第3話少女は僕の枕を欲しがる
夜ご飯を食べ終え、僕はパンパンになった腹を抱えながら、部屋に戻った。
僕が机につき、腕を組んで考えた。
なんでいきなり彼女———フユカさんが見えるようになったんだ?
昨日は全く現れず、だったから原因は今日にあるとしか思えない。
朝、こんな朝早くに登校するように、と言った学校を恨みながら起きる。
制服にはいつも通りに着替え、朝ご飯を済ませてから、家を出ていたはずだ。
登校中は、ひたすらぼうっとして、冬は寒いのに、なんで制服は冬服でも薄いんだと学校を呪った。
学校についたら、今年の2月のバレンタインデーで成立した、2年のカップルを、周りの人と一緒に冷やかしながら、自分の教室に入った。
授業中は、ひたすら睡魔と戦いながら、心の中で学校に対する破滅の呪文を唱えていた。
4時間目が終わり、昼食は10分で済ませ、睡魔にあっさりと降参してから、寝た。
5時間目が移動教室だと知らずに、本鈴のチャイムで起き、遅刻したのでたっぷりと叱られた。
授業が終わり、晴れ晴れとした気持ちで帰路につく。
そして、帰り道を歩くときにカップルを見つけて、怒りを抱いたわけである。
今日の行動を思い出した後、原因はない、と結論を出した。
そして、フユカさんを見ると———彼女は泣いていた。
大粒の涙を流し、
「やっぱり覚えてないんだね」
彼女はつぶやいたが、僕はよく聞こえなかった。
「ど、どうしたの!?」
「いや、なんでもないから・・・」
「なんでもなくないよ。どうしたの?」
「だ、大丈夫」
大丈夫そうには見えないけど、これ以上聞いても答えてくれない、と思い、僕は問い詰めるのをあきらめた。
そして、課題を済ませていたら、いつの間にか寝る時間になっていた。
歯磨きや、着替えをすませ僕は、フユカさんに聞いた。
「ねえ、フユカさんはどこで寝るの?」
「私はクローゼットで寝る」
「なんで・・・?」
「べ、べつにいいでしょっ」
「まあいいけど。服は出しとく?」
「いや、その必要はないから」
「????」
僕は毛布を出し、彼女に渡した。
フユカさんは、満足そうに微笑み、
「イブキ、おやすみ」
と言った。
僕も
「おやすみ」
と答える。
不満そうな顔をした彼女は、クローゼットに入った。
僕はフユカさんに聞いた話を、布団に入りながら思い出す。
幽霊の中でも特別格といわれる彼女は、自分の姿を見られる人を自ら決めることができ、
実体化も可能で、その場合はほぼ普通の人間と同じ感覚になる———らしい。
そんな都合のいい話があってたまるもんか!と叫びだしそうになったが、事実である。
そして、その原理を証明しようとしたら、僕の頭はオーバーヒートし、気絶した。
ここからの記憶は僕にはない。
実体化した私は、クローゼットを出る。それはもちろん、イブキが気絶したと、気づいたからである。
本当だったら、ひたすらイブキの服の匂いをかいでいたが、これを私は好機とみた。
イブキの匂いは、とても安心する。
私は、イブキのベッドに乗り、イブキからもらった枕とイブキの使う枕を高速ですり替えた。
そして、聞こえないとわかっているからこそこう言った。
「大好き、イブキ」
イブキはひたすら規則正しい呼吸を繰り返している。
私は、彼を抱きしめたくなったが、それをなんとか押しとどめた。
だから、彼の使っていた枕をぎゅっと抱きしめた。
今日はたっぷりと寝られそうだ。
おまけ1・朝起きて戸惑うイブキ
あれ?なんで少しこの枕はフユカさんの香りがするんだ?
気のせい、かな。
おまけ2・服を着るときに戸惑うイブキ
あれ?この制服、フユカさんの香りがするのはなんで?
あ、そうか。おなじところでフユカさんが寝ていたから香りが移るのは当たり前か。
※フユカのキャラが定着してないことについて、申し訳ございません。
いちおう、伊吹の前でデレはあまりしないキャラです。
ただし、ツンはします。
甘々になることは今のところ予定に入っていません。
デレデレのフユカとデレデレのイブキを対面させることを目標としています。
今のところは、無理そうですけどね。
作者の願いとしては、早く付き合え!———これだけです。
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