「あなた」


「おう。どうした?」


「夢を見たわ。あの子の夢を」


「お。もしかして、女の子を好きになるっていう」


「そう。それよ。あの子。振られるわ。こころがぼろぼろになっちゃう」


「そうか。それは困ったなあ」


「あなた。あの子になんてアドバイスしたの?」


「こころがこわれるまでアタックしてみたらって」


「うわあ」


「ごめんよ」


「他には?」


「今の時代について、少しだけ。彼女にはむずかしかったみたいだ」


「時代について?」


「君の予知夢や、僕の異常知能みたいに。そういう、受け入れられない側の話をね」


「あの子は、受け入れられる側でよかったわ。同性愛なら、なんとかなる」


「そうだね」


「ねえ」


「うん」


「二人目」


「うん?」


「あの子が普通ってわかったら、なんか安心しちゃった。ほら。わたしたち。その。普通じゃないから。子供も普通じゃなかったらどうしようって、思ってて」


「そっか」


「安心したから。二人目」


 抱きついてくる。


「あら。ひげ剃られてるわ。残念」


「毎日鏡のまえでしっかり剃ってるからね」


「伸ばしてよ。じょりじょりしたいわ。あなたのひげの刺さる感じが好きなのに」


「なんだ。君がいやだって言うから、毎日徹底的に剃ってたのに」


「趣向は変わるのよ。夢の内容と同じ」

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