第275話 送迎の日々から
タウロが『空間転移』によるダンジョン攻略の為の竜人族を送り届けて5日が経った。
その間、タウロはマジック収納を持つメンバーがいる補給組を一階層から最深階層まで送迎するクエストを続けていた。
そう、族長リュウガが冒険者ギルドに依頼する仕事として、タウロは朝から一度冒険者ギルドに寄って、フリークエスト「ダンジョン攻略のお手伝い」を手続きして潜っているのだ。
もちろんだが、相変わらず冒険者ギルド竜人族の村支部には、他のクエストが存在しない。
だが、タウロは一冒険者として、これがこの竜人族の村に滞在する上での存在意義だったから、1つしかないクエストも苦ではなかった。
「それでは今日もお願いします」
護衛チームのツグムとそのメンバーに冒険者ギルドの前で合流して挨拶をすると、補給組もそこに合流して一緒にダンジョンに向かうのが日課である。
「あれ?みなさん今日は大きな荷物を背負っていますが、マジック収納持ちの方は今日いないのですか?」
補給組の仰々しい恰好に気づいた。
「それがたまたま今日は、担当予定だったマジック収納持ちの奴が法事で外れたので残り全員で手分けして運ぶ事になりました」
大きな荷物を背負う補給組の護衛担当がタウロの疑問に答えた。
「それならば、僕がマジック収納持ちなので、最深階層まで代わりに運びますよ」
タウロが進んで申し出た。
「ですがこの量だとマジック収納もそれなりに容量が多くないと無理ですよ?」
「大丈夫ですよ、僕のマジック収納は(極)なので限界を感じた事ないですから」
平然と答えるタウロであったが、補給組のメンバーは驚きで目を丸くしている。
「……え?タウロ殿のマジック収納は限界がないんですか!?」
「はい。なのでみなさんの荷物収納しますね」
タウロはそう答えると常人では運べない量を背負っている竜人族の戦士達の荷物を次々に収納していった。
「……驚きました。攻略組でもこれだけの収納力のある能力を持っている者はいないですよ」
「ははは。でも、攻略組のみなさんは才能溢れるスキルをお持ちの方ばかりじゃないですか。僕なんて足下に及ばないですから。──それではダンジョンに向かいましょう」
タウロは、ここ最近、竜人族の人並み外れた光景に見慣れて自分の感覚が麻痺していたが、驚かれた事で
そうだった、僕のマジック収納の収納率は異常なんだった。この村にいるとつい感覚が麻痺しちゃうなぁ。
と、自分も中々凄い能力を持っていた事を思い出すのであった。
そして、内心苦笑いしながらダンジョンに向かうタウロとその一行であった。
ダンジョン最深階層である201階層。
「待機組のみなさんお疲れ様です」
201階層に到着すると『休憩室』に滞在してるサポート組にタウロは挨拶した。
彼らはダンジョン攻略のメンバーが緊急で駆け込んできた時の治療や支援、援護の為に『休憩室』に24時間待機しているメンバーだ。
彼らもこの数日、タウロが上から運んできた人達だ。
「「「お疲れ様ですタウロ殿。」」」
『休憩室』にいる全員がタウロに挨拶をする。
「じゃあ、補給組のみなさん荷物を出しますね」
そう言うとタウロは荷物を出す。
「補給組の荷物をタウロ殿が運んできたのですか?」
待機中のメンバーの1人が気づいて声をかけて来た。
それに対して補給組のメンバーが理由を説明する。
「……なるほど。しかし困ったな。今いるメンバーには二人しかマジック収納持ちがいないから攻略組3組に手分けして運べない。丁度今日、初日以来の補充だから補給組を当てにしていたんだが……」
「荷物を手分けして自力で運ぶしかないな。護衛もその分増やさないといけないが仕方ない。──おい、特別編成で1組は多く人数を割くから、参加出来る奴いないか?」
『休憩室』内は、急遽騒がしくなって来た。
予定には無い事だったので色々と提案がなされる。
「──それだと、こっちにサポート組が駆け込んできた時、困らないか?」
「──だが、補給組が全滅するよりはマシだろう?」
「──不測の事態もある。ここに待機しておくメンバーを割くのは難しいぞ?」
意外に法事でこれなくなった竜人族のマジック収納持ちの欠員は、大事になってきた。
「……えーっと。僕が荷物持ちで参加しましょうか?それなら護衛チームが元からいますし、そこに補給組の護衛も参加して貰えれば安全も十分確保できると思いますから」
タウロの提案に竜人族の者達は、
「いや、それではタウロ殿の負担が……」
「しかし、今は背に腹は代えられぬぞ?」
「馬鹿野郎。タウロ殿に何かあったらどうする!それこそ、このダンジョン攻略は失敗に終わるぞ?」
「だからこそ、護衛を多く付けたらとタウロ殿は提案してるのではないか!それにタウロ殿に付いている護衛メンバーはサポート組の予備メンバーだから、この中でも一番の腕利きだぞ。そこに今回行く予定のメンバーを付ければより安全だ」
最初こそ、反対意見もあったが、意見が出揃うとタウロに参加して貰うのが一番という流れに変わっていった。
こうして急遽、タウロがメンバーに入った補給組が結成される事になったのだった。
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