10話.[不健全なことは]

「お義理姉ちゃーん」

「あ、藤崎先輩」


 買い物から帰っている最中に藤崎先輩と出会った。

 まだまだ時間が全然経過していないため、いつものように「さっみー」と言っている。

 その割には外に嬉々としているのだから面白い話だった。


「今日も偉いねえ、そんなきみにはこれをあげるよ」

「ありがとうございます」

「家の近くまで一緒に行ってもいいかな?」


 断る必要もないから一緒に帰ることにした。

 先輩は私を無理やり内側を歩かせ自分が外側を歩いていた。

 そして当たり前のように手を繋いできているから不思議だ。


「きみの友達は個性的な子ばかりだね」

「そうですね」

「特に安里ちゃんが面白い」


 敢えて安里を選ぶところが面白い。

 すぐに不機嫌モードに入るから相手をするのが難しいのに。

 先輩からすればだからこそと燃えるのだろうか?


「と、もうここか、あばよっ」

「はい、気をつけてくださいね」

「ありがとー」


 とりあえずは食材をしまう。

 また母はどこかに行っているからコタツで暖まっていることにした。


「おかえり」

「ただいま」


 伊代はそのまま対面にではなく真横に入ってきた。

 横幅に余裕があるわけではないから少しどころかかなり窮屈だけど文句は言わない。


「寂しかった」

「昨日引きこもっていたのは伊代だけどね」

「……もう今日は離さない」


 あれからべったりになってしまって困っている。

 まあ彼女なんだから構わないと言えば構わないけれど。


「……瑞月、いまさっきまで誰かといたでしょ」

「うん、藤崎先輩と会ったんだ」

「ふーん」


 そんな顔をするぐらいなら付いてくればよかったのに。

 寒いから行きたくないと言ったのが伊代だ。


「もう嫌だっ、昨日は未来ちゃん、霞ちゃん、安里ちゃんと仲良くするしっ」

「友達だからね」

「……この前まであんな拒絶オーラを出していたくせに」


 それはあなたも同じだ。

 大嫌いと言って顔を合わせる度に叩いてきていたぐらいだ。

 だから責められるような立場でないことを分かった方がいい。


「はいはい、どうしたらいいの?」

「抱きしめて」

「分かりましたよ」


 姉だからこちらが折れてやるしかなさそうだ。

 でもまあ、嬉しそうにしてくれるからそれでいいんだけど。

 可愛いし、いい匂いだし、このまま自由に苛めたくなる。


「ひゃっ、な、なにっ?」

「首筋に顔を埋めていいんでしょ?」

「ちょっ、まっ」


 文句は言わせなかった。

 朝からなにをやっているのかと言いたいぐらいのことをした。

 その結果、はあはあとしている伊代が誕生した。


「ばか……」

「不健全なことはしてないから大丈夫」

「大丈夫じゃないよっ」


 怒ってしまったので伊代にしたいようにさせておいた。

 私はそんな妹の頭を撫で続けることにしたのだった。

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07作品目 Nora @rianora_

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