第8話 食事会

ある日、私達は豪華客船のクルージングで食事会に参加し各々の時間を過ごし私が一人デッキの散歩をしていると、デッキに広司さんがいるのを見かけ声を掛けようとした、その時。




「どうしたの?友花(ともか)今週は連絡しないでって言ったじゃないか」



≪…友花…?女の人?≫



「とにかく帰って来たら必ず連絡するから。ああ」



「………………」



「………広司さん?」



驚き振り返る広司さん。



「奈月さん」

「女の人…良かったんですか?」

「えっ!?」

「…すみません…聞くつもりはなかったんですけど…会話しているのを聞こえてしまって…」


「大丈夫ですよ。ご友人ですから」

「…ご友人?…そう…ですか…」

「はい」


「…………」


「奈月さん…?」

「……ごめんなさい……広司さん本当の事話して下さい。お付き合いされている方じゃないんですか?」


「えっ…?」


「ご友人にしては……深い関係……ご友人なら普通にお話が出来るはずでしょう?バレたらまずいような話し方……」


「いつからいらしたんですか?」

「えっ!?」

「俺が話している時、奈月さん近くにいらしたって事なんですよね?」

「はい……今週は連絡しないで欲しいと……言う会話が……」


「……そうですか……」

「…あの…」

「それは残念だなぁ~…」

「えっ?」


「そういう奈月さんこそ、どうなんですか?」「えっ?私ですか?」

「彼が心残りなんでしょう?」

「彼?」

「…月邑 飛龍…」



ドキッ

名前を言われ私の胸が大きく跳ねた。



「君の心には彼がいる。違う?」

「わ、私は…別に」

「じゃあ、俺との事、本気で考えてくれる?だったら話してあげでも良いよ。奈月さん」


「…広司さん」


「せっかくだし本音で話そうよ。いつも両家の両親がいたから、こうやって二人きりで話した事なかったから、これを機会にどう?それとも……」



歩み寄る広司さん。



クイッと顎を掴まれる。


ドキッ


「裸で愛し合いながら本音で語る?俺は、初めて会った時から君に惚れていたんだ。だけど、君の心には俺はいなかった」


「…私は……まだ結婚とか、そういう気持ちはなかったの!自分の想いがないのに付き合える訳がない!」


「じゃあ、これから君との未来、歩めるかな?」


「私は…そのつもりで……」


「……だ…」

「えっ?」


掴まれていた顎から手が離れると、数歩後退りする広司さん。


「嘘だ!嘘だ!嘘だ!」


ガシッ

私の力強く両肩を掴まれた。



ビクッ

今迄、見た事ない彼の豹変ぶりに恐怖を感じた。



「君は…俺との事…考えてくれない…ねえ、奈月……そうでしょう?」

「広司さん…」

「…ねえ…一緒に…死のう……」




ドクン

恐怖に胸の奥が鈍い衝撃で跳ねる。



「えっ…?何言って……冗談…は…辞めて…」

「だって、一緒に死んだら…ずっと一緒だから…」



私は恐怖で何度も何度も首を左右に振る。



「やだ……私は…まだ…死にたくない……」




スッと私から離れた。



ドクン

私の視界に飛んでもない物が入って来た。




「…それ……拳銃……? ……広…司…さん…?……本気……?…そんなの……持って……たの…?」




私が、ポツリ、ポツリと口を開きながら視線を追うと拳銃はゆっくりと私に銃口が向けられた。



ドクン


「持ってるよ。いつもじゃないけど、海原の上で自分の身は自分で守る位じゃなきゃ、こっちが殺られるよ。どんな奴が乗っているか分からないし」



「そんなの…」



スッと拳銃を一旦しまうとジリジリとにじり寄る。




「今は怖い世の中だからね?」



私は恐怖で後退りする。





次の瞬間 ――――



私は何かにつまづきバランスを崩しデッキに転倒した。



「きゃあっ!」



ドサッ

広司さんは私を押えつけ私の上に股がった。



「時間は沢山あるから楽しみは取っておいて、まず先に俺のものになってよ。奈月さん…いや、奈月」


キスをされ抵抗する私の洋服の中に大きい手が侵入する。



「や、やだ……辞め……いやぁっ!」


「奈月、初めてだもんね?大丈夫、優しくするから。将来が決まっているなら良いでしょう?」



更に手が下へ下へと這い、私の太ももに手が伸びていく。



「こ、広司さんっ! 辞めてっ!」

「どうしてそんなに拒むの?アイツがいるから?俺と関係持つの嫌?」

「……彼は……関係ない……から……」

「じゃあ!どうして拒むの?好きじゃないからでしょう?」


「………………」


「結婚したら初夜迎える仲なんだし、今のうちにシュミレーションしておけば何も怖くないよ。奈月」




そう言うと、キスされ、唇を割って入る熱が私の口を探る。



≪……な…何…?これ…やだ……こんなキス……≫



そうこう考えているうちに、再び手が太ももを這い下着の中に滑り込む。



ビクッ



≪……った……≫



唇が離れた。



「確認した所、アイツとはヤってない感じだね?でも……キスはしてるよね?奈月」



そう言うと、指で私の唇をなぞると、唇を押し当てるようにキスをし、再び唇を割って入る熱がある。


唇が離れた。


「奈月……1つになろう……奈月の事を好きで好きで仕方がなくて……」



熱っぽい視線で私を見つめる。



「愛してるから……俺に応えて。意外と身体の相性良いかもしれないよ」


「や、やだ……」

「奈月……俺……我慢出来ないな…」

「…や…辞めて…」


「…なぁ~…づぅ~…きぃ~…」



甘えるような気が狂ったような不気味な声のトーンで私の名前を呼ぶ。


正直怖いのと気持ちが悪いと感じた。



「…………………」



「奈月……やっぱり……俺のものにならないみたいだね……じゃあ…向こうの世界で愛し合えば良いか…」



スッと離れ立ち上がり私もゆっくり起き上がりながら乱れた服を整える中、私に銃口を向けた。



ドクン

私は首を何度も左右に振る。




「お願い…辞めて…広司さんっ!」



カチッ

引き金を引く。



「俺も奈月の後を追ってすぐに逝くね?待ってて」


「や、やだ……広司さんっ!辞めてーっ!」




銃声音と同時に花火があがった。




























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