練習!
さて、午前中の授業も終わり、給食の時間も終わり昼休みになった。昼休みになるとももが、ほぼ毎日のように体育館で練習していることがある。
それは、バック宙の練習だ。
コーチはボブ君のお兄さんの、クラスメイトのジョニーだ。肌は黒いが、ボブと同じくマミーはジャパニーズの日本生まれの日本人だ。
ジョニーの自慢は長い髪をクルクル編んだドレッドヘアーだ。背も学年で一番高いが、小学四年なのにかなり大人っぽい、どこかのレゲエミュージシャンのようだ。
ももは、一ヶ月でふかふかのクッションの端にたち、ジョニーの補助付きでバック転できるようになった。
その後、床で手をついて一人でバック転出来るようになった。
でも、後一ヶ月後に迫った鬼王神社の夏祭りでは、一人でバック宙を決めないといけない。なぜって? それは後からわかること。
とにかくももはバック宙を決めたくてしょうがなかった。
「えい」
ももは大きなふかふかクッションの端にしゃがみこみ、ジャンプする。
頭を先に回転させるつもりで、足を空中に飛ばして……
──ボフ!
そしてクッションに正面から落ちた。
半回転まではできるのだが、まだまだ綺麗に足から着地できないのだ。
「ハァイ、もも、手を使ってバック転出来るんだから、もうできたもおんなじだぜ」
「うーん、どうも途中で怖くなる」
ももはクッションに寝転がるようにジョニーを見る。
「みてな」
ジョニーはふさふさドレッドヘアーを振り回すように膝を曲げて思いっきり後ろに向かって飛び上がると、クッションも何もない床で、いともたやすくバック宙を決めた。
どん!
着地も綺麗だ。自慢のドレッドヘアーもさらりと最後にまとまった。
「う、うまい」
「もも、できるってできる、ヒャア」
「どうやって出来るようになったの?」
「うーん、ダディが俺をオリンピック選手にしようって考えて、コーチにつけて特訓した結果だぜ、でも俺は嫌だねラップの方が好きさ、オーノー」
「……」
「ヘイもも、お前の運動神経イケてるぜパッションもバッチリだ、絶対できるぜ、できるぜ、グレードだゼェ」
アメリカンはいつも陽気だ──ハーフだが、血は争えない。でもれっきとした日本人だ。
ももはそんな陽気さに、時々ついていけなくなる時がある。
「ホレ、もう一回」
「うん」
再びトライだ。
ダン! ボフ!
半回転で正面から落ちていく。
「もう少しだ、もう少し、もも、イケてるぜワァオ」
何度も練習するもも。
その度に奇声を発するジョニー。
「ヒャぁぁぁ、ゴー、もも、ゴー…」
ジョニーはいい奴だ。
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