第9話:村娘、秘密を知る

「あんたにはまず、あたしの仕事を一通り覚えてもらうわ。ふふっ、かなり忙しいから覚悟してなさいよっ!」


 アリシアに手を引かれ、わたしは広間から連れ出された。


 嫌だぁー、働きたくないでござる~。……なんて言ってたら一銭も貰えないわけで、仕方がなくアリシアに付いて行く。


「仕事のタイムテーブルはお姉さまが決めておいてくれるのよ。あたしたちはそれに従って、仕事を進めて行けば良いわ」


「ふえー。今日はどんな感じのタイムテーブルになってるの?」


 そう訊ねると、アリシアはポケットから四折にされた紙を取り出した。


「これよ」


 それを受け取って開き、書かれている内容を読む。




「えっと……『あなたに届け、この想い 流れ星に願い事 ふわふわ揺れる恋心 あなたに届け、この想い 甘い砂糖菓子よりも 食べて欲しい恋心 あなたに届け、この想い わたしの愛しのお――』」




「うわぁああああああああああああああああああああああああああああああああッッッ!!!???」


 わたしの手にあった紙を、アリシアは顔を真っ赤にしてふんだくった。


 それからクシャクシャにして、乱暴な手つきでポケットに仕舞いこんでしまう。そこまでしなくても……。


 アリシアは膝を抱え、恨めし気な表情でわたしを見上げた。目尻には涙が溜まっている。


「ど、どうして読んじゃうのよ……!?」


「いや、なんとなく」


「馬鹿っ! ミナリーの馬鹿ぁ!」


 どうやらあのポエムは、他の誰かに見られたくなかったらしい。


 メイド服から出て来たことから考えるにきっと、仕事中に考えて書き残していたのだろう。


 ということは、メイドの仕事もけっこう暇なのかな?


「良かったぁ」


「何が良いのよ!? まったく良くなんかないわよぉっ!!」


「まあまあ。大丈夫だよ、アリシア。誰だって一度くらい、ポエムを考えてしたためる経験はあるって。アリシアだけじゃないよ、気にしないで」


「ミナリー…………。じゃあ、あんたもポエムを……?」




「え、そんな恥ずかしいことするわけないじゃん」




「………………………………………………………………………………………………………」

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