第319話 王都での知名度
タウロ達一行は、前日に冒険者ギルド竜人族の村支部でのいつものクエスト「ダンジョン攻略のお手伝い」を終えて、また、王都の冒険者ギルド本部を訪れていた。
「あれが、弱冠13歳の少年が率いる『黒金の翼』だぜ」
タウロ達が大きなギルド本部のいくつかある内の1つの扉を開けて入って来ると、それに気づいた他の冒険者がひそひそと話すのが聞こえて来た。
「本当にガキじゃねぇか……。もしかして俺が新参者だからって担いでないか?」
「馬鹿、ホントだって。他のメンバーがまた凄いんだ。その中でも俺のおススメは、あの黒髪の美女、盾役のラグーネだな。一度、オーク軍団討伐戦で一緒になったが、敵の魔法攻撃を1人で凌いでみせたのには痺れたな。アレを見て俺は今、盾スキルを鍛えている最中なんだ」
「そうなのか?それより俺はあの大剣持ちが気になるんだが……。あんなの振れるのか?」
「おいおい、あれは『黒金の翼』随一の攻撃手アンクだぜ?あの大剣を棒切れみたいに操って風の様な素早さで敵に接近し、オークの首も軽々斬り飛ばす腕前だぜ、奴も大概凄いぞ?」
「じゃあ、あっちの娘は?魔法使い系みたいだが、まだ、かなり若いだろ?」
「ありゃ、「3つ持ち」だぞ?魔法使い、神官、結界師だったか……、文字通り天才って奴さ。あの少年がリーダーになるまで前任のリーダーを務めていて立ち回りも天才的なんだわ」
「じゃあ、あのリーダーのガキは何が凄いんだ?」
「あれは、弓使いだ。普段小剣しか身に付けていないが、マジック収納持ちでな。ここぞというところでその弓を出し、敵を確実に仕留める正確さが凄いのさ。それに、子供とは思えない威力の矢を放つし、あれも天稟を持って生まれて来たんだろうな」
「……王都ってすげぇな……。そんな連中がまだ、Dランク帯なのかよ……」
タウロ達を遠巻きに眺めている冒険者達の会話はばっちりこっちにも聞こえてきてはいたが、タウロ達は聞こえないフリをしておいた。
最近ではあの手の会話をよく聞くのだ。
「……タウロが褒められてるわよ」
いや、エアリスが少し嬉しそうだ。
「リーダー、今日はどうするんだい?『あっち』のいつものクエストは当分休みみたいだが?」
アンクが言うあっちとはもちろん竜人族の村支部の事で、クエストとは、ダンジョン攻略のお手伝いクエストの事だ。
前日に、キリが良いという事で、ダンジョン攻略組が休養期間に入り、全員地上に引き上げて来たのだ。
「うーん、2週間近く休養を取って、また、潜るらしいからこっちで多少長いクエストにも参加できそうだけどね」
タウロはギルドの掲示板を前に考え込みながら答える。
「『黒金の翼』さん、丁度良かった!Bランク帯のチームから指名が来てるのでこちらまで来て話を聞いて貰えますか?」
受付嬢の1人が、タウロ達一行に気づくと、声を掛けて来た。
タウロ達が王都本部にはあまり顔を出さないので、気を揉んでいた様だ。
「何ですか?」
タウロ達も慣れたもので指名と聞いて受付まで歩み寄る。
「実は、ゴブリン将軍討伐クエスト依頼が他所の支部から来ているんですが、期限が今日一杯までで明日の朝には出発しないといけないんですよ。」
「ゴブリン将軍?それって、適正ランクはCランク帯じゃない。何でBランク帯がわざわざ参加して私達を指名なの?」
エアリスが受付嬢に疑問を呈した。
「みなさんへの指名をしたのはB-ランクの『銀の子鬼狩り』のみなさんです。確かにゴブリン将軍討伐の適正は通常Cランク帯ですが、今回、その下にはホブゴブリンも沢山混じっている様で、1つの軍隊規模らしいんです。その為、現地の支部の冒険者だけでは太刀打ちできないという事で、この王都本部の方に救援要請が来たんです」
「そのゴブリン達の規模はどのくらいなんですか?」
タウロが正確な情報を求めた。
「その支部の報告では、おおよそ、ゴブリン三百、ホブゴブリン八十、ゴブリンメイジ数体、ゴブリン将軍一体の様です」
受付嬢が、真剣な表情でタウロに答えた。
「合計約四百ってまた多いな、どこから湧いたんだよそりゃ!ホブゴブリンが80もいるのがまた、厄介だな……」
アンクが驚くのも仕方がない。
ホブゴブリンは、ゴブリンの上位種で、基本、適正ランクはDランク帯で、人並みに図体が大きく一体でゴブリン数匹分の強さがあると思えばわかり易いだろう。
「王都本部からはどのくらい派遣する予定なんですか?」
タウロが数を聞いてこちらの戦力を聞いた。
「こちらからは、指揮を執るB-チーム『銀の子鬼狩り』を始めとして、Cランク1チーム、Dランクチーム4チームを派遣してあちらの支部の冒険者と協力する予定になっています」
「やけに少なくないか?」
ラグーネが戦力を聞いて頭をひねった。
「あちらの支部の冒険者チームもBランクが不在ながら、Cランク帯チーム、Dランク帯も複数いて、領兵も出動しているという事で、要請がこの程度に落ち着いたようです」
「領兵も?なるほど、それで戦況はどうなっているんですか?」
「要請が届いた昨日時点では、睨み合いが続いているそうです」
「ところで、行き先はどこですか?」
「北西の山間部に位置するダントン子爵領です。王都からは、片道3日の道程です」
「……近いですね、わかりました。みんなどう?」
タウロを結論を出さず、みんなに聞く。
「俺達待ちなんだろう?断る理由がないだろう」
アンクがニヤリと笑って賛同する。
「そうね。うちを指名してくれてるんだもの。断る事はないんじゃない?」
エアリスも頷く。
「みんなが大丈夫なら私も大丈夫だぞ!」
ラグーネもいつも通り、賛同した。
「みんなOKなので、引き受けます。明日早朝、王都を出発ですね?」
「ええ、そうよ。良かったわ、ありがとう。それじゃ、お願いね」
受付嬢はようやく、クエストの定員数が満員になったので、ほっと溜息を吐くと手続きを始めるのであった。
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