第446話 豪運の仕事

 『聖女』マチルダに王都のグラウニュート邸で待機してもらい、タウロとラグーネは、エアリスを呼びに移動した。


 ラグーネの『次元回廊』は、ヴァンダイン侯爵領の領都、その城館の館内であるエアリスの自室の前に繋がっていた。


 タウロは『空間転移』で先にエアリスの屋敷に移動、続けてラグーネが追いついた。


「ここが、エアリスの実家かぁ。もう夜だから窓の外はどんな雰囲気かあんまりわからないけど、豪華そうだね」


 タウロが窓の外を眺めると、ラグーネが目の前の扉をノックした。


 すると室内から返事がある。


「はーい。誰?」


「私だ、ラグーネだ。入っていいか?」


「ラグーネ?こんな時間にどうしたの?今、手が離せないから勝手に入ってゆっくりしてていいわよ」


 という返事に、ラグーネはタウロを連れて部屋に入った。


 エアリスの自室は意外に可愛い華やかな雰囲気の内装であった。


 花も飾ってあるし、椅子においてあるクッションや人形もフリルが付いている女の子趣味のものであった。


 エアリスって、ダンサスの村に一緒に住んでいた時は飾り気のない雰囲気が好きだと思っていたけど、こんな感じがいいのか。


 と、新鮮な気分で周囲を見渡した。


 室内にはエアリスがいない。


 扉がいくつかあり、違う部屋から気配を感じるのでそちらにいるようだ。


「ラグーネ、聞いてよ。私、街で可愛いものみつけたの。これなんだけど──」


 部屋の向こうでその台詞と共に扉が開きエアリスが入って来た。


 タウロはその扉の近くにいたのでエアリスとばったり会った感じになった。


 エアリスは丁度、新しく新調した可愛らしい下着を身に付けていた様で、谷間を確認しながら、それを見せようとラグーネに、「この下着なんだけど?」と、顔を上げた。


 すると、目の前にいたのはタウロである。


「やぁ……。確かに可愛い……ね?」


 タウロは綺麗な下着姿のエアリスを目の前に、どうリアクションを取っていいかわからずに見た感想を漏らした。


「きゃー!」


 エアリスは思わずタウロが反応できない速度でビンタを食らわした。


 いつもなら敵の攻撃に素早く反応する従魔であるぺらが、その攻撃を防がなかったから、これは防いではいけないと判断したのかもしれない。


 タウロは一回転するとその場にダウンする。


「わー!タウロ大丈夫か!」


 ラグーネが、驚いてタウロに駆け寄る。


「……はっ!ごめんなさいタウロ!まさか、あなたがいるなんて思わなかったから!」


 エアリスは下着姿のまま、慌ててタウロに駆け寄った。


「僕は大丈夫だから……、エアリス、服を着て?」


 タウロは赤面してエアリスから視線を外す。


 エアリスも改めて、その事に気づくと、「きゃっ!」と、急いで隣の部屋に駆け込むのであった。


 タウロは容赦のないスナップの効いたエアリスのビンタに大ダメージを受けたが、そこは『超回復再生』能力の持ち主である、すぐに回復し始めた。


 ぺらは何食わぬ顔で擬態を解いて、室内をぴょんぴょん跳ねている。


「ぺら。君、わざと防がなかったよね?」


 タウロは顔を擦りながら、従魔の裏切りにじっとりと見つめる。


 ぺらはぷるんとその場で震えると、ぴょんぴょん跳ねている。


 どうやら、とぼけているつもりの様だ。


「まぁ、あれは防がなくて正解だよ。さすがにそれは僕にもわかったよ」


 タウロは苦笑いするとぺらの判断を許すのであった。


「驚かせようとタウロの事を黙っていた私が悪い。すまないエアリス」


 ラグーネが、隣の部屋で急いで着替えをしているエアリスに謝罪した。


「いいのよ。よく考えたら減るものでもないし、下着姿で友人の前に現れようとした私も悪いもの。……タウロも大丈夫? 思いっきり殴っちゃったけど……?」


 エアリスは、一番早く着替えられる服として、タウロから返却された冒険者用の服に袖を通すと、すぐに二人の前に姿を現した。


「……その恰好のエアリスを見るのも久し振りだね」


 タウロは、完全に能力で回復し終わると、タウロは立ち上がってそう感想を漏らした。


「ちょっと小さくなっていたから、手直ししたんだけど、大丈夫かしら?」


 エアリスがちょっと照れたようにくるっと回って見せた。


「うん、似合ってるよ。この姿こそ、エアリスって感じがする」


 タウロも笑顔で頷いた。


 ラグーネは、邪魔をしたくないのか何も言わずに二人のやり取りを見守る。


「そうだ。今日は、何の用なの二人共こんな時間に緊急かしら?」


 エアリスは、暗くなってからの二人の訪問に理由を聞く。


「実は──」


 タウロが、掻い摘んで理由を説明した。


「『聖女』の相手?それに取り巻きの話まで……。うーん……、わかったわ。私が相手するけど、説明の感じだと、その『聖女』様の扱い、少し考えないと国際問題になりかねないわよ」


 エアリスは相変わらずタウロは女性の扱いが下手だと内心溜息を吐きつつ、タウロの手を取ってラグーネに向かって言った。


「ラグーネ、お願い。あまり待たせ過ぎたらその『聖女』様、一人で街に繰り出しかねないわ」


「わかった!」


 ラグーネは嬉しそうに頷くと、『次元回廊』を開く。


「じゃあ、王都へ戻ろう!」


 タウロはエアリスの手を強く握ると、『空間転移』で王都に一瞬で戻るのであった。



【あとがき】


ここまで読んで頂き、ありがとうございます。


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それでは続きもお楽しみ下さい(。・ω・)ノ゙♪

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