第374話 贈り物制作

 タウロ達一行は、お昼を済ませると、魔石を購入する為に『竜の息武具店』に向かう事にした。


 このお店は品揃えでは竜人族の村一番の大きなお店で、魔石も数多く取り揃えている。


 タウロも魔石の購入はここでよくするようになっていた。


 そんな魔石売り場は、三階にある。


 タウロはそこまで上がると、すぐに顔なじみの店員に二種類の魔石で良い物をお願いした。


「ほうほう。光と闇の魔石で良い物ですか……。多少値が張りますが、光の魔石は、『聖域乃巨人』、闇の魔石は『地底這黒霧』から入手された物がお勧めです。特にこの『地底這黒霧』は、滅多に魔石をドロップしない250階層の魔物の物で、次、いつ調達できるかわからない代物ですよ」


 そう答えると店員はタウロが相手という事で、かなりまけて金額を提示してくれた。


「……なるほど、確かに面白い魔石ですね」


 タウロは真眼で確認すると納得する。


「じゃあ、この二つを下さい」


「はい、毎度ありがとうございます!」


 店員は満面の笑みで答えると、防犯魔法を解くと商品をケースから取り出す。


 タウロが、お金の入った袋を出して渡すと、それを確認。


 頷いてタウロにそのまま魔石を手渡すのであった。


 タウロはすぐ、マジック収納に魔石を入れると、


「じゃあ、ラグーネの家に戻って、シオン用の籠手を改造しようか」


 と、提案するのであった。



 兄妹邸の庭──


 タウロは改造の為に、まず、念の為に魔力回復ポーションを飲んで魔力を最大にすると、シオン用の左右の籠手に、それぞれ光と闇の魔石を組み込む為に、創造魔法を使用する事にした。


「まずは右腕用の籠手から……、『創造魔法(弱)』!」


 籠手と光属性が内包されている『聖域乃巨人』の魔石を手にすると合わせる様にして、魔法を唱えた。


 手元でまばゆい光を一瞬放って、すぐに収まる。


 が、タウロがその場でよろめいて膝をついた。


「リーダー大丈夫か!?」


「タウロ!」


 二人が慌てて駆け寄る。


「ちょっと、思ったより魔力の消費が激しかったよ……。さすが、とっておきの魔石だけあるね……」


 タウロはアンクに支えられながら、魔力回復ポーションを飲み干してそう答えた。


「無茶するなよ、リーダー。見ているこっちの肝が冷えるぜ……!」


 アンクは、タウロを支えながら、ほっとする。


「そうだぞ、タウロ。もう一つは無理なのではないか?」


 ラグーネも心配した。


「……うーん。でも、個人的興味からももう一つもやっておきたいんだよね。深層から得られる魔石、それも250階層のものを材料として使用できるのかどうか、限界のギリギリも知っておきたいし」


 タウロは、アンクから手を離すと立ち上がり、また、魔力回復ポーションを飲んで魔力の最大までの回復を図る。


「やれやれ、俺達じゃ止められないな。……仕方ない。ヤバいと思ったら中断してくれよ、リーダー」


 アンクが、無理とは思いながらも注意する。


「うん、その途中で中断するというのもした事が無いから、やってみようかな」


「どこにヒントを貰っているさ……」


 ラグーネもタウロの発想に呆れた。


「じゃあ、やってみるね」


 タウロはそう答えると、闇属性を内包する魔石と左腕用の籠手を手にすると、魔法を唱えた。


「『創造魔法(弱)!』」


 先程と同じように、タウロの手元で魔石と籠手が輝き始める。


 その瞬間であった。


 タウロに悪寒が走る。


 これは、本当にヤバいやつだ。


 自分の勘が警告を出している。魔力が足りないんだ!


 一瞬の走馬灯の中でタウロはそう自分に警告を発すると、『創造魔法(弱)』の使用途中で中断した。


 アンクとラグーネにはさっきと同じ一瞬の光に見えたかもしれないが、タウロは失敗したと思いながら、一瞬で魔力枯渇が起きて気を失いその場に倒れ込むのであった。




 タウロは、ドラゴの部屋のベッドに横になっていた。


 目を覚ますとドラゴがこちらを見ている。


「目が覚めましたかタウロ殿。良かった、自分が魔力を体内に直接流し込まなかったら危険なところでしたよ。こういう危険な事は、お止めになって下さい」


 ドラゴは、ほっとした表情で、タウロを注意した。


「リーダー、ヤバかったな。一時的だが心臓止まったから、焦ったぜ」


 アンクもタウロを覗き込むと、タウロの顔色を確認してほっとする。


「タウロはこういうのばっかりだから、こっちの心臓にも悪いぞ……!」


 ラグーネは、泣きそうな表情だ。


「ごめんみんな。さすがに今の僕と『創造魔法(弱)』では、250階層の魔物の魔石は荷が重かったみたい」


 タウロはそういうと反省した。


「そうなのか?一応、成功したみたいだが?」


 アンクが、左腕用の籠手をタウロの目の前に翳して見せた。


「え?……あ、本当だ。成功した……、のかなこれ?」


 タウロが『真眼』で鑑定してみると、鑑定結果が表示された。


 相対乃魔籠手

 ・光と闇の属性を宿す攻防一体の籠手。

 ・右腕の籠手は、光属性を宿し、攻撃と守りの強化を増大させる。

 ・左腕の籠手は、闇属性を宿し、攻撃時、敵にランダムで強力な状態異常ダメージを与える。半面、使用者に対し、精神的苦痛を与える為、強い精神力が要求される。

 ・二つを同時に装備する事で、『狂戦士』の能力を発動できる。


 右腕はともかく、左腕の籠手はやはり負荷が掛かるところをみると成功とは言い難い気がする。


 タウロは起き上がると、アンクからその籠手を受け取り、試しに装着してみた。


 何も起きない。


 タウロは、外に出て庭にある岩をその籠手を通して左腕で思いっきり殴ってみた。


 タウロの拳が当たった瞬間、岩に強烈な振動と黒い靄が流れ込んで亀裂が入った。


 その瞬間、タウロの全身に痛みが走る。


 だが、タウロは状態異常耐性と、闇魔法に対しての耐性を持っているからそこまで気にならない。


「僕の場合は使えない事はないけど……。シオンは大丈夫だろうか?」


 タウロは、折角完成した装備だが、シオンに向いているかどうか判断がつかないのであった。

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