第215話 解決翌日の面会
事件解決の翌日の昼。
タウロ達はダレーダー伯爵の腹心と会う事になった。
事件が未遂に終わった事へのお礼がしたいとの話であったが、最初、固辞して帰ろうとしていた。
そもそもこちらはクエストの途中でもある。
そして何より、ダレーダー伯爵は宰相派閥の人でタウロとは会った事があり、顔を覚えている可能性があった。
なので理由を付けて会わない様に断っていたのだが、呪い殺された男性の家族の生活の保障をすると匂わせてきたので断りづらくなった。
不幸中の幸いなのは、ダレーダー伯爵は自身の暗殺未遂事件発覚で非常に警戒しており、直接会うのはあちらも避けてくれた事だ。
それで、伯爵の腹心と会う事になった。
「今回は、我が主の暗殺を未然に防いでくれた事を主に代わって感謝申し上げます」
腹心の男性は深々と頭を下げた。
ただ、相手はアンクだ。
タウロが代表すると話が長くなるし後々厄介なので代わって貰った。
アンクは居心地が悪そうだったが、今は我慢して貰いたい。
「こっちは偶然なんでそんなに頭を下げられても困るぜ」
アンクはタウロと打ち合わせで偶然を強調する様に言われていたので、その言葉を伝えた。
「ですが、あなた方が我が領主の命の恩人であるのは事実です」
腹心の男性は恩人を強調した。
「うちは、依頼主の親の生活の保障をして貰えるなら、それ以上は望まないんで、その辺をよろしく頼みますわ」
アンクが棒読みの台詞を言う。
「なんと!自分達の報酬は望まないと!?」
「うちは、依頼主から報酬を貰うんで。お宅の件は何度も言うが偶然なんで、依頼主に改めて感謝して貰えると助かるぜ。じゃあ、俺達は依頼主にこの事も含めて報告してクエストを完了したいんで、帰ってもいいかい?」
アンクはタウロをチラッと見て台詞を言った。
「わ、わかりました!それでは、みなさんの依頼主にこの謝礼をお渡しして貰ってよろしいでしょうか?今回、犠牲になられた男性の見舞金と今後の生活の足しに。後日、使いを送って改めてお礼はするとお伝え下さい」
腹心の男性は、後ろの机の上に置いていたお金の入った革の袋をアンクに渡した。
「わかったぜ。これはちゃんと依頼主に渡そう。それじゃあリーダー、このお金マジック収納に頼むわ」
アンクはお金を受け取ると、やっとこの芝居が終わると安心してタウロをリーダーと呼んでしまった。
「え?」
腹心の男性は、子供がリーダーと呼ばれた事に聞き間違えかとタウロとアンクを何度も見直した。
「……。ち、違うじゃんリーダー!僕の名前はリーダだっていつも言ってるでしょ!ははは!」
タウロがその場しのぎの嘘をつく。
取り敢えず、タウロという名前だけ出なければ、ダレーダー伯爵も聞いただけでは、自分に結び付ける事はないだろう、いや、ないと思いたい。
腹心の男性は腑に落ちない顔をしていたが、そうなのか?と都合よく解釈したのか追及はしてこなかった。
タウロ達一行は、無事?ダレーダー伯爵の城館から出ると一息つくのだった。
「アンク、勘弁してよ……!あれさえなければ完璧だったのに……」
「すまんリーダー!安心したら思わず出ちまった……。だが、これで、依頼主の生活費も貰えたし、万々歳だろ?わはは!」
アンクは笑って誤魔化した。
「とにかくこれでやっと帰れるわけね?」
エアリスがやっと、終わったと背伸びをした。
「今日はもう昼を過ぎてるから帰るのは、明日朝一番にしようか。今から帰ったらあっちに着くのは夜中になるし」
タウロは今日の帰郷を断念した。
「そうだな。では、今日は依頼主の実家に泊まらせて貰おうか?」
ラグーネが、提案する。
「そうだね、それなら宿泊費が浮くから、夕飯にお金使おうか」
「それはいいな。リーダーの状態異常回復魔法もあるし、今日は沢山飲ませて貰うぜ?わはは!」
アンクはノリノリだ。
「飲むのは良いけど、酔い過ぎた時点で、タウロに魔法使って貰うわよ?」
エアリスが釘を刺す。
「そりゃないぜ、酔う意味が無くなっちまう!」
アンクが嫌な顔をした。
「まあまあ。アンクもそうならない様、ほどほどに飲んでね」
タウロが窘めると、ラグーネも話に入ってきた。
「では、私も今日は飲ませて貰うかな。後はタウロの判断に任せる」
ラグーネがこんな宣言をするのは珍しいので、二日酔い以外では魔法を使うのは止めておこうと思うタウロであった。
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