第5話
「なんで、先輩がここに?声、かけてくれれば良かったじゃないですか。」
あくまでも平常心を装い声をかける。
「…香菜ちゃん、もう気づいてるんでしょ。」
どうしよう、走って逃げる?でも、どこかでまだ先輩を信じている私にはそれが出来なかった。
少しずつ先輩が近づいてくる。
「香菜ちゃんが感じていた視線は最初から、僕だったよ。」
「そんな、そんなわけ…だったら今日の人は…」
「あぁ、あの人も本当にストーカー。同じストーカーだからこそ、すぐにわかったんだ。だからあえてあの提案をした。それでこいつを差し出そうって。さすがに香菜ちゃんも2人もストーカーがいるなんて思わないでしょ?…今だって、ばれないと思ってたのに。ちょっとやらかしちゃったね。まさか連絡がくるなんて。」
「…だから、私の家がわかってたんですか?」
「もちろん。入学式の次の日から欠かさなかったから家も覚えちゃった。」
「なんで、入学式で声をかけたんですか、なんで、私のストーカーに、なったんですか、私は先輩のことが…」
自分でも声が震えているのがわかる。好きな先輩が、ストーカーだなんて。信じたくなかった。
「入学式、君に一目惚れしたから。だからわざと、カバンについているストラップを取って、落し物と言って声をかけた。仲良くなりたかった。そうしたらそれから、ストーカーの相談を、ストーカーの僕にしてくれたでしょ?だから偶然居たもう1人のストーカーをだしにして、香菜ちゃんに前より近づいた。」
迷子になった時、先輩がいたのも、視線を感じて万理華に話した時、先生に声をかけられたのも。
偶然じゃなくてストーカーだったから…
なんて人を好きになってしまったんだろう。私は走って逃げ出そうとする。
「駄目だよ、逃げるなんて。僕に一目惚れさせた時点で君の負けなんだから。そう、悪いのは僕じゃない。僕に一目惚れさせた、君なんだ。」
その時私は直感した。伊吹先輩…この人から逃げることは不可能だと。
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