第130話 悪人の末路
タウロ達は警備兵を呼び、攫われた子供達の無事を確認して貰った。
そして、タウロの証言によって主犯である商人が逮捕され、一時幕を閉じる形になった。
逃走したルヒとソークは再度指名手配されたのでこの街にはいられないだろう。
が、しかし、ルヒについては『ナニワーズ』とタウロ達は諦めていなかった。
『ナニワーズ』にとっては、賞金首。
タウロ達『黒金の翼』にとっては、黒星を付けた相手だ。
汚名返上である。
この街から逃げるにしても、そうたやすい事ではない。
となると逃走経路は限られてくる。
タウロは「海」から逃げると読んでいた。
そこで、港に警戒網を張っていたのだが、見事にすり抜けられた。
深夜の事である。
沖に停泊していた大型船に漕ぎ出す小舟が一隻あった。
警備兵が岸壁から停止を呼びかけたが止まる様子はない。
駆けつけたタウロが光の精霊魔法『照明』で照らすと小舟を漕いでいるのはルヒだった。
「残念やったな!あの船は他国の船や!あそこにはお前等でも手は出せへんで!」
勝ち誇ってルヒは勝利宣言をした。
すると岸壁に自分を照らす『照明』魔法とは別に、明るい光が宿った。
なんやあれ?
『照明』魔法の光がまぶしいので目を細めながら、その岸壁に灯った光を見つめていると、光が大きくなっていく。
いや、こちらに迫っている!?
そう思った時には遅かった。
弧を描きながら迫った光の矢がルヒの胸を貫通して穴を開けると、矢は小舟の縁に深々と突き刺さる。
「そんな馬鹿な……。この距離を……、この波風の中を……、こんな威力で正確に……」
がはっ
ルヒは、小舟の中で崩れる様に倒れると息絶えた。
「……ここからはわかりづらいですが、多分、仕留めました」
タウロは手応えを感じて側にいた『ナニワーズ』のリーダーに報告した。
「……マジか……。この距離から正確にルヒを射抜くとは……、お前凄いな!」
リーダーが、タウロを絶賛しているとタウロの脳裏に『世界の声』が響いてきた。
「特殊スキル【&%$#】の発動条件の一つ<限界の先を射通す者>を確認。[
神箭手……、確か弓の名手を表す名称だったかな?
タウロは久しぶりの能力獲得に内心小躍りしたが、今は散ってルヒを探していたみんなが集まってきたので喜ぶのは後回しにするのであった。
ルヒの国外逃亡未遂は深夜の事だったのでタウロ達はまた、警備兵へ、事の顛末を説明する必要があり、帰郷を一日伸ばす事になった。
雇い主であるリーダは仕方ないなぁ、と言っていたが、オサーカスの街にまだ居れる口実が出来て嬉しい様だった。
「──というわけです」
タウロは詰め所で警備責任者に証言していた。
「……はぁ、他の冒険者の証言とも一致するからいいんやけど、無茶苦茶やな君。おかげで人攫い事件は一件落着、子供達も無事戻って被害者家族も喜んでるから良いんやけどな」
責任者はタウロの活躍に呆れ気味だったが、冒険者はこんな感じなのだろうと無理やり自分を納得させていた。
「後は、残党が一人逃げたらしいけど、それはすぐ捕まるやろ。ルヒの賞金はギルドで受け取ってくれや。それじゃ、ありがとうな!」
責任者がお礼を言うと、警備兵達も敬礼した。
タウロは照れながら部屋を出ると待っていたエアリス達と合流した。
「……結果は、良かったけど……、上には上がいるんだな……」
ルメヤがぼそっと弱音っぽい事を漏らした。
ルヒは『黒金の翼』にとって、圧倒的強者だった。
Bランク級相当の強さだったろう。
ここに来てシンとルメヤは、自分達が驕っていた事を痛感したのだった。
だがエアリスはそうは思わなかったのか、
「何、当たり前の事言ってるの。必ず格下が現れてくれるわけじゃないのよ?強い敵はいっぱいいる、だから、私達は強くなる為に努力するのよ。自惚れないで!」
とシンとルメヤを叱責した。
タウロにはそのエアリスが自分に言い聞かせている様にも聞こえたが、その事は指摘せず、みんなを遅いお昼ご飯に誘うのであった。
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