山中のクエストという事で、タウロ達にとっては丁度いいだろう。


 他の上級冒険者チームも長期日程のクエストを複数引き受ける事は珍しい事ではないから、タウロが欲張ったわけではない。


 他のクエストを引き受けている最中に、別のクエストの討伐対象を見つける事はよくある事だ。


 ならば、討伐後にそのクエストを引き受けて、討伐証明を提示すればいいのでは? とも思えるが、これは他の冒険者チームが引き受けていた場合、トラブルの元になりやすい。


 状況によっては討伐するしかなくてやむなくという場合もあるが、それはクエスト報酬は支払われず、討伐対象の魔石や部位の売買の収入のみの扱いが多い。


 クエストはだから活動範囲のものでクリアできる可能性のあるものは受注しておいて損はない。


 いや、あまり引き受け過ぎて、未達成が多いとギルドの信用を失う事にはなるのだが……。


 だからこそ長期日程のクエストは、引き受けやすく、それが多い上級クエストは多くの冒険者が掛け持ちで受注する事もあるのだ。


 そんなわけで、タウロ達一行はそのうちの一つ、『古代遺跡の守護者討伐』クエストの依頼主であるA-チーム『青の雷獣』の支援系が得意なチームの募集に参加するべくギルドの紹介により、ギルドの近くの食堂で会う事になった。


 依頼主である『青の雷獣』の他には、B-チーム『銀の双魔士』という地元の冒険者チームが参加していた。


「『銀の双魔士』チームは何度か組んだ事があるからわかるが、『黒金の翼』は初めてだな。噂では最近まで偽者チームが有名だったらしいが、長期の探索に出ていて俺達はよく知らないから自己紹介しておこう。俺は、A-チーム『青の雷獣』のリーダーで爪剣使いのジャックだ」


 ジャックはそう自己紹介すると、三本の長い鋼鉄の爪が生えた武器を右手に嵌めて見せた。


 そして、続ける。


「あとは長剣使いのロンガ、戦斧使いのアック、爆炎の魔法使いボマーヌ、森の神官フォレスの五人だ」


 ジャックはチームの仲間を紹介した。


「では私達も。──B-チーム『銀の双魔士』のリーダーを務める双子の姉で、水流の魔法使いジェマと──」


「……その妹で火焔魔法使いのジェミスよ」


 と、顔がそっくりな魔法使い姿の双子が自己紹介した。


 そして、続ける。


「あとは片手剣兼盾役のジミンと、野伏で薬師も兼ねているブーダーの四人よ。──偽物と言われている以前の『黒金の翼』のタウロ殿とは一緒にクエストを引き受けた事があるわ。とても優秀なチームだったのだけど……、あなた達は大丈夫?」


 リーダーで双子魔法使いの姉ジェマは、本物を名乗るタウロ達を胡散臭そうに見た。


 どうやら、偽者チームは一応『黒金の翼』としての信用を『魅了』以外でも得ていたようだ。


「はい、ご心配なく。その偽者を捕らえて軍に引き渡したのは僕達なので。それに実績もそれなりに積んでいます」


 タウロは最初で舐められたら後がやりにくいと思ったのか堂々と答える。


「おいおい、ジェマ、挑発するな。──で、君らのチームの紹介もお願いできるかな?」


『青の雷獣』のリーダー・ジャックが、クエスト前の争いは勘弁とばかりに間に入って止めて進行する。


「それでは……。──僕は、『黒金の翼』でリーダーを務めるタウロです。得手は小剣と弓、あとはマジック収納が使えるので大きな荷物があったら預かりますよ。一応、名誉子爵ですがお気遣いなく。そして──」


「私は魔法使い兼治癒士のエアリスよ。得意魔法は雷、水、風と治癒系」


「俺は大剣使いのアンクだ。風魔法も使う」


「私はラグーネ。槍兼盾使いだ。支援魔法も使える」


「ボクはシオン。素手での接近戦と光魔法による支援系が得意です」


 タウロ達は最低限の情報しか言わない事にした。


 連携の為の情報提供以外は必要ないだろうとの判断だ。


「……ふむ。意外に前列職が多いと思ったが、ほとんどが魔法を使えるのは良いな。それにそっちの魔法使いの雷系魔法は有難い。──わかった、『黒金の翼』にも今回のクエストには参加してもらおう。よろしく頼む」


『青の雷獣』のリーダー・ジャックはタウロ達が使えるチームと判断したようだ。


「ジャックさんがそう言うなら……、わかったわ。うちもOKよ」


 双子の姉でチーム『銀の双魔士』リーダーのジェマは渋々ながら、タウロ達『黒金の翼』の参加に納得する。


「それでは、よろしくお願いします。──出発は明日の朝でいいんですよね?」


 タウロがジャックに確認する。


「ああ、そうだ。街の東門に明朝集合だ。それまでに準備は整えといてくれ」


 ジャックは古代遺跡とそこにいる守護者についての情報は開示しようとしなかった。


 彼らが得た大切な情報という事で、ギルドとも情報共有はまだ、ほとんどしていない。


 古代遺跡の発見自体が、そもそも非常に貴重な事であり、最初の探索権利は発見したチームが得る。


 その名誉があるから、冒険者ギルドへの詳しい情報はジャック達のチームが最初の探索をしてから開示する予定になっていた。


 もちろん、その後の探索クエストは冒険者ギルドによって出されるが、発見した名誉はジャック達『青の雷獣』の名で残っていく事になる。


 ただ、今の段階では、地元チームで親しい『銀の双魔士』にはもちろんの事、初見のタウロ達『黒金の翼』には現場に到着するまで詳しい情報は提供されないのであった。


「ジャックさんがOKしたからと言って、実力が認められたわけではないからね? 私達と同じB-ランクでもそこには雲泥の差がある事を教えてあげるわ!」


『銀の双魔士』リーダーのジェマは、そう宣戦布告すると、仲間を引き連れ食堂から出て行くのであった。


「偽者チームとよっぽど気が合っていたのかもしれないね」


タウロは突っかかられる理由はその辺りかなと想像してみんなに話す。


「そうかもしれないわね。それに私達余所から来た冒険者だから、初見で採用されたのが気に入らないのかも」


エアリスもタウロの言葉に納得して付け足した。


「みんな気にしてないから、大丈夫さ。若いっていいな」


アンクがおっさんな発言をする。


「ふふふ。『竜の穴』を経験して余裕が出て来たな」


ラグーネがアンクを茶化す。


「そうですね。以前のアンクさんなら、『なんだ、あいつら!』って、怒ってそうです」


シオンもラグーネに同調した。


「おいおい。チームの最年長だから、大人の発言しても良いだろう?」


アンクは困ったように苦笑して答えると、タウロ達はそれが可笑しくて笑うのであった。


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     あとがき


ここまで読んで頂きありがとうございます!


これからも「自力で異世界へ!」をお楽しみ頂けていたら幸いです。


話は変わりますが、実は、5/20から新作の投稿を始めました。


タイトルは、

「異世界チートは眠れない!~夜間無双の救世主~」

となっています。


初めてのチート無双系に挑戦しております。


よければ読んで、フォロー、レビュー★、応援♥とコメントして頂けたらありがたいです。


↓「異世界チートは眠れない!」↓

https://kakuyomu.jp/works/16817330651645548660

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