第4話少女と僕は下校する
我が中学校は、前述したとおり、男子校である。
男子カップルになった、とある先輩たちと違い、僕たちには、カップルがいない。
彼女を持つ人がいるかもしれないが、もしそれが言ってしまったら———夜道には気を付けなければならない。
だから、リア充でも、非リア充になりきるので、うちの中学校は一組しかカップルがいないわけである。
そして僕は————。
夜道に気を付けなければならなくなった。
いつもどおり、図書室でダラダラとすごし、下校時刻になったら、カバンをつかんで
学校を出る。
校門についたとき、木に寄りかかっているフユカさんを見つけた。
全身から血の気が引き、せめての願いとして、実体化していないことを望んだ。
顔を笑顔で弾ませ、彼女は手を振った。
視線が彼女に集まり、その彼女の可愛さに見ほれた後、手を振っている先の僕を睨む。
僕は、死を覚悟した。
戦闘状態交戦状態戦争状態。
これはやばい。
彼女の細く、じんわりと温かい手をつかんで、逃げた。
駅につき、追っ手もいなくなって、ようやく一息ついた。
ぜえぜえ呼吸しながら、僕は言った。
「ああ、怖かった・・・」
「んーーー」
なんとなく彼女は顔を赤く染め、もじもじしていた。
どうしたんだろう。
なんとなく視線を下すと、がっしりと僕と彼女は手をつないでいた。
・・・・・・・・。
素早く手を放し、速攻で謝った。
「ごめん、ほんとにごめん」
「いや、大丈夫・・・」
少し彼女ががっかりした顔を見せたのは気のせいだろう。
「そういえば、どうやってここまで来たの?」
「すぐわかるから」
・・・?
ここに来る方法はすぐわかった。
彼女はまず改札前で、幽体化してから、改札を通った後
実体化する。
ただしこれは、見る人がいない状況で、だ。
あとこれって・・・。
「不正乗車、よ」
駅員さん、申し訳ございません・・・。
お金は払いたいところだけど、あいにく今は金欠なんです・・・。
フユカさんに免じて許してあげてください・・・。
心の中で謝りながら、フユカさんと一緒に電車に乗った。
電車の中は混んでいて、フユカさんの華奢な体は今にでも押しつぶされそうだった。
ちょっと僕はしょうがないと思って、彼女の前に立ち、押してくる人たちを
我が身をもって抑えた。
なんとかそこに踏ん張ることに集中していたため、フユカさんが僕の背中に頭をもたせかけていることに気づかなかった。
僕は電車を乗り続け、比較的余裕ができたら、彼女とともに席に座った。
彼女から一席おいて座ったが、フユカさんに席を詰められる。
「この先、座る人が、座りやすくしないといけない、でしょ?」
僕は、そういう感じに気遣う彼女の優しさに新鮮さを感じながら言った。
「はは、大丈夫だよ。この駅以降は、全然人は乗っておないから。」
彼女はがっかりした顔をしつつも、その席にとどまった。
「むしろ気にならない?隣だと居心地悪いんじゃない?」
「べ、別にいいもん。移動するのが面倒なだけだから。」
「そっかそっか。」
僕はカバンから本を出し、読み始めた。表紙にはカバーがかかっている。
表紙の題名は、「もてない男が、リア充になる、100の方法!」とかでは決してない!
心の中で断言しつつも、読み始める。
ええと、56番目は、電車の中で眠ってしまった女の子は肩枕させてあげるべき!
かあ。
ま、そんなシチュエーションはありえ・・・ない・・・なくなかった。
いつの間にか、彼女は寝息を立てていた。
よし、本の通りに実行しよう。
僕は、そっと彼女の頭を押さえ、僕の肩にもたせ掛けた。
少しだけ、僕とフユカさんの体はふれあった。
鼻に懐かしい香りが広がり、僕も眠りに落ちていった。
私は、こっそりと本を読み、その状況になったらいいな、と思っていたらと実際になった。
イブキと体がふれあい、うれしくなる。
寝たふりだったが、イブキの温かい匂いによって、私も眠りに落ちていった。
おまけ・電車を乗り過ごしたイブキと喜ぶフユカ
イブキ「ごめん、フユカさん、乗り過ごしちゃったね・・・。」
フユカ「別に、しょうがないからいい。」
イブキ「ごめんね、気遣わせちゃって・・・。あと、この時間だと下校ラッシュから帰宅ラッシュになるから、混んじゃうけど、絶対に(押しつぶされないように)守るから。」
フユカ「あ、ありがと。(やった、イブキと密着できる・・・!絶対に
守るって言ってくれた・・・!うれしい!)」
※今日も前回と同様に甘さなし。作者を拷問に処す。byフユカ
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