07話.[安心できたから]
帰ってすぐ、自分が馬鹿だと気づいた。
まあ、砂利が敷き詰めてあるからしっかり聞いてれば分かってしまう以上、こうなるのもおかしいというわけではないが。
現在時刻は恐らく21時前ぐらい。
家の裏側のところで腕を組んだ父と向かい合っていた。
「意地を張っていないで家の中に戻れ」
馬鹿だ、何故藤崎先輩に話してしまったのか。
簡単に情報が共有されてしまう世の中で不用心だった。
「夜中にでも入るよ、ふたりと会いたくないんだ」
「お前、母さんに――」
「うん、言ったよ、だって本当のことじゃん」
みんな伊代の味方をする。
味方をしてくれない原因を作っているのも自分ではあるが。
「謝ろう、俺も一緒にいてやるから」
「ごめん、私のことは放っておいて、帰るのもなるべく遅くするから」
「なんでだよ、これまで上手くやってきていただろ?」
「それは我慢してきたからだよ」
私も向こうも。
結局いつかはこうなる風になっていたんだ。
そして、結局私は親を頼るしかない、バイトだって禁止だし。
ご飯もお風呂も睡眠も、服を洗ったりとかだって家の中に入れなければできないことなのは分かっている。
それでもプライドがある、こちらばかり謝らされるのは違う。
幸い、冬の外は得意だった、暖かくて落ち着くぐらい。
だから深夜まで時間をつぶせばお互いに不快にならなくて済むだろう。
利用させてもらうことになるのは申し訳ないが、死にたくもなかった。
「離婚してほしくなかった、産んでくれたお母さんが好きだったのに」
「……俺だって好きだったさ、そうでもなければ結婚なんてしない。でもな、そう考えていても終わりはいつかくるんだ、嫌だと願ったところでなにも変わらないことだ」
誰に問題があったかなんていまさら言ったところで意味もない。
「いいから戻って」
「駄目だ、お前も一緒じゃなければ戻らない」
「いい加減にしてよ、私なんか邪魔だと思っているくせに」
「は? なんの話だよ?」
「お父さんはどうか知らないけど、お母さんと伊代は私が邪魔だと思っているよ。その証拠に伊代にしかほとんど頼らないじゃん、こっちから話しかけなければほとんど話してくることさえない、だから空気を呼んであげているんだよ私は、お義姉ちゃんとしてね」
こういうことを言うと同情を引こうとしていると捉えられるから嫌だ。
こっちが割り切って行動しているのに邪魔をされるのが嫌だ。
なるべく迷惑をかけないように家事だって自分の分は自分でするって言ったのに聞いてくれやしなかった、謝れと言うばかりで。
あの時点で誰の味方かなんてはっきりしているんだ。
元気ににこにこと過ごしていたから家族仲はいいみたいに考えていたんだろうけど、あの人は私がどれだけ我慢をしてきたのか分かってない。
自分達がしているのだからそうして当然だと言いたいのならもう黙るしかないことではあるが。
「これだけは言っておくけど、結局道具とか部屋とか使わせてもらうことになる、だめならいまだめって言ってほしい」
「使っていいに決まっているだろ、お前は俺の娘なんだから」
「それならこっちの意見も聞いてよ、お母さんや伊代のことばかりじゃなくてさ、不公平じゃんこんなの」
別にいいじゃんか、自分が寒い思いをするわけじゃないんだから。
しかも敷地内であれば心配する必要もない、襲われるとかもない。
私にだって考える脳がある、感じる心がある。
その一応人間の私が考えて、相手を不快にさせないように顔を合わす可能性すら下げようと外にいようとしているのだから。
誰だって嫌いな人間なんかに会いたくない、これは姉なりの優しさだ。
「別に可愛がってくれなんて言わないよ、ばかな娘だって呆れて放っておいてくれればいいの」
「瑞月……」
「明日も早いんだから早く寝なよ、お父さんの稼ぎがなくなったらこの家からも出ていかなければならなくなるんだから」
風邪を引いたときだって病院を利用したことなんてない。
全て自力で治してきた、だって誰もいなかったんだからしょうがない。
家事でもなんでも頼れるのは自分だけだった。
しかも母が出ていったは小3のときだぞ、ずっとやってきたんだ。
父は「外で寝るなよ」と呟いて戻っていった。
別にお風呂に入れればそれでいい、あ、ご飯も食べられれば、か。
自分が決めた通り日付変更ぐらいになるまで外で時間をつぶして中へ。
ぎょっとしたのはリビングで母が突っ伏して寝ていたことだ、これでは調理なんてとてもじゃないができない。
私のためであろう作ってくれていたご飯を食べる気にもならずにお風呂場へと向かう。
こちらは問題なく入れた、もう冷たいけれど追い焚きもしない。
万能であるジャージを着て外へ――ができなかった。
「待って」
嫌だと、謝るのが嫌だと、ここまで強烈に思ったのは初めてだった。
なんか気持ち悪く感じる、母だとはとてもじゃないが思えない。
「……なんでこんなことを繰り返すの?」
「なんでって」
自分のせいであることは確かだ。
でも、ふたりのせいであることも確かなんだけどな。
「別にいいじゃん、世話をしてくれなんて頼んでいるわけじゃない」
「なんで分からないの……」
「はぁ、それはあなただって同じじゃないですか、早く寝てください」
いいじゃんか、母のお金を使っているわけではないんだ。
父は確かに自分の娘だと言ってくれた。
当然という考え方は良くないけど、その父のお金を使わせてもらって生きているわけで、この人が私にしてくれたことなんて少ない。
お弁当だって自分で作っているし、やらなければならないという感情から洗濯とかそういう家事も自分でやることの方が多いぐらいだ。
じゃあ、その人に従う必要なんてないのでは? と私の心が囁く。
「待ってっ」
「嫌いですっ、親子揃って自分のことしか考えてない!」
それはこちらも同じだから偉そうに言える立場じゃないが。
なんで放っておくことができないんだ。
誰に迷惑をかけようとしているわけでもないのに。
「嫌いでもいいから外で寝るのはやめなさい!」
「いいから放っておいてくださいっ」
ちゃんと頭を打ったりしないよう計算して押して。
ゆっくりと玄関にある段差に座ったのを目にしてから外に出た。
もちろん荷物だって持ってきている、朝に入るつもりはないから。
こっちは不快にさせないようにって考えて動いているんだ。
邪魔してくれるな。風邪を引いても保健室に行けばいいのだから。
休み時間になる度に携帯をチェックしているが通知がやばい。
あとは単純にお腹が空いた、2日間なにも食べていないから。
それよりもやっぱり問題はこれだ、父からの連絡の頻度だろう。
昨日、これまで以上に衝突したから情報が全ていっている――と言うより、玄関であんな大声を出せばそりゃ分かるよねって感じのもの。
「吉岡さん」
嫌われようとするのもそれはそれで疲れるものだ。
だからなにかを言ってするのではなくて、初めて無視を選択した。
正直、誰かと喧嘩をしていられるエネルギーが残っていない。
「ご飯を食べてないって聞いたけど」
炊きたての白米が食べたい。
別におかずはなくていい、ふりかけとかがあればそれで。
そうすれば多分涙が出るぐらい感動すると思う。
ご飯を食べられることは幸せだということを分かると思う。
昨日だって誘惑に負けて調理しようと考えていたのに無理だった。
嫌がらせのように母がいたせいでご飯を食べられなかったし。
「あと、伊代ちゃんが来なくなっているのは吉岡さんのせいだよね?」
そういえばどうして未来とも話さなくなったのだろうか。
ここで話すのが気まずいなら廊下に連れ出すなりすればいいのに。
それに私はほとんど教室にはいない、気にする方が馬鹿というものだ。
「伊代ちゃんに謝って連れてきて」
そんなことできるわけない。
事情も知らない人間って気楽でいいよなと笑ってしまった。
「なにがおかしいの?」
こっちはなにも発していないのに会話が成り立っている。
突っかかっているこの時間を利用して会いに行ってくればいいのに。
「はぁ、いくら私のところに来たって伊代は来たりしないよ」
「だからこっちにまた来れるように仲直りしてよ」
「嫌だ、少しでも不快な気持ちにさせないようにしているんだから」
意外と大変なんだ、20時頃までここで時間のもつぶすのも、深夜まで外で待ってお風呂に入るのも、その状態で外に戻って寝るのも。
彼女達のしていることはそういう頑張りを無駄にする行為だ、どうしてそれを分かってくれないのか。
「そもそも仲良かった伊代ちゃんがどうして大嫌いなんて……」
「そういう言葉が出るってことは普段から好かれていなかったってことだよ――あ、お父さんから電話がきたから」
しつこい、そんなことしなくたってちゃんと学校にいるのに。
「もしもし?」
「瑞月、いまどこにいるんだ?」
「どこにって、学校に決まっているじゃん」
そうでなくても空腹とかであれなのに面倒くさい絡み方をされて辟易としているわけだが。
「また母さんが出ていった」
「ふーん、伊代も連れていけば良かったのに」
「お前なあ!」
「なに? 結局お父さんも口だけなんだね、お母さんや伊代のことしか考えてないんでしょ? もう切るね、それじゃあ」
嫌いな人間といたくないと考えるのは普通のことだ。
けど、予定があったり金銭面の問題で距離を作りにくい。
それでも今回母はそれができたということ、良かったじゃないか。
と考える自分と、学習能力がないなと呆れる自分がいる。
自分でどんどん自分の首を絞めていることに繋がっているからだ。
未来や先輩はともかくとして、身内に嫌われるとはそういうこと。
まあいいや、考えたところでなにかを言い返してしまうことには変わらないんだからしょうがない。
いまは授業だ、幸い今日は体育とかがないから落ち着ける。
放課後になったらぎりぎりまで時間をつぶして家に帰ればいい。
当たり前な話だが、私の側には誰も来なくなった。
見られることもしない、まるで幽霊にでもなった気分になる。
空腹感が凄くていまにでも浮きそうなぐらいだから合っているかも。
午前中全ての授業を終えたら見つけたあの場所へ。
お財布の中に入っているお金は752円。
飲み物は学校に設置してある水が飲める機械を利用するとして、問題なのはスーパーで菓子パンかなんかを買うべきかどうかということ。
「どうしようかなあ……」
長期戦になることを見越して買うのをやめるか、この際だからとやけになって全て使ってしまうか。
自業自得というのも分かっているが、近くの飲食店のいい匂いがここまで漂ってきて辛かった。
「ああもうなに!?」
「……瑞月」
「この番号は私のですが」
嫌がらせが得意な両親だ。
てっきり父からだと思っていたからちょいとミスったが。
「……私達の存在が迷惑だった?」
「は? そういうのやめてくれませんか? というか、そろそろはっきり言ったらどうです? 私が邪魔だったんだと」
「そんなこと思ってないよ……」
「邪魔しないでください、私は私なりにあなた達のことを考えて行動しているんです」
自分の意思でしていることだ、気に病む必要もない。
自分達は暖かい部屋の中で温かいご飯を食べて温かいお風呂に入って柔らかいベッド上で暖かい毛布にくるまれて寝ればいい。
その過程で嫌な気持ちにならないよう私は外に出てあげているじゃないか、自由に普通の人間っぽい生活を送ってくれればいいのだ。
てか、この時点で自分の頑張りを否定されたようなものだ。
実家に帰るって最強のカードだと思う。
「だから気にしないで戻ってきてください」
「瑞月が頑固な限りは戻らない」
「それじゃあ我慢勝負ですね」
ということは家事全てを伊代にやってもらうことになるのか。
いまどういう風なのかが分からないからそれもあれだが。
「ま、帰ってきたくなったら言ってください、あそこはあなたの家でもあるんですからね。例えあなたが義理の母――」
いつの間にか目の前にいた伊代に携帯を取られてしまった。
そのうえでまた前と同じようにこちらの頬を叩いて、叩いた方がまるで被害者のように涙を流していて。
今日はうるさいだけだしもうこの際だからと預けておくことにする。
私はそれきり固まっていた義妹を放って教室に戻ることにした。
みんな頑固なんだろうな、特に自分はそう。
謝れば終わる話なのに余計に悪化させて長引かせて。
自分のちんけなプライドを優先して強がってみせている。
正直に言って、外で寝るのはリスクしかない。
テント泊とかならともかくとして、地べたに寝ているのはね。
いつ風邪を引いてもおかしくない、しかもいま風邪を引くのは致命傷になりかねないと。
「お腹空いた……」
母がいない以上、邪魔されるようなことはないが今度は父がしてくるかもしれないからスーパーで買って帰ろう。
お風呂にだけはやっぱり入らせてもらわなければならない。
「おりゃ!」
「ぐっ……」
ああ……もうこのまま地面とキスしたままでいたいなあ。
そうすれば変な衝突をしなくてもいいのに。
ずっと寝転んでいたらぶつかってきた主が心配し始めた。
大丈夫、死んではいない、それどころか落ち着いているぐらいだ。
「ちょ、み、瑞月ちゃんっ」
先輩がまだ来るなんて思わなかったな。
あと、自分がしておきながら心配するのってマッチポンプって言うんじゃなかったっけ、吹っ飛ばしてくれたの先輩なんだけど……。
正直に言おう、後ろからの攻撃には咄嗟に反応できません。
あとはあれだ、いま踏ん張れるような力はない。
「なんでまた来たんですか、来ないでくださいって言いましたよね?」
それでも一応、それっぽいことを言っておく。
「せめて立ってから言ってっ」
「あ、すみません」
地面に寝転んで寝ているから好きになってしまったのかもしれない。
「それよりご飯は?」
「食べましたよ?」
美味しい匂いを頼りにエアー白米を。
虚しくなるだけだからすぐにやめたが。
「ちょいと失礼――って、軽すぎ!?」
「え、照れますね、私ってそんなに細かったんですね」
色々なところにぷにぷに余計なお肉がついてて気になっていたんだけれどもそうじゃなくなっていたらしい。
「今日はもう帰さないからっ」
「ありがとうございます、正直に言って家には帰りたくなかったので助かります。あ、家事でもなんでもしますよ? 幸い、親が離婚してからずっとやってきたことですからね」
「え、あ、うん、それじゃあお願いしようかな」
とはいえ、19時頃には帰らないと。
これ以上やると本当に追い出されかねない。
あと今日は天気が微妙だからというのもあった。
裏は屋根がついているから濡れることはないけど、帰っている間に濡れることにでもなったらすっごく冷えるだろうし。
「家には行きませんが、付き合ってくれるんですよね?」
「え、あれ?」
「学校で時間をつぶすの大変だったんです、協力してください」
「あれー?」
お礼を言ってから教室に戻ることにした。
ご飯はもう買う、ケチケチしていて死ぬよりマシだ。
お風呂に入った後にタオルを数枚持ってこようとも決めた。
放課後。
予定通り19時頃には家に帰った。
幸い冷たい水滴に侵されるなんてこともなくて安心する。
スーパーで買ったパンをゆっくり食べてまた時間つぶしを始めた。
「お腹痛い……」
流石に野○なんてできないぞ。
変なプライドを捨ててトイレを利用させてもらうことに。
ただ、変に話しかけてこなかったことを罠だと分かっておくべきだったんだ。
「瑞月、もう外に出さないからな」
「ちょ、手を洗わせてよ」
「おう、洗ってこい」
せっかく食べたのにこれじゃ意味がない気が。
それよりもだ、父からは絶対に出さないぞという意思を感じる。
あと、無言で側にいる伊代が怖い、顔を見れば叩いてくるし。
「電話でお母さんに戻ってこいって言ったんだけどさ、だめだった」
「そりゃ、瑞月が意固地になっているからだろ」
「ま、そうとも言うんだけどね」
その後は電話を取り上げられたから分からない。
はぁ、これ以上は無理そうだ、仕方ないから謝るか。
で、後は部屋にこもったりすればいいよね?
「すみませんでした」
「それは母さんに言ってやってくれ」
携帯がないことを説明したら伊代が慌てて返してくれた。
しょうがない、自分から連絡するしかない。
「……もしもし?」
「すみませんでした」
同じトーン、同じスピードで謝罪の言葉をぶつける。
どこか安心しているようにも見える父に手渡して部屋に。
「おぉ、なんか懐かしい感じがする」
足をつけているこの床も、少し大きめなベッドも、壁紙とかも。
まだお風呂には入っていないが汗はかいていないため寝転んだ。
「ああ、こりゃ戻れん……」
柔らかい、単純に布団をかけていなくても暖かい。
固くないというだけで、枕があるというだけで幸せすぎる。
伊代が無言で入ってこなかったらそのまま寝ていたんだけど。
二つ結びの髪を下ろしている彼女。
俯いているのと無言なのが単純に怖い。
いや待って、本当になにも喋らないまま立っていて怖いぞっ。
なので、反対を向いて目を閉じておくことにした。
今度はちゃんと毛布もかけてだ、不意に攻撃された場合の対策だ。
ま、まさかあのとき約束を破ったことでいま罰を与えようって!?
って、2回も叩いたんだから十分だと思うけど。
「ふぅ、暖かいなあ」
せめて電気を消しておくべきだったか。
いやでも、電気を消した状態で襲われたら驚き死するしなあ……。
時間はまだ恐らく20時手前だ。
このまま寝るのも可能ではあるが、温かいご飯が食べたい、温かいお風呂にも入りたい、あとは恐れを抱かず寝たい。
「い、伊代、おいで」
ペットじゃないんだからと内でツッコミつつ彼女を待つ。
そうしたらゆっくりとではあったが来てくれた。
いまはもう彼女の方を向いているから怖いということもない。
「お母さんが戻ってきたらちゃんと謝るよ」
部屋番は任せて私は1階へ。
「お父さんご飯食べた?」
「いや、まだだな」
「それなら作るよ」
冷蔵庫には……卵とウインナーがあったからチャーハンを選択。
そうしたら特に難しいことなんかない、炒めて味付けして完了だ。
「はい、どうぞ」
「ありがとな」
なんかこうしていることが違和感しかない。
こういうところが嫌われる要素なんでは? と真剣に考えていた。
「んー、ねえお父さん」
「なんだ?」
「本当は邪魔だって思っているでしょ?」
「な、なに言ってんだよ」
「だってさ、お母さんと伊代がいてくれればそれでいいでしょ?」
好きな人とその子どもがいてくれればそれで。
というか、向こうは絶対にそう思っているはず。
今回のそれで気づいたんじゃないかなって考えているが。
「はぁ、なに急に不安になってんだ」
「違うの?」
「違う、母さんもそんなこと思ってない」
まあいいや、これ以上は言わずにいよう。
違う、なんで部屋番なんか任せたのか。
「伊代、チャーハン作ったから食べ――今度は叩くんじゃないんだ」
体が冷えている。
この部屋が特別寒いというわけではないから気持ちの問題か。
大して力にはなれないし、原因を作ったのは自分だからあれだが、久しぶりに妹を抱きしめておいた。
なんか食べていなかった自分より細い気がして心配になる。
「とりあえず食べよ、温かい方がいいでしょ」
電子レンジで温めたそれとは違うと思うんだ。
あと単純に自分が食べたいのもあった。
お腹が痛くなるかもしれないとかどうでもいい。
自分が勝手に意固地になっていたんだろうというのも同じ。
ただこの妹、こちらを抱きしめたまま全く動こうとしないんですが。
やっぱり妹って甘えん坊になるのだろうかとちょっと現実逃避。
エネルギーは回復しているため持ち上げようとしたが無理だった。
「どうしたいの?」
そうしたら小声で「このままでいたい」と言われてしまった。
ご飯が食べたいのにぃ、お風呂に入りたいのにぃ。
でも、姉としてたまには優しさを見せてあげなければならない。
「分かったよ。でも、後でちゃんと食べてよ?」
前だって自分が作ったやつ、いなくて食べてくれなかったんだから。
それに、段々と体に熱が戻ってきていることが分かって安心できたから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます