第233話 生き返って
一時はその死に絶望したエアリス、ラグーネ、アンクだったが、タウロの生還は、まさに奇跡だった。
息を吹き返したタウロを移動させる事も躊躇われ、一行はそのまま、その山中に野宿する事になった。
野宿する為の道具類はタウロがマジック収納に入れているので、文字通りの野宿である。
エアリスがタウロの膝枕をし、ラグーネがそのタウロに上着をかけ、アンクは周囲の警戒をした。
たき火の周囲はエアリスの結界魔法が張られているので安全は確保できていたが、タウロの意識が戻らないので緊張感は続いている。
「それにしても一体タウロに何が起きたんだ?確かにあの時、タウロは死んでいたと思うんだが……」
見張りをしていたアンクがラグーネに話しかける。
「もしかしたら、タウロは自己蘇生系能力を持っていたのかもしれない」
ラグーネは頭の奥から村で習った知識を引っ張り出して仮説を立てた。
「自己蘇生?」
「『大教皇』という固定スキルに『自動自己蘇生術』という能力があるのだが、自分に死が訪れた際、ほんのわずかな確率、それこそ極わずかで、運に左右される確率で自己蘇生するのだ。ただし、この能力は発動しても死んだ本人が死に至るほどの負傷をしていたら生き返ってもまたすぐ死んでしまうので、今回のあの体内を破壊する『範囲即死呪法』だと生き返ってもすぐ死ぬはずなのだが……」
ラグーネも自分の知識では補助できない未知の部分があって悩んだ。
「…タウロには『超回復再生』の能力があるの。死ぬ瞬間まで、そして生き返った後も破壊された体内をその能力で回復し続けていたとしたら?」
エアリスが、タウロの能力について自分なりの仮説を話した。
「タウロにはそんな能力もあるのかい!?確かに『超回復再生』があれば…。それでも、やはり助かる確率は1%も無いと思うんだけど……」
ラグーネは奇跡レベルの確率にタウロが生き返った事を説明できずにいた。
「…僕には『幸運』という能力が付いてるからかもしれないね」
エアリスの膝枕で寝ていたタウロが起き上がって言った。
「タウロ!」
エアリスはそんなタウロを抱きしめると、泣き始めた。
「…心配かけてごめんねみんな。どうやら、助かったみたいだ」
エアリスに抱き付かれたままタウロは三人に謝った。
「やれやれ…。リーダーどうやって生き返ったんだ?」
アンクが、今度は本人に確認する事にした。
「ラグーネの説明を寝ているところで聞いてて僕も合点したのだけど…。実は、ラグーネの魔槍を作った際に死にかけて──」
──タウロの回想。
魔槍を創造魔法で作った時の事……。
魔力の枯渇で死にかけたが、エアリスのサポートで助かった時、
「特殊スキル【&%$#】の発動条件の1つ<幾度もの死線を潜り抜けし者>を確認。[自動自己蘇生術]を取得しました」※220話参照
との声が聞こえたタウロだった。
だが、明らかに死んで初めて作動する復活系だとすぐ理解できたので、試す機会、というか試す度胸が無かったのでエアリスにも話す事なくそっと記憶の隅に押しやっていた。
「──という事でラグーネの推理通り、『自動自己蘇生術』と、『幸運』で低確率の発動条件を満たして復活、『超回復再生』で、その他の悪条件を解決して生き返れたという事だと思う、本当にみんなには心配かけたね」
まだ抱き付いたままのエアリスの背中を軽くポンポンと叩いて慰めると、やっとエアリスが離れてくれた。
その顔は泣き過ぎて、ぐしゃぐしゃだ。
「……あの村で何があったの?」
エアリスは涙を拭いながら、今回の本題について聞いて来た。
「……それはね──」
タウロはあの村が、暗殺ギルドの教育施設らしいという事、ダレーダー伯爵暗殺未遂事件の呪術者がここの教官を務めていたらしい事などを簡単に説明した。
そして、暗殺ギルドとはエアリスの件も含めて、タウロが任務の邪魔をし続けている関係性からタウロへの報復の為に1人の病人の少年が残って、命を懸けてタウロとその仲間の命を奪う大規模な罠を仕掛けていた様だと、推測した。
「リーダー、暗殺ギルドから命を狙われていたのかよ…。まあ、俺が推測するにはその少年暗殺犯が死ぬ直前に発した魔法の高音は仲間に成功を告げる合図だったと思うんだが、どうだろう?」
少年の直前の行動を目撃していたのでほぼアンクの中では断定していた。
「私もそう思う。あれは察知系の範囲外で待機していた仲間への連絡方法だと思う。あの高音のせいで森の広範囲の鳥が一斉に飛び立ったのが遠くからでも視認できたと思う」
ラグーネが冷静に分析してみせた。
「だな。死んだのを確認しにも来ないだろうから、リーダーは暗殺ギルドではビンゴリストから外れただろうし良かったじゃないか」
「何で確認しに来ないと思うの?」
意識を失っていたタウロはその根拠がわからなかった。
「最初から確認するつもりなら、成功後、家々が発火する様に仕組む必要性がないからな。確認の時に燃やせばいい。それをしないのは、現場にやって来て、敵に遭遇する可能性の方を恐れているからこそだろう」
アンクはタウロに村が燃えてしまった事を説明した。
「そうか…。なら、僕は死んだ事になってるから当分は狙われないね」
タウロはそう言うと笑ってみんなを安心させるのだった。
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