3 遺書

 そんな将吾との朝食を終えた後の皿洗いなどはメリーの担当だ。

 皿洗いだけでなく、炊事以外は大体メリーがやっている。

 居候として、やれる事はやれるだけやらないといけないと思うから。


「じゃあ行ってくるよ」


「うん、行ってらっしゃい!」


 そして朝食を終えた後、いつものように将吾が学校に行くのを見送る。

 本当は出来る事なら少しでも長い時間を共有出来たらと思うけれど、それが自分の我儘だという事は分かっているから、胸の中へと収めておく。

 自分は今でも十分幸せにして貰っていて、だからそれ以上を求めて将吾の人生の邪魔になってはいけない。

 長く見積もっても半年もせずに居なくなる自分の為に、その先の人生を良くない方向に向かわせてしまうような事はしてはいけないし、したくない。

 だからこれで良い。


「……さて」


 将吾を見送った後、やるべき事が二つある。

 それをアルバイトの前に終らせないといけない。

 まずは家の中の掃除だ。

 家の隅々までピカピカに、となる程のスキルは持ち合わせてはいないけれど、自分を幸せにしてくれる将吾が少しでも快適に生活できるように頑張れるだけ頑張ってる。


 そして掃除にある程度の時間を費やした所で、もう一つのやるべき事を終わらせる。

 用意するのはペンと便箋。

 そこに書き記すのは遺書のような物だ。

 予定では今日も自分を焼き殺した犯人を捜すつもりで。

 もしそこで犯人を見付けて復讐を果たす事ができれば、きっと自分はこの家に戻ってこない。

 そうなればお礼も言えないし、お別れを言う事も出来ない。

 だからこうして毎日筆を執る。

 そこに書き記したい言葉は毎日変わるから。

 毎日書いて、自分の部屋に置いて置き、その日も家に帰ってきたら処分する。

 その繰り返し。


「こんな感じかな。変な事は……書いて無いよね。うん、大丈夫」


 やがてそれが書き終わると自室に持っていき、その代わりに鞄などの手荷物を持ってくる。

 家の中でやる事はひとまず終わった。


「よし、今日も一日頑張るぞ!」


 これからはアルバイトの時間である。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る