第428話 意外な繋がり
口約束の契約を交わしたタウロと村長であったが、村長側は自分のところからもタウロ達に手伝いを出すと言い出した。
それは体のいい監視役だよね?
タウロは、村長が全く信じていないのがわかり、断る理由をその場で思いついた。
「こう言っては何ですが、仲間以外の人に付いて来られても、正直迷惑です。自分達の失敗なら仕方ないと諦めも付きますが、付いて来られた方の失敗でおじゃんになったら目も当てられません。それだけは避けたいです」
「もちろん、優秀な者を付けますよ」
「本当に優秀な者ならその人が情報を入手すればいい事で、僕達は必要ないかと思いますが?それが出来ないという事は、そういう事でしょう?」
「確かに。……わかりました。監……手伝いを付けるのは止めておきましょう」
今、監視って言いかけたよね?
タウロは、村長の言葉を聞き逃さなかったがもちろん、そこには切り込まない。
「それでは、僕らは冒険者ギルドにいったん戻って今回のクエストの完了報告します。その後、そちらの求める情報を集めますのでよろしいですか?」
「それでお願いします。何度も念を押してすまないが、決して口外しないようにお願いしますよ?」
村長はずっと合間にこの事を言っていた。
余程、慎重にならざるを得ない事を考えているのは確かだ。
タウロ一行はもう、耳にタコが出来そうだったので、適当に了承するとこの隠れ村を後にするのであった。
タウロ一行は、丸一日をかけて領都に帰って来た。
「……戻って来たけど、あの村長さん、ちゃっかり尾行を付けてくれてるなぁ」
タウロには『気配察知』があるから、村から尾行していると思われる者がいるのには気づいていた。
最初二人がつけていたが、領都に着くと一人が誰かを呼びに消えた。
タウロ達はそれを気にする事無く冒険者ギルドに到着し、クエスト完了の手続きをしてギルドを出ると、別の尾行が付いている事に気づいた。
村から尾行していた者は、領都にいる仲間だろうか?タウロが知らない二人と役割の交代でもする様に何かを話し、最初に尾行していた二人は合流して立ち去った。
残った新手の二人は慣れた様子で、タウロ達を尾行しているが、タウロはもちろんの事、アンクも気づいた。
「……リーダー。村からの尾行はいなくなったが、新しい尾行がついてるよな?」
「……うん。どうやら思ったよりあの村はこっちにも仲間がいるみたいだね」
タウロは、宿屋に戻る道すがら、考え込んだ。
それは、尾行を撒くか、退治するか、それとも放置するかである。
途中で尾行を撒いてもいいが、そもそもの解決にはならないからこれは保留。
では、退治するか。
これは選択肢のひとつとしてありか。
もし、村からの尾行を退治したら、依頼主のところの人間だと知っているから角が立つが、知らない二人組なら、知らぬ存ぜぬで何とでもなる。
あとは放置だが、これだとタウロの父グラウニュート伯爵に今回の謎多き件で警告が出来なくなる。
「じゃあ、あの尾行してる二人、やっちまうか?」
アンクが、ニヤリと笑みを浮かべた。
「いや、宿屋に戻ったら僕が領主城館まで行って報告してくるよ」
「おいおい、リーダー。それじゃあ、村長にバレちまうぜ?うちが関係者だって事がさぁ」
アンクは、タウロに耳打ちする。
「なんだ二人共。さっきからこそこそと何を話しているのだ?」
シオンと話しながら歩いていたラグーネがタウロとアンクの様子に気が付いて声を掛けてきた。
「ああ、宿屋に着いたら話すよ」
タウロは、ラグーネとシオンにそう答えると、宿屋に戻るのであった。
「で、なんなのだ?」
ラグーネは宿屋に到着すると、タウロとアンクの部屋に合流して早速聞いてきた。
「……尾行されているのは気づいた?」
「あれか……!あれはうちだったのか?ギルドで切れたから違うと思っていたのだが……」
「それならボクも気づきましたよ。ラグーネさんとその話、来る途中でしていました」
シオンもラグーネと同じで最初の尾行には気づいていた様だ。
だが、その後は気づいていなかった。
「その後も人が代わって尾行されているんだ」
「……!そうなのか?という事は、相手は村長?」
「そういう事。そこでどうするかなんだけど、みんなはここで待機しておいて。その間に僕が父に会って来るから」
「尾行はどうするのだ?」
「ちょっと、試したい事があってね」
「試したい事?」
「まあ、可能性の一つを潰したいだけだから。後で結果は報告するから待っててね」
タウロはそう告げると、部屋を一人出る事にした。
最初、シオンがお供すると挙手したが、一人が都合が良いからと、説得して一人宿屋を後にするのであった。
タウロが宿屋を出ると、一人が尾行してきた。
もう一人は宿屋の方に残ったのだろう。
一人はタウロが散策する様に街の表や裏の道を歩くのに必死に跡をつけてきた。
「では早速、確認作業……」
タウロは、見覚えのある裏道に入った。
そこは袋小路になっている。
その場所は以前、危険な薬を扱っていた組織の男が尾行を避けて隠し扉から地下に潜った出入り口のあるところであった。
あの事件は、ボスと思われる人物と責任者の男がまだ、捕まっていない。
タウロはその袋小路に入るとすぐに『姿隠魔法』で姿を隠した。
尾行の男は、角を曲がったタウロを追って自分も角を曲がる。
そして、タウロの姿が消えた事を知ると、尾行の男は、はっとした顔をし、思い当たる節があるのか行き止まりの壁まで走り、阻害系魔法で隠れているはずのスイッチを押してから、地下へと続く扉を開いて中を確認した。
「……いないだと!?ここではないならどこへあのガキは消えたんだ!?」
尾行の男は、驚き慌てふためくと道を戻り、左右を何度も振り返りタウロの姿を探してあらぬ方向へ走っていくのであった。
「……村長関係者がここの隠し扉を知っているという事は……。──あの村が、まさか謎の組織と繋がっていたとはなぁ……。可能性の一つというだけで、あり得ないだろうと思っていたのだけど……」
タウロは、低い可能性である予想が的中した事に、『豪運』が能力を発揮したのかなと渋い顔をしつつ、改めて父グラウニュート伯爵に会う為に、城館へ姿を魔法で隠したまま向かうのであった。
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