第104話 新しい住まい
タウロは手慣れた感じで屋根を作りだした。
『精密』で器用補正があるタウロだ、簡単に屋根を木材で作っていく。
「本当にタウロは器用よね」
エアリスが感心する。
「僕は器用だけは、ステータス高いから」
タウロは苦笑いする。
あっという間に屋根を完成させると床も張り、穴を開けた壁もちゃんとドアを付けて最初からそこにあったかのように綺麗に作った。
「ではここで、これの登場です」
タウロがマジック収納から大きな塊の粘土を取り出した。
「それって粘土?」
エアリスが何に使うかわからない粘土にキョトンとした。
「これを創造魔法で便器の材料にするよ」
「ベンキ?」
「まあ、作るから見てて」
タウロは粘土を手に創造した。
まばゆい光と共に粘土が形を変えて前世で見慣れた陶器の便器が出来た。
この白い陶器の形にエアリスは何かわからなかった。
「ちょっとこれ何?」
「トイレだよ」
「ちょっと、そんなものに創造魔法を使ったの……!?」
呆れるエアリスだったが、設置して使い方を説明されると喜んだ。
こちらの世界ではトイレがない民家も少なくない。
外の林や茂みで穴を掘り、そこに済ませる事が多いのだ。
場所によっては川に垂れ流す者もいる。
なので女性にとって、衛生的なトイレの存在は何気に有り難いものだった。
「でも、排泄物が溜まったらどうするの?この村で回収してくれる人いるのかしら?」
それは、重要な指摘だ。
「普通は溜まったら外から汲み取るんだけど、僕は魔法の『浄化』が使えるんだ。だから使用後に『浄化』を使えば、土に還るからたまに土を掻き出すだけでいいよ」
「え!タウロって、『浄化』が使えるの!?」
「そこに食いつくの?」
タウロは予想とは違うエアリスの反応にツッコんだ。
「私、『神官』のスキル持ちだから驚くに決まってるでしょ!『浄化』は上位魔法よ!私だってまだ使えないんだから!」
「と、とにかく、これで、トイレの問題は解決という事で」
話を戻したいタウロは強引に終わらせると、次に移った。
庭に移動すると、また、エアリスに土魔法で井戸の横に、エル字型の小屋にする為の壁を作って貰った。
タウロがそこにまた、屋根を付けて扉を設置する。
更に、タウロの指示に従いそこに浴槽を作った。
「お風呂は贅沢品よ。それに、水を入れるのもお湯を沸かすのも大変だから、作ってもそんなに利用できるかしら?」
エアリスは現実的な指摘をした。
「そこは任せて」
そう言うと、金貨を手にして空の浴槽に入ると、その側面に創造魔法を使う。
すると側面に金字の魔法陣が現れた。
「これで、魔石をこの横のポケットに入れるだけでお湯が沸かせるよ」
指示されて作った窪みが何なのかわからなかったエアリスはこれを見て納得した。
「じゃあ、水を用意するだけで良いのね!」
エアリスは水魔法でお風呂に水を入れようとした。
「エアリスはそれでもいいんだけど、普通の人には井戸の水を入れるのが常識的だよね?」
「うん?それは、そうね。みんなが魔法を使えるわけじゃないから。でも、井戸の水を汲み上げるのは地味に大変よ?」
「そこで、これ」
タウロはマジック収納から魔力回復ポーションを出すとそれを飲んで魔力を回復した。
そして、マジック収納から今度は材木と鉄やエアリスが見た事のないクロムやニッケルの塊を出す。
タウロはまた創造魔法で一面に輝く光と共に、井戸の上部にそれらを材料にした、何やら複雑そうなものを作ってみせた。
「これは何?」
まぶしさに目を背けていたエアリスが興味津々で、完成した物体を見つめた。
「これは、ステンレス製の手押しポンプだよ」
「何製の手押しポンプ?」
「ステンレス製のポンプね。水を汲み上げる為のもので、手動でも水が汲めるし、魔石を入れたら自動でも水が汲み上げれるように作ったよ」
ごっそり魔力を奪われたのを感じよろめきながら、タウロは魔力回復ポーションで魔力を回復した。
「ちょっと、大丈夫!?顔色が良くないわ。今日は、もういいから休みなさいよ」
エアリスはタウロの顔色が良くない事に気づいた。
「大丈夫。ただの魔力の枯渇だから。ポーションで回復するからすぐ顔色も戻るよ。」
「もう!そんな事に慣れちゃ駄目よ。心配するでしょ……!」
エアリスはタウロに呆れた。
が、その後、回復したタウロがポンプの力を見せると、普通に喜んで手押しポンプを楽しむエアリスであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます