第103話 仲間の災難

 アルテミスの弓の威力の確認をした二日後。


 シンが故郷の村から戻ってきた。

 タウロとエアリスが薬草採取クエストから戻って来て、ギルドに報告するところで丁度そのシンと遭遇した。


 一人で戻ってきたところを見ると彼女は後日やって来る様だ。


「お帰りシン。彼女が来る日が楽しみだね」


 タウロがそれを察して言うと、


「……タウロ。そんな日は来ないよ。自分、フラれたんだ……」


 シンがガックリと肩を落とすと涙を流した。


「……えー!?」


 予想外の答えに、驚くとそれ以上は何も言えなかった。


「何でフラれたの?」


 エアリスが、タウロが気を使っていた聞きづらい事をシンにぶつけた。


「……自分が留守にしてる間に新しい男、作ってた……」


 あー、遠距離あるあるだ……。


 タウロは内心、シンに同情したが、どう声をかけていいかわからず沈黙した。


「まめに連絡取ってなかったんでしょ?自業自得ね」


 エアリスが容赦ない言葉をぶつけた。


 エアリス!君、その歳で何を知ってるのよ!


 タウロは内心ツッコミを入れた。


 とりあえず、シンをこれ以上傷つけてはいけないと思ったのでエアリスに注意して、シンに帰る様に促した。


 シンが魂が抜けたような顔 でその場をトボトボと立ち去っていくと、入れ違いでルメヤが帰ってきた。


 良かった、シンがルメヤと遭遇してたら、ルメヤの幸せっぷりに、もっと傷を抉られていただろう。ルメヤにはシンの事を教えて、傷口に塩を塗る前に気をつけて貰おう。


「ルメヤお帰り。彼女は後日かな?そうそう、幸せのところ悪いけどシンが……」


「……駆け落ちされてた!」


 ルメヤが出し抜けに不吉な事を言った様にタウロには聞こえた。


「え?」


 タウロは自分の耳を疑い、咄嗟にルメヤに聞き返した。


「彼女が俺の子分だった奴と駆け落ちしてた……!」


 こっちもかーい!


 タウロは内心ツッコミを入れた。


「ルメヤもなの?シンも彼女が新しい男作ってたらしくて凹んでるわよ」


 エアリスはとことん気を使う気はないらしい。


「え?シンも?」


 ルメヤはショックを受けていたが、仲間の不幸に表情が変わった。


「そうよ。凹んでないでシンに声をかけて上げなさいよ、年長者でしょ」


 無茶を言っちゃいけないよ、エアリス。今はルメヤもショックなんだから……。


 タウロがエアリスの無茶な注文を止めようとしたが、


「……わかった、シンの家に行ってくる。」


 と、ルメヤは気丈に兄貴肌をみせて、シンの家に走っていった。


 意外にエアリスは人を見てるのかな。


 と、最悪な状況下で、良い方向に向かわせた彼女にタウロは感心した。



 翌日、ギルド前で会ったシンとルメヤは立ち直っていた。


 二人は一つの答えを出していた。


「俺とシンは同じ家に一緒に住む事にしたから、俺が住む予定だった家にタウロが住まないか?」


 と、ルメヤが提案してきた。


「一人で住むには広いから……、そうだ、俺の住む予定だった家、三部屋もあるからエアリスと一緒に住めば?一部屋は共同の荷物置き場にすればいいし」


 さすがにそれはエアリスが断るだろう。

 まだ十四歳とはいえ一人の女の子だ。

 子供とはいえ男と一緒は絶対嫌なはずだ。


「流石にそれはエアリスが嫌がるよ」


「私はいいわよ?私も、『小人の宿屋』から引っ越そうと思ってたから」


 いいんかーい!


 タウロは内心ツッコんだが、あっさりのエアリスに驚いた。


「さすがに荷物が増えてきたから『小人の宿屋』じゃ、狭くなってきたんだもの。それに、シンとルメヤの家から近いんでしょ?そっちの方がチームとしても便利でしょ」


 確かに、エアリスの言う通り、近い方が便利だろう。

 これまた意外にちゃんと考えてる事に驚いたが、これ以上はタウロも反対する理由が無かった。



 引っ越すにあたってタウロはまず、管理者である村長に、家を増築したり弄っていいか相談した。

 答えはOKで、何なら撤去して建て直してもいいらしい。


 それを聞くとすぐさま行動に移った。


 エアリスに家を増築する形で土魔法で壁を作るようにお願いした。

 エアリスは言われるがまま壁を作るが、下も地面をくり抜いて空間を作るように細かくタウロに指示された。


「何作るの?」


「それは後で」


 タウロはそう答えると、家の壁を壊して、エアリスの作った空間に繋げるのだった。

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