第375話 仲間の様子
タウロは完成したシオンの為の籠手を、どうするか迷った。
封印するのも一つの手だ。
性能についてラグーネとアンクにも相談したのだが、アンクは封印という意見、それに対してラグーネは本人次第でいいだろうという意見であった。
タウロは意見が割れたので、また、悩むのであったが、
「タウロ殿が装備できるのであれば、もしかしたらシオンも装備出来るかもしれませんよ?」
と、ドラゴが意味ありげな意見を出してくれた。
「どういう意味ですか?」
タウロは、どう解釈していいのかわからない。
「シオンはこの村の『竜の穴』で、修行を果たし、ダンジョンで最終調整を行っています。ですから多少の状態異常、闇耐性はついていると思われます。タウロ殿ほどではないにしても、それならば、装備出来るかと。それにその籠手は、かなり優れた物だと感じました。封印するにしても勿体ないなと」
ドラゴは、タウロの魔改造された装備に対してかなり興味を持っている。
それだけに、魅力の方が勝ったようだ。
とはいえ、使用するのはシオンである。
ラグーネの言う通り、本人に任せた方が良いのか?とも思うのであった。
シオンがダンジョンから戻ってくる当日。
タウロはランガス鍛冶屋で完成したシオン用の革鎧を受け取った。
「どうだい、タウロ殿!『双頭聖闇獣製革鎧』だ。自分で言うのもなんだが、かなり出来は良いと思うぞ、がはは!」
ランガスが胸を張って、タウロに引き渡した。
タウロは早速、この革鎧を受け取ると、魔石をマジック収納から取り出し、その場で魔法陣を『創造魔法』で裏側に刻み込み、魔石の力を存分に発揮できる状態にした。
そして、タウロは確認の為に、『真眼』で鑑定してみる。
『双頭聖闇獣製革鎧』
・ジーロ・シュガーによって魔改造された、元は一流職人ランガスが作った一点物の革鎧。『全魔法耐性(弱)』付与。
・秘術により、革鎧の『付与強化』の付与、『光・闇攻撃力・物理・魔法耐性』の付与。
・双頭聖闇獣の魔石により、『物理・状態異常耐性』付与。
「籠手はともかく、こっちはかなりの優れものになったみたいだ」
タウロは結果にほっと安心した。
魔石も元々、この魔物の物だから相性は抜群だ。
何より、秘術で付いた『付与強化』の付与は、全ての付与の強化をしてくれているみたいだから、装備したら強くなる事は間違いない。
こちらに関してはシオンも喜んでくれることだろう。
「さすがタウロ殿だな。一瞬であの強化の魔法陣を刻んでしまうとは便利な魔法だながはは!」
ランガスは、タウロの『創造魔法』に感心するのであった。
「それじゃあ、これは代金です」
タウロは、ランガスに十分な報酬を渡す。
「これはちょっと多いですよ」
ランガスが、慌てていくつか返そうとした。
「いえ、この為に、お店まで閉じて徹夜で制作して頂いたので、そのお礼込みです。ありがとうございました」
タウロは、正当な評価だと断ってお辞儀をすると、ランガスに差し出されたお金を押し返すのであった。
兄アンガスもだが、この弟のランガスも職人気質が強すぎて、利益度外視で頑張るところがある。
こういうところでちゃんと、お礼をしないといけない。
タウロはそういう思いで、ランガスに再度お礼を言うとお店を後にするのであった。
「じゃあ、ダンジョンの出入り口まで、シオンを迎えに行くかい?」
アンクが、提案した。
「いや、すれ違いになっても困るから、先に家に戻って、シオンが帰って来るのを待っておこうと思う」
タウロはそう答えると、一行は兄妹邸に真っ直ぐ帰宅するのであった。
タウロ達が、帰宅するとその玄関先には、すでにシオンらしい人影があた。
タウロと身長は同じくらい。
青いショートの髪型が遠目でもはっきりわかる。
と、ここでやっとフード姿以外のシオンの姿をここで初めて見た事に、タウロ一行は気づいた。
なぜなら、シオンのシルエットの頭部には猫耳が生えていたのだ。
「え?猫耳??」
タウロはこの時初めて、シオンが猫人族の血が入っている事に気づいた。
タウロがそう思うのも仕方がない。
獣人族は多少の差はあるが、ほとんどが獣人族らしく顔や体毛に特徴がある。
だがシオンは見た目、人のそれであり、そこにちょこんと猫耳が生えていた。
よく見ると、長い尻尾も生えている。
どうやら珍しいタイプの猫人族の様であった。
シオンはタウロ達が竜人族の村に来ているのを、ダンジョンの出入り口で知らされると、その自慢の脚力で真っ直ぐ駆け続けると、ドラゴ邸まであっという間に戻って来ていた。
そして、タウロ達が出かけていると聞いて、玄関でその帰りを首を長くして待っていたのだ。
そこに、タウロ達が帰って来た。
シオンは、久しぶりの命の恩人に目を輝かせて、タウロに手を振ると駆け寄って来た。
「タウロ様、お帰りなさい!アンクさんもラグーネさんもお帰りなさい!」
シオンは再会がよほど嬉しいのかタウロに抱き着きそうな勢いである。
「ははは。それは僕達の台詞だよ。というか『様』?」
タウロは自分に様の呼称が付いている事に、引っ掛かった。
最後別れる時は、『様』づけて呼ばれていた記憶は無い。
「修行の間、竜人族のみなさんから、如何にタウロ様が凄い人物なのかお聞きしました。あの竜人族のみなさんに『村の英雄』と呼ばれていて凄いです!銅像も見ましたよ!タウロ様は凄いです!だからタウロ様はタウロ様なんです!」
シオンは目を輝かせて一点の曇りもなくタウロを見つめる。
……これは完全に竜人族のみなさんによって、洗脳が完了されている目だ!
タウロは、シオンの様子に、どうしたものかと、頭を悩ませるのであった。
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