第100話 続・創造魔法(弱)

 創造魔法の成功に喜ぶタウロ、驚くエアリスだったが、それも短い時間の間だった。


 魔力をごっそり持っていかれる上に、「無」からは作れず素材が必要であり、規模も大きなものは駄目な事が何度か試して早々にわかったのだ。


 やはり、創造魔法に(弱)が付いてるのが問題なのかもしれない。

 じゃないと自分が思ってた創造魔法と違う。

 何本目かの魔力回復ポーションを飲みながらタウロは考え込んだ。


「うーん……。となると小さくて、材料が手に入り易くて、この世界の技術で作れそうにない「物」が無難なのかな?」


 1人つぶやいた。


「……じゃあ、あれだな」


「あれって?」


 タウロの独り言にエアリスが参加してきた。


「な……、何!?」


 一人の世界に入っていたタウロがエアリスに驚いた。


「ちょっと!私がいる事忘れないでよね?」


 エアリスが頬を膨らませて拗ねた。


「ごめんごめん。お詫びに何か小さい物で欲しいもの作って上げるから」


「じゃあ、その創造魔法とタウロの得意な魔方陣を組み合わせたペンダントを作ってよ」


 エアリスが、タウロが思いつかなかった事を提案してきた。


 確かに、小さいものだと、いくら『精密』の能力がある自分でも微細なものは、道具から作って準備しても作れるものは限られてくる。


 それに材料をいろんな形に変化できる、硬い物の形を変化できるのは前世でも出来ない技術だ。


「よし」


 タウロはマジック収納から、迷宮核ダンジョンコアのひし形状の小さい欠片と、一枚の銀貨と金貨を取り出し、手で覆った。


「創造魔法……!」


 覆った手の平から光が一瞬漏れ出たがすぐに光は消える。


 覆った手を開くとそこには卵型の銀板に金縁、中心にハート形の石が嵌めてあり、そこから翼が生えている様なデザインのペンダントだった。

 さらにエアリスが提案した魔法陣を崩した金模様も入っていて仕事が細かく、紐が通せるように上部には穴が開いていた。


『真眼』で試しに鑑定すると、石に鑑定阻害効果が付いているのか、価値がわからない。

 それはつまり、石には効果があり、それを魔法陣が発揮してるという事になる。


「よし、成功だ!」


 タウロは喜ぶとエアリスにペンダントを渡した。


「チームのデザインなのね!それにこの石の形かわいい♪ありがとう大事にするわね!」


 ほっ


 気に入ってくれたようだ、と安心したタウロはよろけた。

 魔力切れだ、慌ててタウロは魔力回復ポーションを飲んだ。

 先に飲んだ魔力回復ポーションで回復した以上に、ごっそり持っていかれていた様だ。

 一応、ペンダントに鑑定阻害効果がある事を伝え、他にもあるかどうかは自分で確認する様にお願いした。


 エアリスは喜んで頷くと、スキップを踏みながら宿に帰っていった。


 それを見送ったタウロは、次にシンとルメヤの分も作った、石の部分はハートから雫型にした。

 流石に男にハートはないだろうと思ったのだ。


 さらにボブには剣を作る事にした。


 まず鍛冶屋に行って材料を仕入れる。

 鉄鉱石は入手できたが、砂鉄が置いてなかったので、マジック収納を使って砂鉄はチート的に集めた。


 本来、刀は玉鋼から作るが、それはたたら製鉄技術で砂鉄から作り出さなくてはいけない。

 だが、そんな技術はこの世界に無い。

 それを創造魔法で飛び越えてしまえるのだから便利だ。


 柄と鞘用にはダンジョンで入手した宝箱の木材を用意、柄頭に嵌め込む石はボブが記念に持っているゴブリンソーサラーの魔石を使わせて貰う。

 それに迷宮核の欠片をプラスする。


 ボブの家に訪問すると、理由を説明して魔石を借りた。

 一応、自分が知ってる腕のいい鍛冶屋に剣を作って貰うという事にした。


 念の為、魔力回復ポーションを三本飲むと、村はずれで創造魔法を使った。


 一瞬、一面が光に包まれるが、すぐに消えた。


 タウロの手には一振りの刀が握られていた。

 成功に喜ぶ暇も無く、タウロは魔力を根こそぎ持っていかれ、その場に倒れ込んだ。

 意識が薄れそうな中、魔力回復ポーションを強引に口にしながら、タウロは気を失うのだった。



 目が覚めるともう、夕方になっていた。

 タウロの手には完成した刀が握られている。


「……魔力切れで死にかけた……、今回でもう、刀は止めておこう……」


 タウロは反省しながら自分の手に握られた刀を試しに鞘から抜いてみた。

 刀身は微かに火を纏っている。


「おお!これって、『魔刀』ってやつじゃ?」


 薄々わかっていたが、『真眼』では鑑定できなかった。


「とにかくこれで、ボブさんへのプレゼントが完成だ!」


 タウロは『魔刀』の出来に満足するのだった。

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