第95話 Dチームの安否

 タウロ達は魔物を避ける様にボブ達を探してたのだが、


「オークとの遭遇率が結構高くないか?」


 タウロが『真眼』を使った『気配察知』で何度目かのオークを発見したという報告に、シンが疑問を持った。


「確かに、ちょっと高いかも」


 エアリスもシンの疑問に同調した。


「……集落が近くにあるのかな?」


 タウロは予想を口にしたが、それにしてはオークにまとまりが無い気がする。


 もしあるならば、この辺りにまとまった気配を感じてもおかしくない気がするが、それは無かった。


「有り得ないとは思うけど……、ダンジョンがあったりしないわよね?」


 エアリスが、想像を膨らませて言ってみた。


「ダンジョン!?」


 タウロは久しぶりのファンタジー要素に驚いた。


 確か、この世界でダンジョンは珍しく、危険を考えて各国が厳重に管理している。


 上位の一部冒険者が国の依頼で、ダンジョンに入る例はあるが、ほとんどは国の兵士が解明の為に隊を組んで入っているそうだ。

 詳しくは機密扱いであまり知られていない。

 タウロもほぼ聞いた事が無かったので、その可能性は失念していた。


「あ、適当よ?ダンジョンは定期的に魔物が沸いているらしいから、オークが沸いてたりして、と思っただけよ」


 さすがに自分で荒唐無稽な話だと思ったのかエアリスは笑ってごまかした。


「そんなにおかしな話なの?」


 タウロが疑問を口にした。


「それはそうよ。ダンジョンなんて、この国で確認されてるものでも二つしかなくて建国以前から存在したと言われてるから、数百年は経っているわ。もし、ここにあったら、とっくの昔に大騒ぎになっててもおかしくないもの。だから、忘れて」


 なるほど、それなら確かに現実味がない話だ。


 タウロは納得すると別の可能性を考えた。


 そうなると、他所から個々で移動してきたということだろうか?


 近隣が食糧不足という話は聞かないが、どうなのだろう。


 いや、今は考えるよりも先にボブ達の捜索が先だった。


「とにかく今は探そう」


 三人はタウロに頷くと再び、オークから迂回して先に進む事にした。





 ようやくタウロは複数のまとまった気配を感じた。

『真眼』を使うと山肌がむき出しになっている斜面の下に二十体近いオークが固まっているのがわかった。

 数体が、斜面を登ろうとしている様だが、転げ落ちていく。

 何をしているのかわからないのでエアリス達に知らせると、接近して目視で確認する事にした。


 タウロを先頭にオーク達に接近するとタウロの『気配察知』に人のものが引っ掛かった。


 気配は、オーク達が登ろうとしている斜面の上からだった。


 見上げると斜面の途中に窪みがある。

 穴があるようだ、『真眼』を使うと四人のシルエットが映った。

 一人は奥で横になっていて、傍に一人いる。

 残りの二人は出入り口付近で下を伺っていて肉眼でも人影がチラッと見えた。


「多分、一人負傷、残り三人は無事みたいだ。隣のエリアを探しているB-チームを呼んでくるから、三人はオーク達を見張っておいて。決して戻ってくるまでは無理はしないようにね」


 タウロはみんなに念を押すと三人は頷いた。

 タウロは『気配遮断』を使うと真っ直ぐ他のチームがいるであろうエリアに突っ切って行く事にした。


 タウロはある程度進むと、たき火を用意してギルドから渡された赤い袋をそこに放り込んで燃やした。

 見る見るうちに赤い狼煙が上がった。

 オーク達にもバレるがそれ以上に他のチームが気づいてこちらに向かって貰うのが大事と考えたのだ。


 すると比較的近くにいたB-チームの盗賊職の男が短時間で現れた。


「見つけたのか!?」


 茂みから、タウロを確認すると出てきて男は言った。


「はい!あちらの方向の斜面にオーク達に追い詰められてます。四人は無事っぽいですが、負傷者がいる様子です」


「わかった」


 そう短く答えると、男は仲間がいると思われる方向に消え、一時待っているとメンバーを連れて戻ってきた。


「俺達は先行する、君はここで、他のチームが来るまで待機していてくれ。オークの数は?」


「二十体程度です」


 B-チームは、頷くと盗賊職の男を先頭にしてタウロが指さす方向の茂みに消えていった。


 残りの二チームもタウロが待機する元へすぐに現れた。


「B-チームは先行したのか?」


 と確認してきたのでタウロが頷いて「案内します」という返答にCチーム、D-チームはタウロの後にすぐに続いた。

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