第4話 真夜中の5分

『こんばんは。優介です。この番組では、皆様からお預かりした“大切な誰か”に宛てたお手紙を、電波に乗せてお届けしています。

 さっそく今夜の一通目をお届けしましょう。ラジオネーム、「出張帰りのパパ」さんからです。


 優介君こんばんは。深夜のサービスエリアでこのラジオに出会いました。

 素敵な番組に感動したので、短いですが僕にも一筆書かせてください。

 ママへ。家にいないことばかりでごめんね。ホテルのご飯も美味しくて、布団やタオルもふかふかだけれど、今は、我が家のちょっと甘いカレーや柔軟剤の匂いが恋しいです。いつもありがとう。


 ということで、「出張帰りのパパ」さんありがとうございます。

 今この手紙が届くころにはママさんに会えていますかね。

 普段当たり前に思っている我が家の習慣って、離れてみると急に寂しくなるものですよね。

 優しくて温かいお手紙、ありがとうございました』


 あの新しい番組に出会った日から、毎週聴くのが習慣になっていた。

 真夜中のほんの数分だけれど、いつも温かく、人をつなぐ気持ちがあふれたこの番組が好きだ。


『今夜もお別れのお時間となってしまいました。お手紙、受け取っていただけましたでしょうか。この番組では引き続き、皆様の“大切な誰か”に宛てたお手紙を募集しています』


 手紙を書きたい大切な誰か。

 今日も穏やかな海の水面を眺めながら、今はもう会えない人を思い浮かべる。

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