第119話 山賊もどき達
山賊もどきに向かうシンとルメヤの背後からエアリスが念の為、防御魔法をかけた。
山賊もどきの連中は相手が問答無用で向かってきたので慌てた。
「あわわ!み、みんなかかれ!」
「お、おう!」
山賊もどき達は二人に襲いかかった。
だが、ルメヤとシンの相手ではなかった。
ルメヤの盾に吹き飛ばされ、シンの体術で蹴り飛ばされ、見る見るうちに倒されていくとこれは不味いとまとめ役の男がシンに斬りかかって動きを止めた。
「お、少しはやるみたいだね」
シンは剣を受け止めその剣を跳ね上げると、体を反転させてまとめ役の足を回転蹴りで刈ってひっくり返した。
まとめ役は転んだ拍子に地面に頭を打ち付けると気を失った。
残された者はまとめ役がやられると呆気なかった。
慌ててすぐに武器を捨てると、降参したのだ。
「い、命だけは勘弁して下さい!」
山賊もどき達は命乞いを始めた。
「これに懲りて、山賊の真似事はもう止めときなさいな」
後ろで見ていたタウロが、前に出てくるとそう言った。
「近隣の村々にもあなた達の噂は広まり始めてます。今は大目に見られていますが、これ以上やると討伐対象になる事も考えられます。そうなったらあなた達は終わりです。そうなる前に止めておいて下さい」
タウロは、山賊もどき全員に言い聞かせる様に説得した。
山賊もどき達から、どよめきが起きた。
そこまで大事になると想像していなかったのだろう。
「わ、わかった。俺達も討伐されたくない!」
「噂ではあなた達は近くの山村の人間ですよね。なぜこんな事をしたんですか?」
「そこまでバレているのか!」
山賊もどき達は再びどよめいた、上手くやってるつもりだった様だ。
「……俺達はあんたの言う通り近くの山村の人間だ。今年は狭い畑は不作に、狩猟も不猟続きで生活に困ってたところ、そこで気を失ってるバンディが提案したんだ。追い剥ぎをやろうと」
シンが気を失っているまとめ役のバンディを小突くと起こした。
「……あれ?俺は何を……?」
シンに剣を突き付けられている事に気づくと、助けてくれと命乞いし始めた。
「あなたが主犯なんでしょ。命乞いする前に言う事ありますよね?」
タウロが反省を求めた。
相手は子供だったが、雰囲気に呑まれた。
というよりはタウロが『威光』を使ったのだ。
弱い相手、弱った相手には『威光』は大いに力を発揮する。
「す、すまなかった!もう、二度とやらないから!」
タウロのスキルに気を呑まれたバンディは平謝りした。
「とりあえず、僕達は仕事の途中なのであなた達に構ってる暇はありません。なので仕事が終わったらここに戻って来るので、また、話しましょう。当面の生活費を渡しておきますので、このような事は二度としないで下さい」
タウロはそう言うと、マジック収納からお金の入った革袋を出すとバンディに渡した。
「え?」
その革袋の重みと共に、意外な展開にバンディ達は面食らった。
「あ、貸すのであって上げるのではありません。僕もそこまでお人好しではありません。なので、ちゃんと山村の皆さんの為に正しい使い方をして下さい。それでは帰りにまた来ますね」
そう言うとタウロは御者に頷くと馬車は動き始めた。
エアリス達もそれに合わせて歩き出す。
「あ、え……。あの……、ありがとうございます!」
バンディ達は全員で頭を下げた。
そして、去っていくタウロ達が見えなくなるまで手を振り続けるのだった。
「タウロはお人好しね。お金は返済能力がある人に貸すものよ?」
エアリスが笑顔で教えを説いた。
「言ったでしょ?帰り道で山村に寄って、返済の為の話し合いするから」
タウロが当然という顔をした。
「え?本当に回収するつもりなの?なんだ!良いところがあると感心してたのに」
エアリスはタウロの返答に呆れた。
馬車からその会話を聞いていたリーダが顔を出すと、
「タウロさんはきっと山村の今後の為に知恵を出すおつもりなんですよ。だから、甘やかさず、お金は貸す形をとったんです」
と、見抜いたとばかりに意見を述べた。
「鋭いですね。まあ、山村の様子を見てからにもなりますが、向かうオサーカスで山村の為に何かしら仕入れられればいいですね」
リーダの読みにタウロは感心しながら答えるのだった。
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