第110話 調査団一行
エアリスは翌日、シンとルメヤにも自分の素性を明かした。
二人は貴族というだけで、ミーハーな喜び方をした。
貴族と口を聞くの初めてだ!という具合にだ。
タウロは、一応、エアリスは貴族にしてはまだ、寛大な方だけど普通、他の貴族は礼儀や立場を重要視するから気を付ける様にと二人に念を押した。
そして、この事は秘密にし、エアリスにはこれまで通り変わらない扱いをする様に二人にお願いした。
タウロからお願いするのも変な話だが、エアリスも隣で頷いて、
「これからもよろしくお願いします。」
と、頭を下げると丁寧にお願いした。
二人も慌てて頭を下げると、
「わかりました!」
と答えるのだった。
その光景をみてタウロはおかしくなり笑うのだが、当人達もそれにつられるとその場は笑いに包まれるのだった。
数日後。
冒険者ギルドにひとつの連絡が入った。
それは王都からこの村へ調査団がやってくるというものだった。
冒険者ギルドからダンジョンについての報告を国に上げた結果だったが、反応が早いところをみるとやはり生まれたばかりだったダンジョンの調査は、国が管理する今も成長し続けるダンジョンの攻略の手掛かりになるかもしれないという思惑がありそうだった。
迷宮核の存在も国は仮説の一つとしてしか知らないし、破壊するとどうなるか、破壊する時、破壊する者が欲するアイテムを出すと思われる事も知らないだろう。
ギルドへの連絡はその調査団の道案内で、攻略に参加したチーム限定の指定クエストなのだが、他のチームが嫌がった。
というのも、国からの依頼にも関わらず、報酬が少なかったのだ。
それこそ、Eランク帯が受けるレベルの報酬(それでも低い方)だったので、早々にクロエからチーム『黒金の翼』に話が下りて来たのだった。
「お願いタウロ君!君達しかもう残ってないのよ!」
支部長であるクロエからお願いされてE-ランクの自分達が断るには気が引けた。
とはいえ、タウロもこの話はあんまり受けたくない。
報酬も少ないが拘束時間も長く、さらにはタウロが手に入れた迷宮核の欠片とアルテミスの弓も調査と称して取り上げられるのではないかという恐れもあった。
相手は国の調査団だ、何が起きてもおかしくない。
だが、だからと言って、断ってクロエを困らせたくもない。
渋々だが、タウロ達チーム『黒金の翼』が調査団の道案内クエストを引き受ける事になるのだった。
調査団が村に訪れる予定日。
村の入り口で、タウロ達は待機していた。
遠くから物々しい一団がやってきた。
一目で王都の騎士団とわかる鎧姿の馬に跨る一団と、それに前後を護られる様に馬車が二台続いている。
騎士の数だけで三十名はいるだろうか?
依頼料をケチるので小規模だと想像してたが、思ったよりも規模が大きい調査団だった。
調査団が村に到着した。
馬車から、四角帽にゆったりした紫色の装束で眼鏡をかけた痩せた学者っぽい男性が降りてきた。
その助手と思われる赤髪に学者と同じだが黄色い装束の女性も後に続いて降りてきた。
「君達が案内役の冒険者だね。ほう、これはこれは……。君達面白いね……!それに君がリーダーかい?まだ、子供なのに凄いね!私の名はシャーガだ、よろしく」
シャーガと名乗った学者の男性は意外にも気さくだった。
身構えていたタウロは呆気にとられたが握手を求められたので素直に従って握手するとタウロと名乗った。
「じゃあ、タウロさん。早速、現場に近い山村まで案内して貰えるかな。今からなら夕方までには辿り着けるだろう?」
シャーガはワクワクが止まらないのか急かした。
「シャーガ殿、今日はここで一泊して現場には昼に着く予定でしたよね?それに王都から最短で来てるので、部下達にも休ませてやって下さい」
騎士団の隊長と思われる男性が、シャーガを宥める様に言った。
「そうですよ、先生!ここまでも無茶をお願いしてるんですからこれ以上駄目ですよ。」
助手の女性も、宥めた。
「……うーん。すぐに行きたいのになぁ。わかった今日はここに泊まろう。それじゃ、まずは宿屋を案内して貰えるかな?」
タウロ達は頷くと前もって予約していた『憩い亭』に案内するのであった。
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