第9話 想い

「生命を無駄にするなっ!」



「………………」



≪……誰……!?≫



ドキン

そこには飛龍の姿があった。



「……飛…龍……」


「自分の一方的な想いと供に彼女の生命を奪うなんてあんまりじゃないのか?あいにく花火の音で免れたがタイミングが悪ければお前はアウトだ!」



ゆっくり崩れて行く広司さん。



「これからって時に自ら人生に終止符(ピリオド)打ってどうする?親が哀しむ」


「お前に何が分かるんだ!お前が現れてから奈月は……俺の人生もメチャメチャだ!お前さえ現れなきゃ……」


「辞めてっ!飛龍は悪くないっ!」




私は二人の間に割って入った。




「飛龍を責めるのは辞めてっ!私達は……飛龍と私は……結ばれない運命だから……」



「…………」



「私はっ!……それを理解した上で彼に近付いたのっ!だからっ! 飛龍は……何も悪くないっ!私達は……その事を知った上で過ごしていたの!」



「奈月……」

「……奈月さん…」


「ごめん……飛龍……巻き込んで……ありがとう……助けてくれて……」



私は飛龍を振り返らせ飛龍の背中を軽く押した。


背中から離そうとする片手を飛龍は掴む。



ドキン



「……奈月……」


「……飛龍……行って……私達は……一緒にいたらいけないから……ううん……いられないから……」




ぎゅうっと私の手を飛龍は握りしめた。




「……そうだな……」




私も飛龍の手をぎゅうっと握りしめ返した。



飛龍はゆっくりと手を離ていく。


私達は、お互いの手の温もりを感じ繋いでいた手を離した。





私達は……



もう……



別々の道を



歩んでいるのだから……







ある日の事だった。




「広司さん…私…あなたと正式にお付き合いさせていただきます」


「えっ!? 奈月さん…?本当に良いんですか?無理されなくても……」


「いいえ、大丈夫です」




「………………」





ある日の事。



私は飛龍のマンションに訪れた。



「奈月……?」

「飛龍……今…大丈夫?」

「ああ」


「私……彼と…正式に付き合う事になりました」

「幸せな報告をわざわざ伝えに来なくても良いんんじゃないか?」

「それは……。…でも……最初で最後だから……」



「………………」



「もう会えなくなる前に……最後に……と思って…。飛龍も…彼女と幸せにね……」


「……それはどうだろうな」


「えっ?」


「いや…先の事は分からないからな…話しはそれだけか?」


「うん……それじゃ……」

「ああ」




私は帰り始める。




グイッと引き止め玄関の中に引き摺るように入れると私を背後から抱きしめる。



ドキン


「飛龍……」

「お前は……それで良いのか?」

「……うん…もう…決めた事だから……」

「……そうか……じゃあ…俺が止める理由もないな…幸せになれ…」

「うん…」



抱きしめられた体を離す。



「さようなら」

「ああ」



ドアノブに手を掛ける。



「奈月……?」



私は振り返り飛龍の胸に飛び込んだ。



「奈月どうしたんだ?」

「…飛龍と……同じ人生を歩みたかった…」



そう言うと、ゆっくりと体を崩していきながら



「……どうして…お金持ちに……生まれて……来たんだろう……?」



「…………」



「本当……神様も…意地悪だよね……」


「奈月……」


「……ごめん……別れ辛くなるね……来ない方が良かったみたい……帰るね……」




私は玄関を飛び出した。




「奈月っ!」





~ 月邑 飛龍 side ~



俺は彼女の後をすぐに追った。



グイッと彼女を逃したくない思いで彼女の腕を力強く掴み背後からしっかり抱きしめた。




「時間はあるか?」




彼女は頷いた。




俺は車を走らせた。




最初で最後のデートのつもりで ――――






私達は、海に出掛けた。



「彼女は大丈夫なの?」

「ああ、気にするな。俺がお前を連れ出したいと思っただけだ」

「そっか……一層の事……このまま遠くに連れて逃げて欲しい……」



私は海を眺める。



「えっ?」

「なんて……」



飛龍を見る。



「相変わらず飛んでもない事を言うお嬢様だな……そういうお前こそ大丈夫なのか?」

「えっ?」

「婚約者になる相手は知らないんじゃないか?」

「……それは……」



再び海を眺める。


ポンと頭をする飛龍。


ドキン


飛龍に視線を向ける。



視線がぶつかり、私の胸がドキドキ加速する。




私はまともに見れず視線を反らそうとすると、飛龍の大きい手で止められると、キスをされた。



ドキン



「飛龍……」


「お前が俺以外の女になってしまうのは残念だ」


「飛龍……大袈裟だよ」

「俺のものになる事はないんだな」

「だって……身分が違い過ぎるって言ってたの飛龍だよ」

「そうだったな」



飛龍は再びキスをし何度も何度も角度を変えて私にキスをした。



「……飛龍……」




奈月が高校生とは思えない位、

女の子から、女の人、いや…女性という言い方が、とても相応しいだろうか?


熱っぽく見せる視線が俺の心を惑わす。



「奈月……本当は今すぐにお前の全部(すべて)をもらいたい位だ。お前が他の男に抱かれるなんて……考えたくない……」


「飛龍……?……どう……」



キスで彼女の唇を塞いだ。



「……奈月……」



名前を呼ぶと再びキスをし、首スジから鎖骨、胸元迄、俺は唇を這わす。


彼女の身体が熱を帯びていくのが分かった。



「……飛龍……」



彼女の吐息混じりの声に、俺の方がおかしくなりそうだ。



「………………」



「奈月……」



私に再びキスをする飛龍。



「……ねえ…飛龍……」

「…何だ…?」

「…キスって…いつもするありきたりなキス以外…何かある…?」


「えっ?」



奈月は飛んでもない事を聞いてきた。

そんなキスを俺が今、彼女にしたら俺の方が理性を失いそうだった。


好きな女を目の前にして限界ではあった。



「……ごめん……えっと……」


「あの男にされたのか?」

「……それは……突然過ぎて良く覚えていなくて……恐い方が強くて……初めてされ……」



キスをする飛龍。



「奈月……言っておくが……俺に……求めるな……どれだけ我慢してると思うんだ?」


「えっ?」


「俺も一人の男なんだぞ…!」


「…飛龍…?」



そう言うと、キスをし私の唇に割って入る熱があった。



≪これだ……≫




唇が離れる。



「……あ……」



「………………」



声が洩れてしまった。



「……その反応……お前は……ズル過ぎだ……」





ドサッ


車のシートが倒された。



ドキン


再び同じキスをされた。



「……飛龍……待っ…」


「どっちのキスが上手いんだ?」

「バ……バカ……」



再び同じキスをされた。



≪同じキスでも……こんなに違うもの?≫





俺はこのままいると帰したくなくなる


我慢の限界もあった為


そう思い俺達は帰る事にした


俺は彼女を近くまで送る事にした


本当にサヨナラになるのだろうか?


チャンスはあるのだろうか?





「飛龍……ありがとう。付き合ってくれて」


「お礼を言うのは俺の方だ」


「飛龍……」


「元気で幸せになれ」


「……うん……」



私は飛龍にキスをした。




「奈月……」



グイッと後頭部を寄せられ深いキスをされ、私の唇に割って入る熱があった。




「このキスのやり方は未来の旦那にでも沢山やり方教えてもらうんだな」




そう言うと飛龍は車を走らせ帰っていった。


そして私達は別れた。



















































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