第2話 入学式

 「岳斗がくと、なんか変」


 「天記あきさんこそ!肩幅広すぎ」


 二人は、お互いを見合ってヘラヘラ笑った。

 空を見上げると、雲一つない晴天だった。青い空に、薄いピンク色の桜の花がきれいに映えている。わりと強い風が、花びらを大胆に散らしながら、岳斗や天記の上にひらひらと落としていく。


 今日は中学校の入学式だ。公立の大原中学校には、岳斗と天記が通っていた大原小学校と、同じ学区の中原小学校の二校から新入生が入学する。


 私立の中学へ行く者も何人かはいるが、ほとんどが同じ中学に進学する。今までよりも同学年の人数が倍近く増え、にぎやかになる。


 岳斗と天記は、成長することを踏まえ、あらかじめ大きめにあつらえられた真新しい制服に身を包み、今日から中学校生活を送ることとなった。

 お互いの制服姿が見慣れないせいもあるし、立派に見えたりもして照れくさく、くすぐったい気分だ。

 二人は、これからの新しい生活を目の前にして、期待と不安で胸がでいっぱいだった。




 入学式を無事に終え、教室に向かう。七クラスあるうち、岳斗は一組、天記は五組と離れてしまったが、部活は同じ剣道部。行きも帰りも一緒で、大して離れたという感じはない。


 今まで通っていた小学校も、道路を挟んで中学校の反対側にある。制服を着ているという他はほとんど変わらないのだが、二人は少しだけ、大人の階段を上ったように感じていた。



              つづく

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