7 一緒に冒険しませんか?

 一緒に冒険しませんか?


「楽しいですね、メテオラくん」

 くすくすと笑いながら、エランさまはメテオラの耳元でそういった。

「全然楽しくなんてありませんよ、エランさま」と必死にマグの魔法の杖を両手で抱きしめるようにして走りながら、メテオラはそういった。

「どうして僕がマグお姉ちゃんの魔法の杖を盗まなくちゃいけないんですか?」人混みをかきわけて、賑わいを見せている大通りの道からその隣にある細い道の中に駆け込んで行ったメテオラは言う。

「それはもちろん『運命を変えるため』です」と自信満々の声でエランさまは言う。

 エランさまは初めて会った時のように人の形をしていなかった。

 今のエランさまは不思議な小さな青白い光の玉のような存在となり、ふわふわと空中に浮きながら、メテオラの耳元あたりの場所にいた。

 この世界にやってきて、(場所は北の王国のすぐそばにある深い森の中だった)エランさまから声をかけられたとき、はじめメテオラはエランさまがどこにいるのかわからなかった。(エランさまはメテオラをからかうようにして、こっち、こっちですよ、メテオラくんと言っていたけど)

 エランさまはそのときからずっと、この青白い光の玉のような姿のままでいる。この『時を遡った過去の世界』ではエラン様は人の形を保つことができないそうなのだ。

 メテオラはそんなエランさまの言葉に従いながら、この(魔法書の中の物語でしか読んだことのない)北の王国の街の中にやってきた。

 それは本当に素晴らしい経験だった。

 なにもかもが新鮮だった。いつも頭の中で思い描いていた世界が、実際にその場所には存在していた。メテオラの心は本当にわくわくした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る