第291話 4人の時間

 タウロとエアリス、ラグーネ、アンクはヴァンダイン侯爵邸内と限定していたが、4人でこれまでの出来事の報告を改めて本人の言葉で語って確認し合う時間を過ごした。


「──それにね?タウロの用意してくれた装備のお陰で、私達かなりレベルアップしたわよ。冒険者ギルド王都本部でも一目置かれ始めたし」


「それは良かった。でもそれは、エアリス達の努力の賜物だと思うよ。──そうだ!話は変わるけど、竜人族の3人もうまくやってるの?」


「もちろんだ!私がこっちでの生活について沢山教えたからな。それにあの3人は私より全然年長者で一人前の戦士だから問題ないぞ。まあ、王都に来てから別行動が多いが、情報収集の為だからそれは仕方ないな」


 ラグーネが3人について答えた。


「リーダー、あの3人はかなりのもんだぞ?戦闘能力はもちろんだが、追跡能力に、尋問能力、人物鑑定能力とどれも超一級品ときてやがる。あんな万能な戦士が3人も揃っている事が奇跡だよ」


 アンクが、これほど人を評価しているところを見るのは珍しい。


 アンク自体が一流の戦士で、自分基準で人を見るから他者を評価する事がほとんどないのだが、そのアンクが褒めるのなら間違いないだろう。


「あの3人が入ってる事もあって、『黒金の翼』の評価はかなり上がってるわ。タウロが戻る頃には、王都でも『黒金の翼』の名は有名になってるかもよ」


 エアリスが、嬉しそうに笑顔で答えた。


「そっか。じゃあ、僕もあっちでその間、クエスト頑張らないとなぁ。あ、もちろん、ぺらと一緒にね」


 ベルトを触ると、ベルトに擬態した従魔のぺらがプルンと反応する。


「タウロの話の通りなら、ぺらはとんでもない強さよね?でも、だからと言ってタウロは無茶し過ぎて、ぺらに無理させないでよ?ダンジョンでの領域守護者の攻撃もぺらの体を張った防御で助かった様なものみたいじゃない」


「ははは……。確かにあれはぺら頼りだったよ……。これからは気を付けるよ」


 タウロはエアリスの指摘に苦笑いすると、自重する事を誓うのであった。



 こうして、4人のひと時の時間はあっという間に過ぎ、一晩、ヴァンダイン侯爵邸に滞在したタウロは朝早く竜人族の村に戻る事にした。


「じゃあ、エアリス、ラグーネ、アンク。あとはお願いします。養子縁組の件が片付いて、あのサイーシ子爵の責任追及が成される事を祈ってるよ」


「うん、タウロも気を付けてね。こっちの事は私達に任せておいて。次、会う時はタウロを追い詰めたサイーシ子爵の逮捕の時ね」


「そうなる事を願ってるよ。──ああ、そうだ!ヴァンダイン侯爵やグラウニュート伯爵にも改めてよろしく言っておいて。このご厚意は忘れませんって」


「一応伝えておくけど、次、戻ってきた時に自分からも伝えなさいよ」


「そうだね。じゃあ、ラグーネ『次元回廊』をお願い」


「わかった」


 そう答えるとラグーネは『次元回廊』開く。


 タウロは、3人に手を振ると、次の瞬間その場から消えるのであった。


「また、行っちまったな」


 アンクが、当り前の感想を漏らした。


「そうね。タウロはあっちでも頑張ってるし、私達も頑張りましょう。タウロの居場所である『黒金の翼』を守らないとね」


「そうだな!それが今、私達に出来る大事な事だな!」


 ラグーネは大きく頷いて賛同した。


「それじゃあ、竜人族の3人が起きて来たら、今日は冒険者ギルドに行ってクエストをこなすか?」


「そうね。3人も最近、情報収集に行き詰ってるみたいだし、息抜きにいいわね」


「よし、それじゃあ、私が起こして来よう」


 ラグーネが竜人族の先輩3人を呼びに行こうとした。


「それは、止めときなさいよラグーネ。前回、朝早く起こしに行って怒られたばかりでしょ?」


 エアリスが、寝起きが悪いらしい竜人族3人を気遣ってラグーネを止めるのであった。


「……そうだった。じゃあ、起きるまでの間は……。──アンク、剣の鍛錬に付き合ってくれ」


「ああ、別にいいが、また、タウロから貰った防具有りのガチの方か?」


「もちろんだ!ちゃんと使いこなせるようになってタウロが戻ってきた時にびっくりさせたいからな」


「ははは。そりゃ気持ちはわかるが、やり過ぎて侯爵屋敷の庭を荒らす事にならない様に気を付けないと、ここの執事のシープスさんに、また怒られるぞ?」


 アンクが、前回、同じ様に激しい鍛練の際に庭を荒らす事になり、王都の邸宅に戻っていた筆頭執事のシープスに説教された前科を指摘した。


「……あれは、流石に私もやり過ぎたと反省している……。くっ、殺せ!」


 ラグーネはアンクの指摘に反省と共にいつもの台詞が出てくるのであった。

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