第3話 トークショー

 今日は彼女のトークショー。彼女は作家で、僕はそんな彼女の名もなきファンの一人だ。この部屋の中にいる人達もまた、彼女のファンで間違いない。

 二十人くらいの男女が半々、それぞれ等間隔に距離を開けた椅子に座っている。僕の席の斜め前にモニターが設置されているから、きっと彼女にもこちら側が見えていることだろう。

 実際に、彼女は僕達のことを一人でも多く確認しようとするかのように目を凝らしてこちらを見つめている。彼女は司会に話を振られるその間際、ちらりと出した舌で上唇を舐めて、おもむろに下唇を噛み締めた後、口角をキュッと上げて可愛らしい笑顔を浮かべた。そして穏やかな口調で話し出す。

 その瞬間、僕はドキリとした。見た目以上に若々しく、凛とした声だったからだ。彼女の声が部屋に響いて、僕の胸はざわざわとして落ち着かなくなった。

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