2.戦後
戦争が終わった――が、私の生活に大きな変化はない。
元々、空襲とも無縁なド田舎暮らしである。精々が、都会から疎開して来ていた人々が、ぽつぽつと集落から姿を消し始めたくらいだろうか?
不安だった金銭面も、なんやかんやで国から少しのお金が出るという事で、当面の生活は何とかなりそうだった。
とはいえ、余裕がある訳でもない。
実家に帰ろうかとも思ったが、あちらはあちらで余裕がないらしく、戻ってくるなの一点張りだ。何やら「国債が紙切れになった」と、上を下への大騒ぎらしい。
夫の実家はと言えば、最初の頃は「再婚して跡取りを産んでくれないか」等と優しげにすり寄って来ていたが、よそに嫁いでいた夫の妹に子供が出来ると、そちらを養子にする算段を整え、私はあっという間にお払い箱になった。
往年の日本海軍もかくやと言わんばかりの電撃作戦だ。きっと数年後には、彼らも敗北している事だろう――等と、内心で呪いの言葉を送りつつも、顔には神妙な表情を張り付けて大人しく身を引いた。
こうして私は一人に――いや、自由になった。
狭いあばら家に独り。お金は何とか生活していける最低限。
あとは、庭で野菜でも育てて、細々と生きていくしかないだろう。こんなド田舎ではろくな仕事もないし、再婚する気もさらさらない。
精々、細く長く生きてやるさ――。
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