第6話少女は間接キスが恥ずかしい
「帰っていいよ?」
僕は、何度もそう言ってるのに、フユカさんは
「んーーーーー」
とうめくだけ。
ただし、この会話は、人がいないところで、だ。
もしもこの状況を見られたら、と考えると、背筋がぞわっとした。
頭がおかしくて、幻覚を見だしたリア充と認定される・・・。
ただでさえ、嫉妬に狂ったサル(=非リア男子)たちの攻撃をかわさなければいけないのに、
2重に精神が崩壊する。
「ここにいても暇だから、帰っていいよ?」
「帰らない」
「まあいいけど、ここにいても暇だよ」
「べつにいい。」
まあいいや。彼女は彼女で、この学校で学ぶことがあるのだろう。
例えば、嫉妬に荒れ狂うサル(=男子)の生態とか。
睡魔の使い手(=先生)との闘いを、4時間目までなんとか持ちこたえた。
昼休みになったけど、ここで昼ご飯を食べるのは、危ない。
僕は、そそくさと屋上まで向かった。(屋上で昼食をとるのは許可されている)
我が中学校の屋上は、人があまり来ないスポットがたくさんある。
僕は、そこまで向かって、お弁当を開いた。
いつの間にか、フユカさんはついてきていて、実体化も済ませていた。
僕は、唐揚げをほおばりながら、彼女に聞いた。
「唐揚げ、おいしいよ?食べる?」
「えっ、いや、大丈夫・・・・・」
「そう?じゃあいいけど」
「いや、やっぱり、ほしい」
「まあ、唐揚げはおいしいからね。欲しくなる気持ちもわかるよ。はい」
僕は、彼女が顔を赤く染めるのを不思議に思いながら、唐揚げを食べさせてあげた。
「お、おいしい」
「よかったねぇ~~~」
唐揚げが一つ食べられなくなるのは悲しいが、彼女のうれしそうな顔を見られてよかった。
僕は、卵焼きを箸で挟み、口に入れた。
瞬間、ボフンと、彼女の頭から、湯気の立ちのぼる音が聞こえた。
「だ、大丈夫。これは幽霊の特性だから、気にしなくて、いい。」
僕は彼女の説明に納得し、ミニトマトを箸でつまんで、口に放り込んだ。
「・・・・・・・っ」
真っ赤な顔をした彼女は、その床にへたり込んだ。
今日は一睡もせずに、試練を終えた。頭の中に勝利のフィナーレが鳴り響く。
僕はフユカさんと、帰ることにした。
今日は図書室でダラダラしている暇がない。
早く帰らないと、サルたちに集団でリンチにされる。
僕は、実体化した彼女とともに校門を出た。
今日も何とかセーフだった。
ユウカさんは、手を寒そうにこすり合わせていた。
「大丈夫?寒いよね?」
「寒く、ない・・・わけでもない」
僕は、朝来ていた上着を彼女に渡した。
今は朝よりも寒くないので、バッグに入れていたものである。
「あ、ありがとう」
僕の上着は悲しいことに彼女のサイズと丁度良かった。
(僕とフユカさんは、あまり背が変わらない)
おまけ1・おかずを食べたときの冬香
きゃ、イブキと私が間接キスした・・・!
恥ずかしくて、唐揚げの味はあまり、わかんなかったけど間接キスできた・・・。
あ、今度は私の使ったお箸に卵焼きがぁ・・・。
きゃああああああああああ。
恥ずかしい・・・でもうれしい・・・。
おまけ2・伊吹の上着を着る冬香
伊吹の匂い・・・温かぁい。
ほわほわだ・・・。
合法的に伊吹の匂いを嗅げる・・・うれしい。
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