第4話 限定彼氏 ~目を奪われる夕陽色の髪に~
「あら?奇偶ですわね?」
≪…コイツ…砂伯(さえき)財閥の砂伯 麗華(さえかけ れいか)こと、砂伯 麗華 嬢!?≫
朝、学校に向かおうとマンションを出た私の前に、一台の高級リムジンが停止した。
声をかけてきたのは、一有名な財閥家のお嬢様ならぬ、大お嬢様という言い方が相応しいだろう。
麗華お嬢様という言い方よりも、麗華嬢という呼び方が私にはしっくりくる。
本人を目の前では言えないけど……
「結城財閥の、奈月お嬢様ではありませんか?どうしてお嬢様であるあなたが、こんな質素な場所にいらっしゃるの?まあ、質素な場所とは言っても多少の高級マンションですけど…ふふふ」
上品に笑うお嬢様。
「ちょっと用事でこちらへ」
「用事?この辺りは、あなたのようなお嬢様がいらっしゃるような場所ではございませんわよ?」
「用事なので」
「まあ…あなたが、そうおっしゃるから…そうなのでしょうね」
―――そこへ―――
「奈月」
「あ、飛龍」
「まあっ!ちょっとあなたその髪の色どうされたんですの!? どうして、そんなに髪がお赤いんですの!? どうしたら、そんな色になるのですか?」
「「えっ?」」
と、飛龍と私は同時に言った。
――― そう ―――
実は飛龍の髪は目が奪われるように髪が赤い。
最初、私も気付かなかったけど、船を降りてから髪の色に気付き私はオシャレの1つとして理解していたので気には止めなかった。
しかし、こちらのお嬢様は、本当に世間に関してリアクションが大きいので、こっちが説明に疲れるし大変なのだ。
「ご病気ですの?」
≪び、病気ぃぃっ!?≫
突拍子もない、このお嬢様の発言に驚き目を丸くした。
「病気?どんな病気だ?」
と、飛龍は尋ねた。
「病院に行かれた方が宜しいんじゃなくて?私がとても良い病院を存知あげてますので、ご紹介致しましょうか?」
「結構だ!あいにく病院は嫌いだ!」
「そうおっしゃられても、酷くならないうちに行かれた方が宜しいかと思いますわよ?」
「断る!大体、この髪の色を病気と思うなら、あんたこそ、腕の良い眼科と脳外科に行って診て貰ったらどうなんだ?」
「ぷっ…」
私は飛龍の言葉に吹き出した。
飛龍はクールな感じだけど優しい。
しかし、毒舌な感じで意地悪を言う。
まだ、飛龍の事は良く知らない。
だけど、普段の生活を見て一緒に過ごしていると、大体の予想はつく。
記憶喪失とか関係なく、飛龍は、このままなような気がする。
それとも記憶喪失が関係していて、こう言う話し方なのだろうか?
「まあっ!失礼な方!行きましょう!車を出して!ごきげんようっ!」
リムジンは動き出した。
「失礼なのは、あっちの方だろう?何なんだ!あの女は!お前の友達はおかしな奴ばかりだな」
「あのお嬢様は私よりも上回ると思うよ」
「何!?お前よりも上回るとは相当なお嬢様なんだな。お前が一番と思っていたが……」
「失礼ねっ!私は可愛い方だよ!さっきのお嬢様には飛龍もお手上げになるよ」
「………………」
「…なあ…この髪の色…おかしいか?」
「えっ?」
飛龍は、何故か髪の色を気にした。
「大丈夫だよ。確かに最初は髪の色に目を奪われたけど、私はオシャレとして気には止めなかったし、夕陽の色みたいで…私は凄く大好きだよ」
私は飛龍の髪の毛に触れながら言う。
「そうか?」
「そうだよ。だから気にしなくて良いと思う。凄く似合っているからそのままで…良いよ…」
ドキン
飛龍と視線がぶつかり私の胸が大きく跳ね恥ずかしくて目をそらした。
「どうしたんだ?」
「…ううん…ごめん…」
胸がざわつく。
私は飛龍に学校まで送ってもらう事にした。
「流石に、お金持ちの通う学校だな……女学院高校…レベルの高さが半端ないな…」
「おはようございます。奈月さん」
「おはようございます」
「今日は違うお車でいらしたのですね」
「えっ?ええ…ちょっと理由があって」
「そうなんですね。誰もが囁いていましたよ」
「えっ?」
「あの赤いスポーツカーも運転する方もカッコイイと。そうしたら助手席には奈月さんが乗っているような気がしましたから。すると、助手席から降りて来られて本当に奈月さんだと自分の目で確認して更に驚きましたわ」
「そうなんですね?」
「ええ。どちらの御曹司のご子息ですの?」
「彼は…ご友人なんです」
「ご友人?」
「ええ、ご友人の紹介で会って欲しいと言われて…」
「そうなんですね。あれだけカッコ良くて、お車も良いの乗ってらっしゃるからプレミア付きの御曹司かもしれないですわよ?」
「プレミア付き…は…相当レアな御曹司のですね…」
「それだけ彼が目立っているって事じゃないんですか?」
「…そう…ですね…」
―――― その日の放課後 ――――
校舎から正門の方に向かって高級リムジンや高級車が沢山並んでいる中、私が正門に向かっていると
「カッコイイ♪」
「羨ましい♪」
「良いなぁ~♪」
そういう声が私の耳に入ってくる。
「………………」
私が正門に出ると ――――
「奈月」
「えっ!?飛龍!?」
私は駆け寄る。
「何してんの?」
「迎えに来ただけだがまずかったか?」
恥ずかしい位、私達に視線が集まっているのが分かる。
「いや、それは良いんだけど……飛龍…目立ってるからせめて車…」
グイッと肩を抱き寄せられ、キスされた。
ドキーーッ
突然の不意のキスに心臓が止まる勢いで大きく跳ねた。
ざわつく正門前。
肩を抱き寄せたまま、公衆の前、視線の集中攻撃を浴びなから、私達は移動し飛龍はサッと助手席のドアを紳士に開け私を先に乗せ、飛龍も運転席に乗り込む。
すると、グイッと引き寄せ片頬に触れ、注目されているのを遮るように私の顔を隠すようにもう一度キスをした。
ドキッ
「黙ってろ!話なら後で聞く!」
ポンと頭をすると車を走らせた。
「で?」
「で?って……」
「何か言いたそうにしてるようだが? 奈月お嬢様」
「じゃあ言わせて貰います! 不意のキスは辞めてっ!!ただでさえ朝も飛龍の話が絶えなくて、放課後もあんな人前で……もっと目立つでしょう!?」
「あれだけ視線も集まれば、お前は学校一の有名人だな。人気者になるのは悪くないだろう?」
「有名になるとか、人気者になるとか良いからっ!恥ずかしいっ!」
「しかし、あの学校ならあれ位した方が良いと思うが?」
「えっ?」
「お前はお嬢様だ。俺みたいな男と一緒にいるレベルじゃない!周囲が何を言おうと現実は身分が違い過ぎる!お前がお嬢様である以上、それなりに相応しいエスコートをした方が良いと思っただけだ!」
「飛龍…」
「朝、しばらく様子を 見ていたが、高級リムジンに運転手や執事。高級車に男が彼女と思われる相手をエスコートしているのを見かけた。さっきの行動は朝、普通に見受けられたが?」
「えっ!?…で飛龍…気持ちは分かるし嬉しいけど…飛龍はそのままで良いんだよ」
「…奈月…俺達の出逢いは良いものじゃない。だからこそ、お嬢様であるお前の環境を壊す訳にはいかない。俺の記憶を戻す為だけに自分の人生を余り犠牲にするな!」
「…でも…」
「お前が俺の傍にいる以上、俺はお前の期間限定の彼氏になってやる!」
ドキン
胸が高鳴る。
「今日も一応、彼氏としての設定だったが……」
「朝、飛龍は友人になってるけど…あれだけ堂々とキスされたんじゃ彼氏として過ごすしかないんじゃない?」
「そうか。ただ、誤解されるとかなわないから言っておくが二人だけの時はない!公私混同するな!」
「分かってます!ずっとされたら心臓が持ちません!」
「俺は疲れる!好きでもない女に何故、愛情表現をしないといけないんだ!?」
「今に始まった事じゃないでしょう!?私のファーストキスを船上で奪っておきながら!愛情表現なんておかしい!微塵の欠片も一切ないくせに!」
「………………」
「男の人は簡単に出来るんでしょう!?」
「出来る!…が、しかし…」
「何?」
「大事な女なら簡単に手は出せない」
「えっ!?嘘だ!」
「嘘じゃない!」
「いやいや、絶対に有り得ない!」
「……話にならんな」
「悪かったな!ねえ、ところで何かパズル見付かった?」
「まだだ。簡単に見付からない」
「そっか……」
ポンと頭を軽く押さえた。
ドキン
「そんなに焦らなくても良い。ゆっくりパズルは揃えていけば良いんだ!」
「飛龍…でも…愛する女(ひと)待っているんじゃないの?手紙あったし」
「確かに手紙はあったが、あの文面見れば分かる」
「えっ!?」
「愛する女はいない」
「その手紙の人だけじゃないかもしれないでしょう?」
「えっ?」
「だって…飛龍はカッコイイから、多分モテてたかもしれないし。もし、別れてても、次の恋人いたと思うよ」
「………………」
私達は色々話をしマンションに帰宅した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます