第276話 202階層
ダンジョン202階層の各攻略組の補給を行う為、3組の補給組は『休憩室』を後にした。
タウロと護衛チーム、そして本来の補給組の護衛チームの合わせて11人も第3の攻略組を追って201階層の『休憩室』を後にし、すぐ側の階段を下りて行く。
「従来ならば、各チームのサポート組が『休憩室』まで補給物資を取りに来るのですが、タウロ殿の参加でより効率的にとサポート組は攻略組のサポートに徹する事が出来る体制に変更して、我々補給組が前線まで届ける形にしたのですよ」
護衛チームの隊長ツグムが階段を下りながら説明してくれた。
「それって、僕が補給組のみなさんの仕事を増やしたって事ですよね?」
タウロは、補給組が本来、『休憩室』までしか運ばなくて良かったのではと察した。
「いえ、そういう事ではないのですよ。タウロ殿がいなかったら補給組はこの最深階層の『休憩室』まで1層1層自力で潜って、補給物資を運び込まなくてはいけなかったのです。さらには食糧物資はマジック収納から出したら保存が限られるので、置きっぱなしにはできません。なのでサポート組が回収にくるまで『休憩室』に補給組が留まっていなければなりませんでした。それらの苦労を考えると物資を前線に運び込む作業は楽なものです。それに道中はサポート組がある程度安全を確保してくれてますから。ですから労力は以前の何十分の一かわからない程楽になりましたよ」
ツグムが丁寧にタウロの重要性を丁寧に答えてくれた。
全員が長い階段を下りると横に続く通路があり、出口は強い光が射している。
「ここはもう202階層なんですよね?」
タウロは緊張感を持ってツグミに聞く。
「……ええ。一応そうなります。あの出口を抜けると202階層がどんなものかわかると思うのですが……」
タウロを後衛にして補給組が警戒して先頭を進む。
出入り口は何かと危険なのだという。
まして深い階層は頭が良い魔物が多いのでスキルを駆使して待ち伏せている可能性もある。
だが、タウロは光の射す出入り口に近づきながら魔物が周囲にいない事を確信していた。
そう、タウロは最近『アンチ阻害』能力を獲得していたからだ。
『気配察知』と、『真眼』、そしてこの『アンチ阻害』の組み合わせは最早、チートレベルと言っていいだろう。
あらゆる阻害系スキルを無効にしてしまうのだから、隠れているつもりでもタウロの前には丸っとお見通しだ。
「周囲に魔物の気配は無いようです。大丈夫だと思いますよ」
タウロはそう言うとどんどん進んで行く。
光が差す出入り口を抜けると、そこは──
何と、青空が広がる大草原であった。
近くには森らしきものも見えるし、遠くには山も見える。
「え?外?」
タウロは一瞬幻覚を見ているのかと困惑する。
「……202階層は地上タイプか。道理で攻略組がクリアに時間がかかってるわけだ……。」
護衛チームのリーダーツグムがこの景色を見るなりそう口にした。
「これはどういうことですか?」
タウロの困惑は続く。
「あ、これはもちろん最深階層ですよ。空はダンジョンが作り出したただの天井ですし、景色も無限に広がっている様に見えても実際は端っこがある壁です。しかし、もの凄く広い空間です。その為にこの地上タイプの階層は下の階層に行く為の階段を見つけるのが大変なんですよ。道理で5日経っても攻略組から下の階層を発見したという報告が無いわけだ……」
ツグムの説明を受けてもタウロは信じられない思いで眼前に広がる景色を見渡した。
風も吹いてるし、陽だまりの香りもする。
という事はあの太陽は何?
タウロは直視できない程強い光で大地を照らす太陽の様なものも気になった。
「あ、あれですか?違う階層で我々も調べようと思ったのですが、天井が高すぎて調べられませんでした。仮説としてダンジョンが作り出した太陽もどきという事になっています。つまり、よくわかっていません。ははは」
ツグムはタウロの疑問に答えられず笑って誤魔化した。
「……ダンジョンは竜人族のみなさんでも解明されていない部分は多いんですね」
「そうです。真相解明はサポート組の仕事で現在も色々と発見されてるものもありますが、謎の方が圧倒的に多いですね」
竜人族でもわかっていないのであれば、人族の研究もそんなに進んでいないだろう。
タウロはダンジョンの未知の部分を目の当たりにしているのだった。
「それでは、攻略組とサポート組の跡を追います。」
補給組の追跡担当が地面を見ると先頭に立つ。
「我々が担当する第3グループは基本通りこちら側から探索を始めてます。向かいましょう」
タウロには何の変哲もない地面だが、追跡の専門スキル持ちには何か見えているらしい。
その指示に従い、タウロ一行は攻略組を追って202階層の奥地に踏み入るのであった。
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