第7話少女は僕を邪魔したい
「さあてっ課題終わらせなきゃ」
独り言として呟いたことを、本を読んでいた彼女は耳ざとく聞きつけ、こっちにきた。
ちなみに今日は日曜日。
僕は9時に起きた。本当だったら、一日中寝たかったけど、耳元で
「睡眠魔人痴漢変態睡眠魔人痴漢変態睡眠魔人痴漢変態睡眠魔人痴漢変態
睡眠魔人痴漢変態睡眠魔人痴漢変態睡眠魔人痴漢変態睡眠魔人痴漢変態」
とひたすら叫ばれ、僕はメンタルが崩壊するとともに、最悪な朝を迎えたわけである。
げっそりとしながら、朝ご飯を掻き込み、机に向かった。
カバンから課題を取り出すときに———あの独り言を呟き、
そして冒頭に戻る。
「あれ、イブキ勉強するの?」
彼女がトテトテと歩み寄ってくる。
「・・・勉強するのはおかしい?」
「いや、別に。」
ここから僕は、ゾーンに入った。
数学の方程式の問題を着々と進めていく。
アドレナリンが脳から大量に噴出し、腕が止まらなくなった。
腕が悲鳴を上げるが、疲労感も快感に変化し、僕を進めていく。
何やら耳元で叫ばれている気もしたが、僕は文字をうめていった。
僕がゾーンを抜けたのは、2時間後だった。
一区切りついた瞬間、集中力も途切れ、それと同時に疲労感が体中を覆いつくした。
「ああ、疲れたぁ~~~~」
僕は、フユカさんが、涙目になっていることに気づき、慌てていった。
「どうしたの、フユカさん・・・?」
「なんで、無視すんのっ。これだから最近の変態男は・・・っ」
後半はいらないと思う。あと、変態って言われると———泣くぞ?
「だからさあ、勉強に集中しちゃって、君のことをかまってあげる余裕がなくて・・・。
ついでに言うけど、僕は変態じゃない。」
「“初対面”の人に、スリーサイズを聞いたのはどこの誰だっけ?」
「うわーさいてーだねそんなひとぼくはみたことないなあ」
「ごまかし方が下手」
こんな会話をするだけで、なんとなく安らぎを感じる。
疲労感も薄れてきた。
「えーと、2x-7y=-14,-2x+9y=22か。この解は・・・」
「こんなのとけるわけない。ねえ、外にいこ?」
「これは加減法だね。」
「下弦法?月の話でもしてるの?」
「それぞれを足すと、2y=8か。」
「yとか、求める必要ある?まずこれ、社会に出て必要な知識なの?」
「y=4だから・・・次はxか。」
「なんで、記号はa、bとかじゃなくてx、yなのかな」
「x=(-14+7×4)÷2=7だ。よし。」
「問題、解き終わった?!!」
「次の問題行きましょう。」
僕は、集中しようとしているのに、ひたすら邪魔をされて悲しい。
まあ、なんとかかまってほしがっている彼女が、可愛いから許す。
「ね、さすがに数学やめよ?ね?」
「うんわかった。数学はやめるよ」
「よし、じゃあ、外に・・・」
「白地図始めよっと」
「もういいから、休もうよー」
別に、休んでもいいけど、こうやってかまってもらおうと、焦っている彼女を見ると、
このままでもいいと思えてくる。
「じゃあ、そろそろ休もうかなあ~~」
30分焦らしたあとに、そう言った。
彼女の方を見ると、ものすごく不満そうな顔をしていた。
「次やったら許さない」
「うんわかったよ。つぎからきをつける。」
「棒読みに聞こえるんだけど」
「ごめんって。」
椅子から立ち上がろうとした時、足がしびれていることに気づかず、つまずいた。
倒れそうになるところを、誰かに支えられた。
それも、ただ支えられるだけではなく、抱くような形で。
で、支えてくれた人は無論———。
「あ、ありがと、フユカさん」
「いや、別に」
体勢を整えた僕は、彼女から離れようとしたが、フユカさんはがっしりとつかんでいた。
「ちょっ、フユカさん・・・?」
「このままで・・・いい。」
「いや、いいとかダメとかじゃなくて、密室で男女が抱き合うって、やばいでしょ」
僕は、冷静に言った。
それでも、彼女の温かみや、胸の鼓動を背中から感じ取り、僕の顔が少し赤くなったのは、否めない。
彼女は、やっと離れたが、残念そうな顔をしていた。
おまけ・伊吹成分を補給する冬香
やっぱり、実物の匂いを嗅ぐほうが、安心できる・・・。
服とかだと満足できない・・・。
もっと触れていたかったな・・・。
僕は幽霊に恋をし、彼女は——— 水野 健吾(みずの けんご) @mizunokengo
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