3.一年後
戦争が終わって早一年が経とうとしていた。
都市部では復興が始まっている所もあるらしいが、ド田舎の村にはいつも通りの鄙びた景色しかない。
――いや、少し変わったこともあったか。
この一年の間、終戦時は生死不明だった人々が、ぽつぽつとではあるが帰還を果たしていた。
大陸奥地から徒歩で逃げ延びて来た人。半島で何か月も拘留されて、ようやく解放された人。
南方から生還した人々は、すっかり人相が変わっていてまるで別人のようだった。よほど辛い思いをしたのだろう。
もしかすると、夫と同じか近い部隊に配属されていた人もいるかもしれない。
けれども、わざわざ話を聞きに行きたいとは思わなかった。夫は戦死したのだ。仮に生前の話を聞けたからと言って、その結果が変わる訳ではない。
無駄な事は、したくない。
だから、必要が無ければ誰とも会わず、日々、畑仕事に精を出す。
生きるので精いっぱいなんだ。余計な事は何もしたくない……。
私はこれからも、一人で生きていかなければならないんだから。
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