第101話 魔刀の性能

 翌日、タウロは朝からボブの自宅に『魔刀』を持参して訪れた。


 ボブはタウロを歓迎すると家に招き入れた。


「お、それかい?知り合いの鍛冶師に打って貰ったってのは。剣とはまた違う雰囲気のあるものだな」


 タウロから渡された刀を受け取る。


「刀といいます。片刃で、剣と違って切れ味が売りです」


 ボブは頷くとその刀を鞘から抜いてみた。


「……え?」


 ボブがその刀身を見て目が点になった。


「……これ……。刀身に炎を纏ってないか!?」


「はい!ボブさんの魔石のお陰で火の魔力付与がされてる魔刀です♪鞘も専用なので、火耐性が付いてます!」


「……魔刀……?……って、これ……、一級品の代物じゃないのか…!?」


 ボブが慌てふためき、刀を鞘にすぐに納めた。


「一級品かどうかはわからないですが、ボブさんにはダンジョンで弓を譲って貰いましたし、折れた剣の代用なので受け取って下さい」


 タウロは笑顔で答えた。


「……はぁ、タウロ。魔が付くものは、世間では高額で取引される代物なんだぞ。これを打った鍛冶師、名匠の類のはずだ。……本当にこれ貰って良いのか?」


 ボブはタウロの笑顔に呆れながら聞き返した。


「はい、もちろんです。作った本人(自分だけど)も、それで納得してますから」


 またしても、タウロは良い笑顔でボブに答えた。


「……わかった。じゃあ、頂くよ。ありがとう、大事に使わせて貰うからな!」


 ボブはタウロの笑顔に笑顔で答えると、がっしりと握手した。


「……タウロが未成年じゃなければ、一緒に酒でも飲むところなんだがな。わははは!モモー!酒を出してくれないか?」


 奥の部屋からモモが顔を出すと、


「朝から何言ってるのよ。タウロ君、ご飯まだなら食べていく?」


 と、いうと料理の準備を始めた。


「あ、お気遣いなく、それなら僕も用意があるので、食べて下さい」


 タウロはそう言うとマジック収納から料理を出した。


「やっぱり『マジック収納』って、便利よね……。え!?待って!これって、白パンじゃない!」


 モモは感激した。

 白パンは高級な食べ物だからだ。

 普通は庶民には手が出ない食べ物だから、モモには憧れだった。


 タウロが出したのはそれを使ったサンドイッチだった。


「はい、これも、僕からのお礼代わりなのでどうぞ!」


「至れり尽くせりだな!ありがとな」


 ボブは感謝すると豪快にかぶりついた。

 モモも指先で突いて柔らかさに感動しながら、一口食べた。


「美味いなこれ!」


「美味しい!」


 二人の喜ぶ姿に嬉しくて笑顔になるタウロであった。




 後日の事。


「おらー!」


 気合いと共にボブがオークを横薙ぎに断ち斬った。

 切り口から火が噴き出し真っ二つにされたオークは炎に包まれながら絶命する。


 刀のあまりの斬れ味の良さに勢い余り、横の岩に刃が食い込んだ。


 慌ててボブはすぐに抜いたが、刃先が少し欠けていた。


「しまった!大事に使うと約束したのに、早速やっちまった……、はぁ……」


 ボブは『魔刀』の刃先を見てどうしたものかと悩んだのだが、


「これを打った鍛冶師とやらに直して貰うしかないよな……」


 タウロに名を聞いておくんだったと思ったボブだった。


「……仕方ない。タウロに謝って、紹介して貰おう」


 ボブは気を取り直して、村に戻る事にした。




「おーい、タウロ!」


 丁度、タウロ達はクエストから、戻ってきたタイミングで、村の帰り道でボブと遭遇した。


「あ、ボブさん。お疲れ様です」


「すまん、タウロ!切れ味の良さに調子に乗ってオークを退治しまくってたら、勢い余って岩を斬って刃先が欠けてしまったんだ。これを直すのに、作った鍛冶師を紹介してくれないか」


「そうなんですか?ちょっと見ていいですか?」


 タウロはボブから刀を受け取る。


 抜いてみると、その刃先は欠けていない。


「?欠けてませんよ?」


 タウロの言葉に、


「そんなわけ……、あれ?いや、確かに欠けてたんだが……」


 ボブが刃先を見て困惑した。


「オークをどのくらい斬りました?」


「うん?……七体だが?」


「……それでは欠けなかったですか?」


「ああ。骨も断って真っ二つに斬れるくらいだったぞ!斬れ味は凄かったよ」


 ボブは、手応えに頷きながら、答えた。


「もしかしたらこの『魔刀』、『回復再生』が付与されてるかもです。あ、この魔刀の場合は、『修復再生』でしょうか」


「『修復再生』!?」


「刀は切れ味はいいですが、耐久度はそれほど高いとは言えないんです。それだけ斬って刃こぼれが無いのはその為かと。ボブさんが刃こぼれを確認したのに直ってるのも説明がつきます」


 タウロは自分で説明しながら、とんでもないものを作ったかもしれないと思うのだった。

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