第8話:村娘、後悔する

「そんじゃ、気を取り直して仕事を始めるわよ」


「了解だよ、貧――じゃなかった、アリシア」


「あんた今『貧乳』って言いかけたわよね? 言いかけたわよねぇ!?」


「あははー、気のせいだよ~」


 詰め寄って来る貧乳をテキトーにあしらいつつ、そう言えばと、わたしは一つの疑問を思いだす。


 アリスに尋ねるのをすっかり忘れてしまっていた。彼女にでも聞いてみよう。


「ねえ、アリシ――貧乳」


「言った! 今思いっきり『貧乳』言った!! しかも言い直した!?」


「ちょっと質問なんだけど、他のメイドさんってもう仕事を始めてるの?」


「何食わぬ顔で質問してくるんじゃないわよっ! ……って、他のメイド? 何言ってんのよ、あんた。このお城にメイドはお姉さまとあたしの二人しか居ないわ」


「えっ?」


「あんたを含めれば三人だけど、お生憎さま。あたし、あんたのことはまだ認めてないわよ! 認めてもらいたかったら、シッカリと働くことねっ!」


 ふんっ……と、アリシアは腕を組んでわたしからソッポを向く。


 彼女の横顔は少し赤らんでいた。


 でも、それがどうでも良くなるくらい、わたしの頭は絶賛混乱中だった。


「え、あの……え?」


「……何よ、間抜けた顔しちゃって」


「この広いお城に、メイドって二人しか居ないの?」


「そうよ。昔は大勢のメイドが居たんだけど、お姉さまが人件費削減のためにみんな解雇しちゃったの。メイドだけじゃなくて、料理人とか庭師とか、使用人も全員ね」


「全員……だと!?」


「ええ。その分の仕事はお姉さまがほとんど補ってるわ。あたしは少しでもお姉さまの負担を減らすために頑張ってるってわけ。あんたも、ここで働くからにはお姉さまの負担を減らせるよう頑張りなさいよねっ!」


「…………」


 どうしよ、お母さん。わたしはとんでもなくブラックな職場に就職しちゃったようです。


「ミナリー? どうしたのよ、急に顔を青くして。体調を崩したの?」


「う、ううん。何でもない。気にしないで、貧乳」


「そっちは気にしてるのよ! 次言ったらぶっ飛ばすわよっ!?」


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