第5話少女は僕の台詞が恥ずかしい
僕は、昨日のことが気になって、フユカさんに聞いた。
「そういえば、なんでわざ昨日の下校で、電車に乗る時に、またわざわざ実体化したの?」
鼻歌を歌いながら、軽い足取りで横に並んでいたフユカさんは、一瞬だけ肩をひきつらせた。
「実体化したり、幽体化したり、コロコロ変えるのは疲れるから。」
僕は不思議になった。今のって、答えになってないし、むしろ疑問を助長しているだけである。
まあ、深くは突っ込まないであげよう。
そう思って、思考を切り替えた僕は、彼女が顔を真っ赤にして、こう思っていることに
気づかなかった。
(い、言えない・・・。イブキと密着していたいからなんて、言えない・・・!)
クリスマスを前に、イルミネーションやクリスマスツリーが輝き始める、この町が嫌いになり始めた。
いまだに僕には好きな人がいないし、僕のことを好きな人は当然のようにいない。
僕のことを好きな子がいたら、お目にかかりたい。
突然、フユカさんが
「私、冬休みは伊吹山脈で山登りし・・・たい・・・な・・・。」
始めは勢いをつけながらも、後になったら、とぎれとぎれになり、声を小さくして言った。
「僕と、伊吹山脈で、山登りしたいの?なんで?」
僕には彼女の言いたいことが分かったが、からかってやった。
「イ、イブキ、の名前をとって、シャレにしたわけじゃなくて、ただ単純に、行きたいなって、その伊吹山脈が、すごくて、興味を持っただけで・・・。」
「はいはい、わかったよ。山登りをしたいなら、高尾山とかに僕が一緒に行ってあげよっか?」
彼女はただ単純にダジャレとして言ったのを、僕はまた冗談として言った。
一緒に行きたくない。私は一人で伊吹山脈に行ってくるから。
と、返されると思っていたが、予想に反して、
「まあ、私も暇じゃないけど、どうしても行きたいなら一緒に行ってあげるけど・・・?」
暇じゃないのに、無理してついてきてもらうのは彼女に悪い。
「いや、大丈夫。忙しいなら、ついてこなくていいよ。僕も、普通に山に登りたくなったし。」
彼女の顔は、真っ赤なのから、真っ青に変わり、そして真っ白になった。僕はきれいに色が変わったなあ、と思いながらそれを見た。
「わ、私も、普通に山登りたいし、一緒に行ったら一石二鳥だよ・・・?!」
「一石二鳥」の意味知ってます?
「まあ、ボッチで行くのはさみしいし、いいよ。一緒に行こう。」
彼女は顔を弾ませ、ただし恥ずかしそうに微笑んだ。
僕は、学校についたとき、思い出したくないことを思い出しそうになった。
なんとか押さえつけたが、その記憶は黒い煙のように、浮かび上がってきた。
① うちの学校は男子校で、非リア充が99%を示す。
あああああ、だめだ、記憶の蓋は、開きだした。
② ちょうど昨日、僕とフユカさんが一緒にいたのを見られた。
僕の抵抗はむなしく、記憶があふれ出した。
③ それはつまり、二人は付き合っていると思い込まれる。
僕はもう抵抗するのをやめた。
④ 劣等感を感じるサル(=男子)たちは、僕の命を奪う恐れがある
死ぬフラグが、美しくそろいました・・・。
フユカさんはさっきから悶え苦しむ僕をみて、怯えていた。
「わ、ごめん。ちょっと嫌な記憶が再発しちゃって・・・。」
「・・・誰!?嫌な記憶を植え付けたのは!」
こっちはこっちで変なスイッチを入れちゃった・・・。
おまけ・悶える伊吹を見る冬香
ああ、ちょっとおかしくなってるイブキも可愛いくてステキ・・・。
ずっと見ていたい・・・。
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