第6話 クリーム色の封筒
充実した時間というのは本当に過ぎ去るのが早くて、最終回までの本数はもうすぐ片手に収まりそうになっていた。
「おはようございます。今日もよろしくお願いします」
いつもの打ち合わせの会議室に入ると、いつものように高崎さんがパソコンに向き合っていた。
「おはよう。あ、そうだこれ、最終回用?」
パソコンから顔を上げた高崎さんは、右手でクリーム色の封筒を掲げて見せた。
「いや、僕のじゃないですね」
最終回のことを忘れてはいなかったが、まだ何も手を付けられていなかった。
「え?だってユウの名前書いてあるよ」
高崎さんは立ち上がって封筒を差し出してきた。
宛名の書いていない、きれいな封筒。僕はそれを受け取って裏返す。
そこに書いてある文字を見て、僕はドキリとした。
「高崎さん、これ……どこで?」
封筒には確かに僕の字で、僕の名前が書いてあった。
「他のお便りに混ざってたよ」
封筒は小さなシールで閉じられていて、思ったよりもずっと簡単に開いた。まるで何回も開けたあとみたいだった。
僕は中を見てさらに驚く。
封筒には、何も入っていなかった。
ああそうか、これは。
僕はこの手紙を知っている。
それは、ここに存在しないはずの手紙だった。
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