第506話 国管理の迷宮
タウロは『バビロン』において、ダンジョン攻略組団体『黒金の翼』チーム責任者という事になった。
もちろん、リーダーだから当然なのだが、それは竜人族達全体の責任者でもある。
竜人族の面々は、恩人であるタウロに迷惑をかけるつもりは毛頭ないから、『黒金の翼』一員として登録をし、数日後から『バビロン』攻略に参加した。
そこで活躍したのが、タウロが竜人族の代表である大勇者ロイに渡した『空間転移』を付与した魔石である。
竜人族の村のダンジョンの一階層の『休憩室』から、この加工された魔石を使ってどんどん『バビロン』側の『休憩室』に竜人族のみんなが移動してきていた。
この魔石を利用した『空間転移』には膨大な魔力が必要となるのだが、超人的な竜人族だからこそ使用できるものであった。
現在『バビロン』は百階層まで攻略が完了しているのだが、王国が派遣するダンジョン攻略組は苦戦していた。
百階層まで潜ってその先は、何の情報もない未知の冒険である。
当然、初見殺しの罠もあるから、人員を維持するのは難しく、途中で引き返す事も余儀なくされるから、遅々として攻略が進まないのだ。
これは竜人族も『始まりの迷宮』攻略の際に同じ悩みを持っていたが、それもタウロの登場で解消され攻略できた。
だが、王国組はそれがないからダンジョン攻略は絶望に近い難関である。
しかし、だからと言って、ダンジョン攻略が敬遠されるかと言うとそれはまた別であった。
ダンジョンで得られるお宝は貴重なものが多く、それを入手出来れば大金が得られるから一獲千金のチャンスがある。
それだけに国は攻略に力を入れたし、人員集めも容易であった。
ダンジョン攻略組にはいくつか種類がある。
王国による騎士や研究者などで構成された攻略組。
これは色々な理由があり、必ずしもダンジョン攻略自体が目的で無い事も多い。
ダンジョンにおける研究を優先して後々の攻略に生かそうという意図が強いからだ。
次に、王国出資による冒険者の攻略組。
これはダンジョン攻略を主体としたもので、指揮官は王国関係者でとにかく深く潜る事を優先している。
あとは王国の許可を得て、貴族の出資による攻略組。
これも、ダンジョン攻略が目的とされているが、ダンジョンへのロマンとか箔付けの道楽、ダンジョン特有のお宝を自分のコレクションに加える事が目的という事が多い。
それに貴族による出資は元を取る為である事が多く、途中で断念する事が多い。
最後が、王国の許可を得て、チームで参加する冒険者単独の攻略組だ。
これがある意味一番純粋な目的で、地位と名声、そして、お宝と同時にロマンを求めている者が多い。
ただ自費だから、すぐにその財が底をついてダンジョン攻略を断念する事も多い。
もちろん、
それはロマンに投資する者だったり、ダンジョンの宝を入手したいという打算でのものであったりするが、大体は商人などの富裕層でこちらも道楽である事が多いが、冒険者にとってはそれは関係ない事だ。
ちなみにタウロは名誉貴族であるから、貴族の出資による攻略組という事になる。
「竜人族のみんなは持ち込みだから、僕はほとんど出資していないんだけどね」
ダンジョン初参加の予定になるはずであったシオンにそう説明した。
タウロは『バビロン』攻略に参加しない事にしている。
だからシオンは残念そうであった。
「ダンジョン攻略は専門家に任せよう。まあ、竜人族のみんながダンジョンでの入手するお宝には国が税を掛ける決まりになっていて勝手が違う部分があるから、それには僕が間に入ったけどね」
「お宝に税金がかかるのか?」
ラグーネが不思議に思ってタウロの説明に聞き返した。
「うん。『バビロン』は国の管理下にあるから、そこでの入手品にはある程度の税を掛ける仕組みになっているみたい。でも、ダンジョンから持ち帰ったものって大体貴重品だから外で売れば利益になるし、みんな挑戦したいと思うみたいだけど」
タウロは国所有のダンジョンの仕組みについて説明した。
「ただし、国からの許可なんてそうそう下りないわよ」
エアリスがタウロに続いてラグーネに説明する。
そして続けた。
「それにダンジョンで入手したお宝はほとんど珍しいものばかりだから国が買い上げているわ。中にはガラクタもあるけど高い値段で買うから、各攻略組は安心して挑戦できる形なの。──あら?でも、うちはどうするの?竜人族のみんな、タウロが渡した魔石持っているなら地上でダンジョンを管理している国の官吏にバレずに外に持ち出す事が出来る事になるけど……」
「これについては、管理責任者さんと交渉して、他の攻略組の危機時の保護や、協力等を契約に入れたんだ。それでダンジョン攻略最優先の必要経費として参加費を多めに払う事で目を瞑ってもらう事になったよ」
前日、関係者と話し合いを行ったタウロがそう報告した。
「おい、それってダンジョンで入手したお宝は全て、『黒金の翼』の責任者であるリーダーのものって事じゃないか?」
アンクが呆れたようにそう指摘した。
「一応は僕が攻略組『黒金の翼』チーム責任者だから多少はね?でも、竜人族のみなさんには給金として入手したお宝は必要経費を差し引いてほとんどは渡す事にしているよ。最初、竜人族のみんなは新たなダンジョン攻略の機会を提供された事に喜んで必要経費以外はいらないって言ってたんだけどね。さすがにそれは断ったよ」
タウロは苦笑して答える。
竜人族の人の良さに少し困った様子であった。
「竜人族はみんなタウロに恩を感じているからな。私も同じだぞ。はははっ!」
ラグーネはタウロにそう告げると背中を叩いて笑う。
「竜人族のみんなに僕は助けられてばかりなんだけどなぁ」
タウロは再度苦笑すると、義理堅い竜人族に少し呆れるのであった。
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