6話 女子友と呼べる友人達
カイルベルトの突然の訪問から1週間が経つ頃に、元ヒロイン・アレンシアからの返答が再び届いていた。彼女はフェリシアンヌとの約束を守り、早めの連絡を入れたのである。アレンシアの仕事の都合上、今週末は無理でも来週の土曜日には、休みが取れたので訪問したい、と連絡が来たのである。
この国の1週間も、前世と全く同じ仕組みである。土日が基本的にお休み扱いなのも、同じだ。但し、祝日は全く異なる為に5月の連休はなく、夏季休暇などの長期休暇期間も違っていた。
代わりにこの国ではお祭り事が多く、何かと休みも多い。貴族は特にお祝いせず、家族とのんびり過ごすことが多く、逆に庶民は何でもお祭りにして、お酒を飲んで騒ぐのだ。元々は、家族と過ごす為の口実だった休日も、今は庶民のお祭り扱いであった。
王立学園も週末はお休みである為、アレンシアを受け入れる準備をロイドに相談する、フェリシアンヌ。ハミルトン侯爵夫妻には、今回の件は内密にしていたのだ。ヒロインの目的がまだハッキリ分かっていない為、両親が過敏に反応する可能性もあるからだ。高位貴族になる程、裏から手を回したりするらしいので、フェリシアンヌとしては前世の事情もあり、両親には確かめてから報告をすることにして。
カイルベルトには、直ぐに手紙を出した。忙しくてしている彼に、これ以上の迷惑を掛けたくないと思うフェリシアンヌだが、彼と約束をしている以上、知らせない訳にもいかず…。少しでも早く連絡した方が、彼も都合がつけ
「その日は1日、予定を空けて置くよ。フェリに何があってもいいように、此方も警備は整えて置くから、フェリは何も心配しなくていい。」
手短にそれだけ書かれていた。こういうところも、似ているなあ。そうフェリシアンヌは思う。前世の彼も色々と、準備万端で備えるタイプであった。似ているのは当然で、前世の彼=カイルバルトである。まさか本人だとは、全く気付いていない彼女だけれど…。前世の彼も自分同様に、同じ異世界に生まれ変わったとは、夢にも思っていなかった。何故か、知り合いが転生しているとさえ、全く思っていないものだから、夫も居ないと思い込んでいるだけで。
ヒロインと会う約束の日まで、いつも通り学園に通うフェリシアンヌは、現在王立学園の2年生である。彼女は、15歳になったばかりだった。前世の日本で例えれば、中学3年生ということになる。
王立学園は14歳になる年から入学し、18歳が最高学年となる為、5年間通うことになっている。前世風に言うならば、中学2年生から高校3年生までの5年間ということである。因みに…乙女ゲームでの設定も、全く同様であった。この辺りからこの世界を見れば、乙女ゲームの世界が現実の世界になった…と、アレンシアが信じ込んでしまったとしても、ある意味では仕方がないのかもしれない。ヒロインと同じ名前で、同じ環境に生まれて来たら、尚更かもしれない。
その乙女ゲームは終了した訳だが、乙女ゲームと似たこの現実は、未だ続いていることになる。ヒロインだったアレンシアと、攻略対象の1人であったハイリッシュは、その証拠に王立学園を退学となった後も、貴族の身分を廃爵され庶民となり、新たな人生をやり直している。そして同じく、フェリシアンヌも無事に2年生に進級し、仲良しの女子友と楽しく過ごしていた。
フェリシアンヌには、特に仲の良い女子友がいる。先ず、同い年のクリスティア。彼女はモニータ伯爵家の長女だが、モニータ家には男子の跡継ぎがいない為、婿を迎えて家を継ぐことになる。彼女の婚約者は、乙女ゲームの攻略対象の1人であった、伯爵令息ハウエリートである。彼は一時期、アレンシアに攻略され掛かっていて、その後仲直りをした。2人は元々幼馴染であったことで、婚約者として…恋愛対象として、彼は彼女のことを見ていなかった。あまりにも傍に居過ぎて。
ハウエリート自身は騎士になる予定で、レンドルフ伯爵家の三男である為、伯爵家は継げなかった。貴族で居続ける為には、結婚した妻の家に婿に入るか、彼自身が功績を挙げる必要がある。
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次に仲が良いのは、同じ侯爵家のご令嬢アリアーネである。彼女は、フェリシアンヌの兄・モーリスバーグの婚約者だ。現在16歳の彼女はフェリシアンヌよりも1歳年上で、今年3年生に進級していた。悪役令嬢だったフェリシアンヌの兄ならば、乙女ゲームの攻略対象になってもおかしくないのだが…。彼も中々の美形なので、ヒロインだった頃のアレンシアが知り得ていたならば、残念に思っていたかもしれない。
アリアーネはスイセント侯爵家の1人娘なので、本来ならば…婿入りを望まれる筈だが、娘婿として良い候補がいないのもあり、親戚から養子を取ることになっている。養子と言っても、幼い子供をもらい受けるのではなく、ある程度成長した跡継ぎの見込みのある少年を、養子に迎える予定だった。スイセント家も、ハミルトン家と変わらない程の名家なので、跡継ぎは慎重に…というところだろうか。
フェンデン侯爵家のご令嬢である、ミスティーヌとも仲が良く、同じ侯爵家としての知り合った。フェリシアンヌより1歳年下の彼女は、今年から王立学園に通うこととなった1年生である。彼女はフェンデン侯爵家の次女であり、フェンデン家も男子に恵まれなくて、婿を迎え結婚した長女が既に跡を継いでいた。
彼女の婚約者はクリスティア同様、攻略対象の1人であったアルバルトだ。彼はナイツ侯爵家の嫡男であり、フェリシアンヌとも交流がある。彼は、カイルベルトの幼馴染にも当たり、幼い時からカイルベルトを兄のように慕っている。
そして…最後に仲が良いのは、王立学園の生徒ではなく、最近知り合い仲良くなった、ジェシカである。彼女は、商家であるリンド家の1人娘で、攻略対象の1人であったタムリードと、最近婚約したばかりだ。彼は、アレンシアに攻略され掛けた男爵子息で、あの婚約破棄事件の後、フェリシアンヌと話をする切っ掛けがあり、その後に彼からジェシカを紹介されたことで、仲良くなったのだ。
今では他の女子3人とも、ジャシカは仲良くなっている。本来ならば身分が違い過ぎる為、友人として付き合うことはない。それでも仲良くなれたのは、彼女の性格が真っ直ぐで前向きでハッキリしているところに、惹かれたのではなかろうか。
そして、これは一番大事な部分であるのだが、乙女ゲームでの役割がアリアーネを除く女子4人が、悪役令嬢という位置であることだった。要するに、アレンシアに婚約者や想い人が盗られそうになったのは、フェリシアンヌだけではなく、彼女の現在の女子友である3人も、同様であったという訳で。
しかしミスティーヌは去年、王立学園には入学しておらず、乙女ゲームでは不利な状況であった訳だが、婚約者であるアルバルトには溺愛されている。然も彼女は、しっかりと対策を練っており、2人の関係は揺るぎもしなかった。但し、フェリシアンヌ達女子友は、その事実を知る
フェリシアンヌは…前世から人に頼る性格ではなく、何でも自分の力で切り開いて来た。その所為で、他にも転生者が居ないか…と、探そうとはしなかった。記憶を取り戻す前から、その性格は変わらずのようで。同じクラスに、クリスティアがいたお陰で孤立はしていないし、他にも理解者はいたけれど。前世の記憶がある転生者という意味では、1人で戦っていた訳である。
1歳年上のアリアーネも、フェリシアンヌのことを気に掛け、学年が違うというのに、学園での休憩時間にはなるべく寄り添ってくれていた。常に2人がフェリシアンヌを守っていると、彼女の周りには他にも人が集まって来るようになっていた。
元婚約者・ハイリッシュから婚約破棄される頃には、彼の冷たい態度に皆から同情される程に、他の生徒達との垣根がなくなっていた。お陰様で婚約破棄事件の時には、ハイリッシュやアレンシアに味方する者はいなくとも、フェリシアンヌの味方は大勢いたのである。
アレンシアが卒業パーティイベントに婚約破棄騒動を起こし、この王立学園を去っても関係なく、アリアーネとモーリスバーグは以前から仲が良かった。フェリシアンヌは、兄が攻略対象でも隠しキャラでもないことに、不思議に思うものの、アリアーネとは実の姉妹のような関係を築き、兄達の仲を心から祝福してきた。
ミスティーヌとアルバルトは、婚約破棄事件を乗り越えたこともあり、更に彼の彼女への溺愛が深くなったようである。見ている
また、クリスティアとハウエリートは漸く幼馴染から脱却し、婚約破棄事件での時の心のすれ違いに、2人の仲の修復と進展をしているところである。あれから2人は、自分の気持ちを告白しよく話し合ったうえで、婚約を続けることにしたのだ。彼女の気持ちを聞いた彼は、自分と彼女の立場を理解していなかったと、反省したようである。
ジェシカとタムリードも婚約破棄事件で気持ちを確かめ合い、新たな関係を作ろうとしていた。彼女の恋慕に漸く気付いた彼は、彼女の気持ちを受け入れ、婚約することになったのである。
漸く、皆が落ち着いた頃のアレンシアからの連絡に、再び波乱な予感がするフェリシアンヌは…。幸せそうな彼女達を見つめて、溜息をそっと
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前回からは、数日経っています。
今回は、新キャラの名前が続々と登場します。(人物自体は登場しません。ほぼ状況説明ですね。)
漸くアレンシアからも返答をもらい、後日に会うことになりました。その為今回の内容は、フェリシアンヌの女子友関連となりました。
アリアーネとモーリスバーグ以外の人物は、前作で登場した攻略対象と悪役令嬢達です。悪役令嬢達は、前作では名無しで登場していませんので、今回が初登場になりますね。前作の攻略対象達も続編では名前付きで、今後正式に登場予定です。
また、アリアーネとフェリシアンヌの兄モーリスバーグは、続編の為に作られた新キャラとなります。
お気付きかも知れませんが、前作のキャラで名前も登場していない人物が、数名存在しています。今後は同様に名前付きで、登場予定としておりますが、正式に登場するのかはまだ未定です。
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