第6話 彼女。彼女、彼女。

 今この空間にあるものは彼女を表すもの、それだけだ。彼女の姿が映し出された大きな画面と、それを映し出すための機械、コード、スピーカー、そして司会と観客。

 彼女の視線は僕を含む多くの人達に注がれているけれど、僕は彼女だけを見ている。

 それはあまりに乖離していると思う。僕達は向かい合っていながら、あまりに遠く離れてしまっている。

 それなのに、これまでヴェールに包まれていた彼女の人としてのリアルな側面が見えて、僕は勝手に心を動かされていた。

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