第3話 小さな旅に
好きとか嫌いとか
そんな想いと裏腹に
隠されていた真実が
明らかになった時
二人の距離も
縮まっていた
わずかな確率の中で
男と女が出逢い
日に日に恋に落ち
惹かれていく
二人の心には
もう
抑え切れない想いと
愛情があった
――― そう ―――
二人の間には
恋ではなく
愛が芽生えていた
だけど
その想いに
二人は気付かなかった
結城家と今伊家の食事会含む結納が一人の男の人、月邑 飛龍によって違う人生を歩む事になった
探しに来たみんなから逃げる様に、彼・飛龍の手を掴み身を隠した。
飛龍に
『何も考えてなさそうだ』と、言われてしまった
確かに、一理あるかもしれないと思ったけど ――
「な、何も考えてなさそうって…仕方ないでしょう?だけど自分で選んだ道だから前に進むしかないの!」
「本当、変わったお嬢様だな」
「いけませんか?」
「別に。先が思いやられる」
「………………」
「わ、悪かったですね!」
そして港につき、船から降りた後の事だ。
「お父様、お母様」
「まあ!奈月、何処にいらしたの?ずっと探して……」
「しばらくの間、私の事は放っておいてください」
「えっ?」
「奈月?」
「勝手な言い分でごめんなさい……それに色々と御迷惑掛けてごめんなさい……だけど……このままで良いのかな?って時々思うんです」
「奈月……」
「しかしだな……」
「自分の人生だし、親の言いなりばかりだし…16だし、まだ子供だけど私だって一人の人間だし、やりたい事あるの!」
「………………」
「いつになるか分からないけど、必ず戻って来ます。だからそれまで私を探さずに遠くで影で見守っていて下さい!お願いします」
私は頭を下げた。
「…奈月…」
「…そう…分かりました。いつでも気軽に戻ってきなさい」
「おいっ!何言ってるんだ!奈月はまだ未成年なんだぞ!」
「娘を信じていますから」
「お母様」
「親に縛られず、羽を延ばすのも良い機会かもしれません」
「奈月…お前行く宛はあるのか?一体、何を考えているんだ?一人で何が……」
「一人ではありませんっ!」
「何っ!?どういう事だ?まさか、男なのか?連れて来なさい!何処のどいつだ?」
「…彼は…記憶喪失なの!彼には愛する人がいるかもしれない…それでも良いから…どんな結果になろうと覚悟しています。私はただ、彼の記憶を取り戻すだけだから」
「あなたの気持ちは分かりました。いつでも迎えます。気軽に帰っていらっしやい」
「はい」
「さあ、行きますよ」
お母様はお父様を連れて行く。
「おいっ!奈月っ!俺は許してないぞ!」
「………………」
「奈月っ!俺は許さないからな!だけど、これだけは言わせろ!体には気をつけるんだ!良いなっ!」
「…お父様…はいっ!」
私達は別れた。
「旦那様、奥様、お帰りなさいませ。お荷物を」
「ええ、お願いするわ」
「ところで、お嬢様の姿が見えないのですが……」
「あの子は小さな旅に出たのよ」
「はい?小さな……旅に…ですか?」
「ええ、自分の人生を探しにね」
「えっ?しかし…まだ16歳ですし、未成年ですよ。そんな御一人では……」
「あの子は一人じゃないわ」
「一人では……ない?」
「ええ。さあ、帰りますよ」
「はい、かしこまりました」
「奈月、本当に良かったのか?」
「いいの!私が選択した道だから進しかないの!今更、後戻りしたら私は後悔するから!」
「俺の真実知って後悔するかもしれないというのにか?」
「…飛龍…意地悪な事言うね?でも、覚悟してるし」
「先が見えない人生なんだ。正直、俺は怖いけどな」
「先が見えないから面白いんじゃないの?」
「記憶喪失の俺だぞ!何が待ち受けてるかも分からないんだからな。それに変なオマケついてくるし」
「変なオマケって……何それ!私は良いオマケだと思うよ?」
「良いオマケな訳ないだろう!?お前は世間知らずのお嬢様だ!」
「私は世間の事は並大抵に知ってます!それより、飛龍、車の免許持ってたんだ。盗んだとかじゃないよね?」
「人聞きの悪い失礼なお嬢様だな。持ってるから運転しているんだろう?車も免許も俺の物だ」
「そうなんだ!それで、今、何処に向かっているの?」
「住所を頼りに車を走らせている」
「記憶喪失の割りには地理の理解力はあるんだ!」
「お前…本当に失礼なお嬢様だな!?俺を馬鹿にしてるのか?そういうお前はお嬢様だ!大体、何が出来るというんだ?」
「例えお嬢様でも全部が全部じゃないし多少の知識もあります! 」
「知識だと!?世間の事、その辺の知識で大丈夫だと思ってないか?言っておくがやり通せる訳がない!馬鹿じゃないのか?お前は!」
ムカッ
飛龍の一言に腹が立つ。
「性格悪い!16歳の子供(ガキ)が何の役に立つんだ?って思ってるんでしょ?」
「性格悪いだと?お前よりはマシだ!我が儘が何でも通せると思うな!頼んでもいないのに、お前は俺の記憶を戻す為だけについてきた。何をするにしても自分でやらなければいけない事、頭に入れておけ!俺にばかり頼るな!お手伝いさんとかいないんだからな!」
「そんな事、分かってます!」
「いいや!分かってない!」
「分かってます!」
「分かってない!」
私達は言い合う中、飛龍は車を走らせていた。
そして、とあるマンションに辿り着き飛龍はマンションの建物を見上げる。
「飛龍?」
「行くぞ!」
「うん…」
マンションの建物の中に入って行く飛龍。
私も後を追う様についていく。
そして、とあるドアの前に足を止めた。
鍵を開け部屋の中に入って行く飛龍。
そんな中、玄関に落ちている封筒が目につき拾う私。
「封筒…?…手紙…?」
消印のない封筒。
『峰山 あずさ』
そう記された名前。
「奈月?何をしているんだ?」
玄関に戻って来る飛龍。
手紙を差し出す私。
「手紙?」
「下に落ちていたから。消印がない所からみると手渡しで、ドアにでも挟んであったのかもしれない」
「………………」
女性の名前で記された封筒
彼女なのか?
元カノなのか?
実は婚約者?
私の頭の中をグルグルと
駆け巡った
そして
ひとつのパズルが揃って
繋がっていくことが
逆に私の心を
不安が過っていた
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