釣られクマー
「はあああああ!?下投げ凶切り上Bぶっぱクラウド!?貴方そんな脳死戦法して楽しいんですの?恥を知れですわあああ!?」
「出た!出た!出ましたわ!はーーーつまんねですわ!いるいるネスのPKファイアーと空前だけ擦りまくって崖際後ろ投げでしかフィニッシュできない情弱お嬢様!サンダー復帰たまにミスってるの見てるとこっちまで恥ずかしくなってきますわ!」
「おい!スト有利になったらクッパの横Bで道連れするのクソくだらないからやめろですの!!!」
なんだここ…
「ここは生徒用の部活階ですわ。茶道と華道以外の部活の申請があった時の活動場所として用意されていたのですが、誰も他の活動を思いつかなかったので永らく放置されていましたの。そこをを無断で改良致しました、わたくし達お金ならあるので」
ここではお話辛いので、と誘われるままついていくとこれである。何言ってんだコイツ。
この学校にはマトモな奴はいないのだろうと察した。にしても広すぎる、ここが地下?幕張の一会場位の広さにいくつものモニター、高そう。スイッチもしっかりと置かれGCコン接続タップまで全てに付いている、純正品は少ないんだから買い占めるなよ…
大人数でできるにもかかわらずどこも1on1だ、プロか?正面奥には映画館のスクリーンのような物で対戦を…ゲッ!あれスクリーンじゃねえ!多分4k240㎐対応だ!あの大きさで!?多分よく知らず一番いいのを頼むとか言ったんだろう、持ち腐れすぎる対応してないだろスマブラなんかじゃあ。一体いくらするんだ…
薄暗い照明にネオンやレーザー、スチームがガンガンに焚かれクラブのようになっている。そこかしこから聞こえるゲーム音やお嬢様のはしたない罵声で地獄のような空間が生まれていた、湿気がすごいし。
さながら子作りのためにアマゾネスにさらわれた旅行客の気分を味わっているとGCコンを差し出される、何が言いたいんだ。
「極秘に作った倶楽部で情報を共有していたのですが流石に限界を感じてきましたの。連日南眠様との対戦、お見事でしたわ。ぜひここで貴方も楽しみつつ、わたくし達にアドバイスをお授けください」
ちょっとずつ広めていくつもりがまさかここまでガラパゴス化していたとは。お嬢様恐るべし。しかし胸は高鳴っていた、こういう地下で秘密のゲームクラブとか男のロマンの塊だ。それに周りを見るが確かに強いがミナミほどじゃあない、無双できるだろう。尊敬の眼差しを受け気持ちよくなるため、もといお嬢様の腕前向上の為、差し出されたコントローラーをしっかりと受け取った。
「お任せを」
ひとしきり楽しみ戻った後、一時間でミナミにばれた。どこに行ったんですか探しましたよから始まりほかの女の匂いがするとかいうヤンデレみたいなことを言い出した。少し考えたが別に話してもいいのでは?話した。信じないミナミを連れさっきの地獄へとんぼ返り、ちなみに普通に校内のエレベーターから行ける。ガバガバじゃんと思ったが発足されていない部活階に行く物好きはいないだろうとのこと、なるへそ。
ちーん、とたどりつくお手軽地獄。絶句するミナミ、あーおもしれー。相変わらず飛び交う放送禁止用語に巻き込まれ硬直している。
「なんですかここ…」
「お嬢様が財力でゴリ押しした秘密のスマブラ俱楽部だとさ、これからお前もここにきてやろうな」
「秘密でって…そんな、ここのお嬢様がそんなこと「アーッ!お前お前お前!ガノンの横Bで道連れとか頭沸いてんのかですわ!」
「対策できないほうが悪いのではなくてwww?ドンキーの掴みで崖離ししようとしたくせに見苦しいですわよw」
「ぽんぽん痛いですわwwwぽんぽん痛いですわwwwそれで硬直暴れのつもりでしてwww?白鳥が踊っているようにしか見えませんでしたわwwwww」
取っ組み合いのリアルファイトにもつれ込んだ二人のお嬢様が足元に転がってくるのを見て頭を押さえるミナミ、あきらめろ。お前はもう同じ深淵の扉を開けてしまったんだ。
「とりあえず今日は帰りましょう、頭を整理したいです」
「おん、あっそうだ。今日の晩御飯はグラタンがいいなあ」
「下にご飯入れていいですか?」
昭和か。
「私は一向にかまわん!」
「なんですかそれ」
「最近異世界転生するらしい中国拳法の達人」
それからまた数日、最初は拒んでいたミナミもすっかり慣れ(エロいな)迫真お嬢様スマブラ部に溶け込んでいた。モブお嬢様のように叫ばないが叫んでるのはなかなかに見たくないから安心する。腕前ナンバー2の名声は中々でお姉さまと呼ばれながらあっちの台で、こっちの台でアドバイスしながらお嬢様を屠っている。悪い気はしないらしくちょっとツヤツヤしていた。俺の方はと言うと…
「先ず、恐らくダメージを稼ぎたくて弱を入れ込んだだけだと思うんだけど、ガードが見えて確反を警戒して一旦ステップして、程よく隙ができたらまた接近して掴む。
こうすれば両方に均等にダメージが通るんだけど?」
「なるほど…考えた事もなかったですわ。でしたら、まず貴方が一度やって見せて頂けます?皆様はそれについてみて貰って方法とやり方を盗ませてもらったらいかがでしょう?」
「そうですわねー、悪いですけど見せてもらいますわ」
「ああ、いいよ?君の台まで案内してくれる?」
「さすがはくろうちゃん様!」
「素敵ですわぁ…」
「わたくしもぜひご指導いただきたいわ…」
「やれやれ、まったく。俺は平和に暮らしたいだけなんだけどな」
ゲームを教えているだけで王子様扱いされる環境を楽しんでいた、はっはっは!気持ちいいいいいいい!!!
いつものようにお嬢様相手にスマブラをしていたある日のこと、なんだか見覚えあるようなないような金髪ツインテのお嬢様に声をかけられた。
「やあ、はじめまして。突然だが私とも戦ってくれないかな?」
その変わったなんとも似合ってないデータキャラっぽい言葉遣いに既視感を覚えたが気にせず、「ああいいぞ」と答える。おっ、GCコンか…しかも復刻版じゃねえ昔からのやつ使い回してんのかよ、物持ちがいいことで。やだなぁ強そう、キャラは…テリーかよ。ちぐはぐな。嫌な予感がしてきたぞ。
だが負けられない負けるはずがない。今の地位を守るため、興味を持って寄ってきたお嬢様の前で負ける訳にはいかないのだ。イメージするのは常に最強の自分、いざ。
「俺の勝利の人生がああああああアアア!!!」
「元からないですよそんな物、ほら周りが引いてますよ恥ずかしいから早く立ってください」
ミナミが駆け寄り俺を慰め(?)る、くそうくそう。すました顔で見下ろしてきやがって、何なんだこいつは。
「すっかり失望したよ君には、あの時逃げたまま続けてないものと思ってたが。まさかこんなところで女の子に囲まれて教師役なんてしてるなんてね」
ぐっ、こいつ、俺の何を知ってやがる。
「試合中の君は手を抜いている様だったから私が相手をしてみたが…がっかりだ」
「オイコラさっきから好き勝手言いやがってどこの誰だよお嬢様ァ、アアン?」
「その小物感丸出しの口調似合ってないですよ」
うっせ。
「まだ気づいてないのか、まあ髪も伸ばしたし」
というと前髪をかきあげ近づいてきた、しゃがみ込む、あっパンツ見えそう。
「久しぶりだね、クロ?」
そこには、
「トキ…」
そこには懐かしき親友の顔があった。
水色だった。
それは中学校に入学したばかりのこと、エロゲでよくあるが現実ではほぼない学校の女子のパンツの色を知り尽くしている親友ポジになって鈍感系主人公のおこぼれを貰おうと考えていた平和な日のことである。
今年の一年には外国の金髪美少女が来たらしいぞとの噂を聞きつけこれはぜひ俺が不審者から守らねばとその子のいるクラスへ向かったのだった。
そこには噂通りの金髪美少女…?髪が短い、スカート履いてるし女だよな?胸もそれなりに?あるし。あるよな?がいた。
だがしかしクラスメイトは遠巻きにその子を見て、いや、見てすらいないのもいる。まるで避けているようだ。
違和感を覚えつつも鋼の精神で話しかける。かわいい子と話せるなら気にしなーいである。
「よっ、ヒマか?俺の名前は恋恋慕蟲毒苦郎!今日放課後一緒に遊ぼうぜ、そのまま夜まで過ごしてベットの上でも遊んじゃったりしてな!」
「帰りたまえ」
つめたい。
「そんなこと言わずにさ、なあなんでお前避けられてんの?」
「君は初対面の人に向かって容赦がないな、おまけに恐らく馬鹿だ。配慮というものがまるでない」
「今ので大体わかったわ、てかなんだよその口調微妙に安定してないし似合ってないぞ」
「やかましい、小さな頃の口癖のようなものだ。そう、あれは…」
「興味ないね。」
回想中に回想を入れようとするな。
「語らせろアホ!人の話は最後まで聞けってエロブラクラで習わなかったのか!?このクソインポ!」
「早いなあ崩れるのって誰がインポじゃ!今朝も元気に酷使したわ!」
「は?そのきのこの里しまえよ」
「戦争だぞコノヤロウ!これだからたけのこ派は何事にも流されるマジョリティの象徴と言われるんだ恥を知れ!スマブラかテトリスで決闘じゃ選べい!」
「ほう、君はスマブラができるのか。よしそれでいこう」
「じゃあ放課後俺の家でな、下駄箱前で待ってるから逃げるなよ?」
「こちらのセリフだ、小便は済ませたか?神様にお祈りは?部屋の隅でガタガタ震えて命乞いする心の準備はOK?」
「誰が吸血鬼だ!」
「ああそうだ言い忘れた、私の名前は芽波良時希めばら とき。今後ともどうぞよろしく?」
この時俺はスマブラ東日本大会の最少年ランカーだった、軽く捻ってやろうと思っていたが相手も同じ上位者とは思いもしなかったのさ。
しばらく経つといつの間にかいつも一緒にいる仲になっていた。スマブラの腕を磨きあったり学校で『男の娘研究会』なる実態はぬるいオタ部をゴリ押しで作りそこでだべったりテトリスしたりスマブラをして怠惰に生きていた。
卒業が近づいて来た頃、二人の腕前は日本代表レベルにまでなり次の大会で勝てば世界へ羽ばたきスポンサーもつくという状況になっていた。
「次の大会でどちらの方が強いかはっきり決めよう、そして終わったらクロに言いたいことがある。聞いてくれるかい?」
俺は頷いた。
結果はまあ俺が複雑な理由により欠席しトキが不戦勝。あいつは卒業と同時に海外へ、世界へと羽ばたきその先は知らない。ずっと休んでいた俺はトキに別れすら言えなかったのだった。
「つまり逃げたんですね」
「逃げてねーし!カキフライ前日に食べたら当たっちゃって寝込んだらなんか周りが勝手に察してくれただけだし!」
「そ、そんなくだらない理由だったのか…」
アッ、後ろにいるのを忘れていた。たちまち怒りに溢れた顔になるトキ。
「こんな下らない施設今すぐ教師に密告して撤去させよう、ここは学園の民度を下げるのみでなにも生まない」
ごもっともだ。
「君もこれでなにも出来ず退学、援助も打ち切られジ・エンドだ、ハイサヨナラ」
こいつなぜそれを。
「ま、待ってくれ!お慈悲を!どうかお慈悲を!」
足に縋り付き懇願する、めっちゃいい足しとるなこいつ。
「うるさい!そんな下らない理由であの日休んで顔も合わせないなどクロにはもう何も期待しない!野垂死んで犬のエサにでもなってしまえ!ぱーかばーか!」
「頼むよ!そ、そうだ。来週ここで大会をやるんだ、(大嘘)その日こそ本気でやるからお願い致しますお嬢様!」
「いいよ」
いいんだ。
「いいんだ…」
「いいんですのね…」
「じゃあ来週楽しみにしてるよ、クロ」
さっさとエレベーターに乗って行ってしまった、ひとまず助かった…のか?
「で、どうするんですか?」
「練習するさ、ミナミの相手は暫くできんわすまんな」
「今日こそいい戦法を試そうとしたんですがまあいいです。頑張ってくださいね?」
おお、珍しいミナミのオリジナル笑顔だ、濡れた。
「うん、頑張る。なあ今日は水炊きが食べたい」
「いいですよ、〆はうどんとお米どちらがいいですか?」
「うどん」
「分かりました、じゃあ帰りましょう?」
「うん」
「なんか素直で気持ち悪いですよ、……帰ったら耳かきしてあげましょうか?」
「まっマジで!?ミナミからそんな事聞けるなんて生きててよかったあ!是非お願いします!!あわよくば背中なんかも流してくれたり
「戻りましたね、じゃあ皆さんまた明日」
「えっええ、また明日」
周りのお嬢様が引いている、釣られクマー。
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