第407話 領都到着

 タウロ達一行は、拠点であったカクザートの街の拠点を引き払い、その街から北に二日の位置にある領都グラウニュートを目指した。


 そこまでの道はよく整備されていてとても安全であった。


 途中には宿泊施設もあり、野宿する事無く領都が見えるところまで到着した。


 領都グラウニュートは中立派閥重鎮の街だけありカクザート以上に栄えている。


 街を囲む城壁は魔法対策が施されているらしく、さらには分厚く高い。


 アンクがその辺りは詳しく説明をしてくれた。


 その城壁が領都全体を囲んでおり、遠くから眺めても壮観な景色であった。


「父と母から話には聞いていたけど、本当に凄いね……。貴族の領都の中では、群を抜いているんじゃない?」


「だろう?グラウニュート伯爵家はその辺の貴族とは別格だからな。先代もそうだったが、今のグラウニュート伯爵も文武に優れて、北との争いの時には、自ら進んで出兵していたし、領地経営も塩湖の塩だけに頼らず、色々と改革を行って常に変化する事を恐れない。良い領主さ」


 アンクが、知らない仲ではないグラウニュート伯爵家を褒めちぎった。


 タウロも今の両親とは王都にいる頃は一緒に食事などをしてお互いを知り合う努力をしている中で、その人柄は、ある程度把握しているつもりでいたが、領主としての能力などは知る事が出来なかった。


 グラウニュート伯爵は自分の功績を誇る事はしなかったし、母アイーダもそれは同じで二人の仲の睦まじさは伝わって来ていたが、こうしてアンクから話を聞くと、違った一面を聞いている気分になった。


「アンクは、父の事をよく知っているよね」


「まぁな。付き合いは長い。何しろ先代の頃から傭兵として戦場で世話になっていたからな。今のグラウニュート伯爵にも当時から色々と世話にはなっていたよ。もう、十六年くらいの付き合いかな」


 アンクは、笑ってそう答えた。


 そう言えば、アンクは十歳から戦場に出ていたそうだから、その時から関係がある事になる。


 タウロが知らない面をいっぱい知っていることだろう。


「その話、聞いてみたいけど、領都に到着だね」


 タウロが城門を見上げながら、そう答えると一行を乗せた乗合馬車は城門を潜り抜けていく。


「うん?今、結界魔法と一緒に何か別の感触があったけど……、これ、竜人族の村でも感じた事があるなぁ」


 タウロは、一瞬の違和感に気づいた。


「これはきっと、犯罪を犯して魔法印を押されたものなどに反応する魔法だな。竜人族の村ではもっと高位の魔法が使用されているが、こちらではあまり使用されていないものだぞ」


 ラグーネが、タウロの疑問に答えた。


「俺が最後に訪れた時に伯爵がどこかの魔法使いからその方法を買って導入した魔法管理機能だったかな。お陰で城門での兵士の仕事も減って領都内の犯罪率低下にも一役買っているらしい」


 アンクが、二人のやり取りに答えた。


 そんな中、馬車は領都に入っていく。


 外の静かな雰囲気から一変、中は人々の賑やかな生活音から商売する声、そんな大きな音に負けない様な声で会話する者など、活気に包まれていた。


 領都の街並みは清潔感に溢れ、オレンジに統一された屋根の雰囲気も良い。


「この街は外観を考えて屋根は一応、統一してるんだよ。でも、冒険者ギルドや商業ギルドなどの施設は、すぐわかる様に独自の色にする事は許可されているんだがな」


 アンクが、屋根を指さしながら、説明してくれる。


「統一感があって良いですね!ボクはこの街のこの雰囲気好きです」


 シオンが、カクザートの街とはまた違った街並みが気に入った様だ。


 そんなやり取りが馬車内でされていると、乗合馬車が終点の広場に着いた。


 タウロ一行は、下車する。


「まずは、冒険者ギルドに寄って登録し、宿屋の確保かな」


 タウロはいつもの感覚でみんなに告げた。


「おいおい、リーダー。ここはリーダーの実家になる街なんだ。宿屋の確保はしなくてもいいんだぜ?城館に寝泊まりしなよ。わはは!」


 アンクは、タウロの判断を指摘した。


「そうか……、そうなるのか……。初めての事だから変な感じだね。じゃあ、冒険者ギルドによってから両親に会いに領主邸である城館に向かおうか」


 タウロは苦笑いしてアンクに答えた。


 そうなのだ、貴族の養子になったのだから、ここは実家になるのだ。


 自分に言い聞かせるのだが、やはりまだ、不思議な感覚がある。


 というか初めて来た土地が、実家になるのだから違和感しかないのであった。


 タウロ達が冒険者ギルドを見つけるのは、早かった。


 アンクが場所を教えなくてもオレンジ色に統一された屋根の街並みのなかで冒険者ギルドの青色の屋根を見つけるのは簡単だったのだ。


 それをシオンが真っ先に発見して指さし、先頭を歩く。


 タウロ一行は、かなり大きい建物である冒険者ギルド・グラウニュート支部に到着したのであった。


 扉を潜ると、外観の大きさに比例して中は広く沢山の冒険者達で賑わっていた。


 が、しかし、緊張感が漂っている気がする。


「なんだかピリピリしてない……?」


 タウロが『気配察知』でもその緊張感を感じた。


 ラグーネもアンクもシオンもすぐに、気づいて警戒した。


 そこへ、タウロのつぶやきに気づいた若い冒険者が声を掛けてきた。


「子供の冒険者か、という事は余所者だな。最近、領内の他所の街の冒険者ギルドで問題が起きたらしくてな。うちも他人事ではないと支部長の方針で締め上げがあったのさ。それで不正を行っていた職員や冒険者が出てな。それで今、この雰囲気さ」


 それって、もしかしてカクザートの街の事が原因?


 そう思ったタウロは、みんなと無言で視線を交わすと、


 なんだかお騒がせして申し訳ない……!


 と、内心で苦笑すると謝るのであった。

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