第11話 ホストと付き合ってることがバレたらしい。


『優也の家に泊まりに行きたいなあ』

「………っ!!!!!???」



突然の衝撃の発言に、思わず飲んでいた缶チューハイを吐き出しそうになってしまった。通話をしていたスマホすら取り落としそうになり、慌ててスピーカーに変えてローテーブルの上に置く。



「……なんなんだよ急に!」

『動揺しすぎじゃない?普通じゃん!恋人とお泊まりするくらい!!』

「べつに、異常とまでは言ってないだろ……」

『怪しいなあ。泊まりに来られて困るものでもあるのか~?!』

「ないない、それはまじで」



弁解しながら、わずかにこぼれたチューハイを拭き取り、座椅子に座り直した。俺とスバルは生活パターンが合わないが、いまは日曜日が基本的に共通の休みなので、二週間に一度くらい、出かけたりスバルの家でDVDを見たりして二人の時間を過ごしている。



平日は、長電話とまではいかないが、スバルの出勤が遅い日なんかには、こうして電話をすることもある。

メッセージのやりとりは、以前とあまり頻度が変わっていないが、なんだかんだ、なんらかの形では毎日会話をしているような気がする。



「俺の家来たってなんもないの知ってるだろ?お前んちみたいに広くないし」



これは事実だ。スバルは数回俺の家に来たことがあるが、することといったらスバルの家にいるときと別に変わらない。しいて言うなら、部屋のベッドの下からAVがなくなっていたことで、スバルが嬉しそうにしていたくらいか。



『ちがうよ!だったら優也の家じゃなくてもいいけど、僕はお泊まりがしたいの!いつもバイバイするから、しないでずっと一緒にいたいんだよ!!』



まずい、これは拗ねモードだ。声でわかる。完全に拗ねさせると後々面倒なので、機嫌をとるべきだととっさに思うが、どうしていいかわからない。



なぜなら俺はお泊まりをしたくないのだ。



……と言うと語弊があるな。

厳密に言えば、お泊まりをしたとき、結果的にスバルを傷つけることになるのではないかというのを、恐れている。



「お前な。俺はこう見えて硬派なんだぞ。付き合ってまだ2ヶ月半くらいだろ、寝顔見せるには早いって」



冗談ではぐらかそうという試みはあっさりと跳ね返されてしまった。



『もう!僕は本気で言ってるのに!』



もちろん俺だって本気で拒否したいわけじゃない。お前では勃たない、ということも、以前はっきりと告げていたはずだ。



でもそれって、あのときだからはっきり言えたものの、実はけっこうデリケートな問題なんじゃないのか?とも思う。

スバルとは手を繋いだりキスをしたり、そういうスキンシップはあるが、中学生の恋愛みたいにそれ止まりな現状だ。



でもその先にいける気は今のところいっさいしていないのだった。

泊まってしまったら、なんとなくうやむやにしているその辺の部分が浮き彫りになりはしないだろうか?

……俺の考えすぎか?



「別に嫌とかじゃないって。いいよ、俺はいつでも」



ついにそう言ってみた。どうせ避けては通れない道だ。

スバルが予想以上に喜んでいるので、なるようになれ、と腹を括る。

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